2021東京ヤクルトスワローズ 高津流 燕マネジメント

僕もチームも「勝利」だけを信じて戦った――
M3の大敗から優勝の瞬間まで、高津監督が見ていたもの

10月26日、優勝の瞬間の心境は?

――21日の広島戦では塩見泰隆選手の手痛いエラーからの逆転負けを喫し、23日の巨人戦では先発の石川雅規投手が、プロ最短となる1/3でKOされ、いずれも11失点でイヤなムードの中での敗戦となりました。監督自身は、それでも平常心を保てていましたか?

高津 塩見の後逸や石川のKOというのは、チームにとっては大きな問題かもしれないけど、僕の中では「それも実力だ」という割り切りはありました。起こってしまったことを悔やむよりは「その後、どうやってゲームを立て直すか」「どうやって1点を取るか」という意識の方が強かったです。

――さて、マジック2で迎えた10月26日ですが、この日、ヤクルトが横浜に勝って、阪神が敗れるか、引き分けで、ヤクルトの優勝が決まるという状況でした。この日の心境を教えていただけますか?

高津 さっきも言ったように、この日もタイガースが負けるとは思っていませんでした。だから、「まずは目の前のベイスターズに勝って、マジックを1にするんだ」という思いでしたね。試合途中に、甲子園の阪神対中日戦の途中経過は入ってきて、阪神がリードされていることは知っていたけど、それでもあまり気にしていなかったです。この日は「うちが勝って、阪神が負けて優勝を決めるんだ」という思いはこれっぽっちもなくて、「今日勝って、まずはマジック1にするぞ」の思いだけでした。

――まずはヤクルトが勝利して、マジック1に。そのまま横浜スタジアムに待機して、甲子園の試合の行方を見守ることとなりました。ベンチ裏でテレビ中継をご覧になっていた心境はいかがでしたか?

高津 試合後、監督室でコーチたちと一緒にテレビ中継を見ていました。見始めたのが9回裏、阪神の最後の攻撃辺りからで、中日のマウンドにライデル・マルチネスが上がったところからでした。このときは、中日が4対0でリードしていたので、「このまま終わってくれ」という心境でしたね。

――中日・マルチネス投手が一つずつアウトを取っていく間、もちろん中日の応援をしながら見ていたわけですよね。

高津 そうですね。ショートの根尾(昂)選手がゴロを上手にさばいている姿を見て、コーチたちも手を叩いて喜んでいましたね(笑)。

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プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

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2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
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