――現役時代の経験というものを、これまでピッチングコーチだとか二軍監督時代にもいろいろ伝えていたと思います。でも、それを一軍監督である今、さらにこれまではやっていなかったことを、今年から始めるということにはどんな狙いがあるのですか?
髙津 さっきも言ったように、「あんまり伝わっていないんじゃないか?」と思ったからです。技術的には成長しているかもしれないけど、精神面や考え方、野球とは? ピッチングとは? といった点はまだまだの部分が多いんじゃないかと。ピンチの場面での精神のあり方であったり、内角球の効果であったり、これを言っちゃうと全部言ってしまうことになっちゃうけれども、ついこの間は、めっちゃ単純に「コントロールとは何だ?」という講義をしました。
――監督ご自身の経験や知見が中心だとは思いますが、そこにいわゆる「野村ノート」的な、野村克也氏の教えも含まれているんですか?
髙津 ああ、あります。もちろん、これまでに僕自身が教わったこと、マウンド上で経験したことを、言い方を変えたりして伝えているつもりですよ。このとき、僕が気をつけているのは「どうやったら頭に入るかな?」ということですね。しゃべり方であったり、しゃべるスピードだったり、例えば項目が三つあるとしたら、どの順番で話すかであったり。本当は僕がその場で書いて、その場で選手にノートを取らせるのがいちばんいいと思うんです。でも、そんな時間もないので、僕が書いた手書きのプリントを選手に渡す。それを僕が読みながら、自分で納得してもらう。渡したプリントにメモしながら聞いている選手もいます。そんな方法を採っています。
――こうした地道な取り組みが、この先のペナントレースにおいて実を結ぶことを期待しているのですか?
髙津 多分、そんなすぐに効果が出るとは思わないです。根本にあるのは「今後の彼らの野球人生においてプラスになってくれたらいいな」という思いですね。ただ、同時にこの取り組みは自分の勉強にもなるので、「意外と面白いなと」思って、「次のテーマは何にしようかな?」とかいろいろ考えているんですよ。
――選手たちだけではなく、監督にとっても再確認、再認識、復習となっているんですね。
髙津 そうそう。「自分が現役のときは、どうやってやっていたっけ?」とか、「どう感じていたかな?」とか。自分の経験してきた範囲というのはすごく狭いのは理解しているけれど、それでも昔の記憶をたどりながら、今の選手と照らし合わせていろいろ書いて、伝えています。今はまだ理解できなくても、いつかわかるときがくればいい。僕自身がそうだったように、そんな思いで続けています。

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