トランプ大統領が、現地時間4月12日(日)昼前、SNS(Truth Social)に「ホルムズ海峡を直ちに閉鎖する」と投稿した。
まだイランの関係する船舶を主体に1日当たり10隻程度は ホルムズ海峡を通過しているが、それを全て止めれば、今通過しているイランの原油も輸出されなくなり、世界の石油市場の混乱は増し、原油価格は高騰する可能性が高い。イランとの戦争開始後、約4割上昇している米国のガソリン価格は下がらないどころか、さらに値上がりする。
ガソリン価格の上昇は、トランプ大統領の支持率が下がる原因でもある。11月の中間選挙を控え支持率回復に焦るトランプ大統領が、イランにホルムズ海峡開放を強く迫っていた大きな理由だった。
世界最大の原油生産国であり石油の輸出国でもある米国の石油価格も、世界の原油市場と同じ動きをする以上、ホルムズ海峡を開放し世界の原油市場の価格を下げなければ、米国のガソリン価格は下がらない。
さらに市場を混乱させ原油価格を上昇させる米軍のホルムズ海峡閉鎖は、価格引き下げの目標と矛盾しているようだが、米国では米国海軍がホルムズ海峡を閉鎖すべきとの意見が開戦後すぐに出ていた。
なぜだろうか。
4月12日のトランプ大統領のSNSへの投稿は次の主旨だった。「イランとの会談は、夜通し約20時間にわたって続いた。多くの話の中で重要なのはただ一つ、イランは核の野望を諦める意志がないということだ」。
続いての投稿で「即時発効で、米国海軍は、ホルムズ海峡への出入りを試みるすべての船舶の封鎖を開始する。また、イランに通行料を支払った国際水域の船舶をすべて捜索・阻止するよう海軍に指示した。違法な通行料を支払う者は、公海上を安全に航行できない。イランが海峡に敷設した機雷の破壊も開始する。発砲するイラン人は、地獄に吹き飛ばされる。イランの海軍は消え、空軍は消え、対空砲やレーダーは役に立たない。封鎖はまもなく始まる。他国もこの封鎖に関与する。イランはこの違法な恐喝行為で利益を得ることは許されない」。
ホルムズ海峡封鎖により市場からイラン産原油が消える以上、原油価格の高騰を招くのは明らかだ。交渉の中断とトランプ大統領のホルムズ海峡閉鎖発言を受け、世界的指標であるブレント原油の価格は、それまでの1バレル95ドルから102ドルに一挙に上昇した。
ホルムズ海峡を巡る動きとトランプ大統領の発言があるたびに、原油価格は乱高下する。この2週間の動きは図‐1が示している。
米国にも不利な海峡封鎖に見えるが、米国の識者は米海軍による封鎖を提案していた。例えば、ブルッキングス研究所のロビン・ブルックス・シニア・フェローは、「米国がホルムズ海峡を閉鎖し、イランを兵糧攻めにすれば、原油価格は上がるが、イランが先に音をあげる可能性が高い」と指摘していた。急がば回れだ。
イランの石油プラント、積出港を攻撃しても同じ効果が得られるが、施設の破壊によりイランの原油生産量が市場から長期にわたり消え、上昇した原油価格が長期間続く可能性がある。それよりも、ホルムズ海峡を閉鎖してイラン産原油の輸出収入を締め上げる方が効果的との理屈だ。
イランの石油積み出し設備ハーグ島の軍事的な占拠による人的な被害を考えるとホルムズ海峡閉鎖の方が、はるかに望ましい策だ。
ブルックス氏は、今も輸出が続いているイラン産原油が市場から消えれば、原油価格は間違いなく上がるが、1バレル当たり150ドルとか200ドルまで達する可能性は小さいとも指摘している。
イラン産原油の輸出量が、世界の石油消費に占める比率は2%弱なので、それほど影響は大きくなく、価格上昇の一部は既に原油価格に反映されているとみている。