2021東京ヤクルトスワローズ 高津流 燕マネジメント

「幻の第7戦、先発は奥川だった――」
歴史的激闘!日本シリーズの舞台裏

未来を見据えた奥川恭伸の初戦先発

――初戦を奥川恭伸投手に託し、第2戦を高橋奎二投手に、東京ドームに移動してからは小川泰弘、石川雅規、原樹理投手が先発。第6戦は高梨裕稔投手がマウンドに上がりました。これも事前の想定通りでしたか?

高津 えっと、「いくつか想定していたパターンの一つ」だと理解していただいたらいいのかな? あんまり詳しくは言えないけど(笑)。

――それは、例えば第4戦を3勝0敗で迎えたケース、0勝3敗で迎えたケース、それによってプランを変更していたということですか?

高津 いや、勝敗による変更というよりは投手のコンディションや球数とかですね。例えば3連勝でも3連敗でも、第4戦は石川が先発する予定でしたし、実際は2勝1敗で迎えた第4戦でしたけど、予定通りに石川に任せました。

――この連載でも何回も伺いましたが、2021年ペナントレース、特に後半戦は奥川恭伸投手を軸にローテーションは回っていましたし、日本シリーズでも初戦の先発マウンドを彼に託しました。これは、実力面での評価はもちろん、「彼の将来のために」ということも見据えた上での選択ですか?

高津 日本シリーズ初戦での先発は、割と早い時期から決めていました。今の質問で言えば、後者の思いの方が強いですね。

――「今後のために」という思いの方が強いということですか?

高津 はい。せっかくCSに登板するチャンス、せっかく日本シリーズに登板するチャンスがあるのなら、彼にいろいろ経験させたいと考えました。だから、CS初戦も彼に託したし、日本シリーズでも、「第2戦、第3戦にかかる重圧よりも、さらにプレッシャーの大きい初戦を経験させたい」という思いはずっとありました。

――彼にはその重圧に耐えうるメンタリティーがあると判断した上での選択ですか?

高津 いや、その重圧に耐えられるメンタリティーがあるかどうかは、僕たちにはまだわかりませんでした。だから、もしも今後またこういう舞台が訪れたときの判断材料とするためにも、「ここで投げさせたい」と考えました。

――日本シリーズという大事な局面でも、「今後の判断材料とするために」という思いも持っていたのですか?

高津 持っていましたね。もちろん、単なる「経験を積ませるため」だけではないですよ。根本にあるのは「山本投手に投げ勝つのは奥川だ」という思いがありました。でも、そこに「経験のため」という思いもあったのは事実です。

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プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

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2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
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