東京ヤクルトスワローズ 髙津流マネジメント2025

髙津監督が苦悩の胸の内を明かす――
山田哲人の起用にこだわる理由

若手のさらなる奮起に期待したい

――ベルーナドームでの埼玉西武ライオンズとの交流戦では、スリーバントでの空振り三振からの盗塁失敗ゲッツーがありました。ファンもまた意気消沈してしまうし、チームの勢い、流れを止めてしまうことになりますね。

髙津 あの場面は、まさにそうでしたね。それは「若いから」じゃ許されないんです。僕らはプロの一軍なので、球場では何万人のお客さんが見ている、全国にテレビ中継されているんです。厳しい言い方をすれば、高校野球でもそんなに空振りはしないですよ、バントで。一軍ピッチャーのボールを空振りしないで、しっかりとバントを決める。残念だけれど、そのレベルに達していないのが現実です。サードゴロを何度もエラーしないですよ。本当の意味でのプロならね。当たり前のことを当たり前にこなせないと「プロ」とは言い難いかもしれないですね。とんでもない人間の集団なので、プロ野球というのは……。

――「まだ若いから」とか、「育成出身だから」ではなく、今は一軍でスタメン出場している以上、最低限プロとしてのプレーを見せなければいけない。それで初めてプロだと名乗れる。そのようなお考えなんですね。

髙津 今シーズンのここまでは、いろんな人が怪我をしてチーム編成がうまくいかなくて、だからこそ、彼らにチャンスが来たわけです。もちろん僕たちだって、「村上の代わりをしろ」とか、「塩見(泰隆)の穴を埋めろ」「秀樹の代わりを務めろ」とは思っていないです。大きな活躍は期待しますけれど、今の彼らにはまだまだ難しいことだとわかっています。だからこそ、本人のできる範囲で全力を尽くしてやってくれたら、僕はそれでいいと思っているんです。

――けれども、なかなかそのレベルに達していない。

髙津 三冠王選手と一緒の成績を残すことなんか無理に決まっています。最多安打のタイトルを獲得した選手と一緒の活躍をしてほしいとは、これっぽっちも思っていない。ただ、少しでもムネ(村上)や秀樹に近づいてほしい。プレースタイルは違っても、チームの力になってほしい。それに気づいてほしい。彼らの中で、出来ることの範囲が広がってほしい。その思いが本当に強いです。

――7月に入り、村上選手、長岡選手がファームで実戦に臨み始めています。サンタナ選手、高橋奎二投手の離脱というアクシデントもありつつ、それでも少しずつ陣容が整っていく気配もあります。

髙津 茂木についても、「何とか」と思っていましたが、チームを離れることになりました。野手のレギュラー5人が離脱です。トレーナーからの報告はちょいちょい来ているんですけど、これまでは、いいときと、停滞しているときと、一進一退を繰り返していました。ムネは前回、復帰に失敗してしまったこともあるので、できるだけ慎重に進めていって、万全の状態で戻ってきてくれることを願っています。夏本番、少しでもいいゲームをして、1勝でも多く白星を積み重ねていきたいと思っています。引き続き、「応燕」よろしくお願いします。

過去の連載をまとめた髙津臣吾監督のビジネス書『明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと』が、大好評発売中!

ご感想はこちら

プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

髙津臣吾 /
2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
出版をご希望の方へ