
●この記事のポイント
・飲食業の人手不足が深刻化するなか、調理・盛り付け・保存を自動化する最新ロボットと急速冷凍技術が中小店の経営を根本から変え始めている。人材依存を減らし、利益構造を改善するDXの実力を検証する。
・採用難や教育負荷を抱える飲食店で、省人化ロボットと液体急速凍結が急速に普及。職人技の標準化、惣菜工場の自動化、食品ロス削減など、生産性向上と新たな収益源の創出につながる技術の最前線を追う。
・外食の「人がいない」問題に対し、モリロボ、Thinker、エムプラスの技術が現場を大きく変えている。中小店こそ効果が高いDXの導入ポイントと、業界専門家が指摘する経営インパクトをまとめた。
飲食・食品業界における“構造的な人手不足”が、いよいよ限界点に達している。帝国データバンクの調査によれば、人手不足を要因とした倒産は過去最多ペースで推移しており、特に飲食・サービス業の増加が顕著だ。最低賃金の上昇、人口減少、採用の難化という複合要因が重なり、従来の「安価な労働力を大量投入する」モデルはもはや成立しない。
こうした中、現場の疲弊を止め、企業の収益性を守る決定打として注目されているのが、現場オペレーションのDX(デジタルトランスフォーメーション)である。かつては大企業の専売特許と思われていたDXだが、今その主役はむしろ「少人数で店舗を回す中小規模の飲食店・食品工場」に移っている。
本稿では、飲食DXの最前線で起きている“静かな革命”を、専門家の見解とともに読み解いていく。
●目次
飲食店の人材難が深刻化するなかで、特に大きな課題として浮上しているのが「教育コストの重さ」である。新たに採用しても、調理技術の習得には時間がかかり、辞めてしまえばすべてが無駄になる。
例えば、クレープやガレットのように熟練度が必要なメニューは、なおさら人材依存度が高くなる。この構造的な問題を技術で解決するものとして、モリロボ社のクレープ生地焼きロボット「Q」がある。レコードプレーヤーのような独特の形状をしたこの装置は、鉄板の温度調整から生地の展開、焼き上がりの均一化までを自動で実行する。店員が行う操作は、基本的に生地を投入し、ボタンを押すだけ。熟練者でなければ作れなかった薄いクレープ生地を、初日から均質な品質で量産できる。
「外食産業では“誰でもできる化”が最大のテーマです。特にスイーツ中心の店では、焼きムラや仕上がりの品質差が利益率を大きく左右します。調理そのものを標準化できれば、新人が即戦力となり、教育負荷が劇的に下がる。これは小規模店ほどインパクトが大きいでしょう」(外食オペレーション専門家・コンサルタントの安西裕司氏)
「Q」はクレープだけでなく、ガレットや春巻きの皮など、“皮もの食品”全般に応用可能で、業務用需要も高い。商品ラインアップが増えるほど、人手による技術依存のリスクは高まるが、ロボット化によって“技術を持つ人が辞めても困らない”体制を構築できる。
飲食・惣菜工場では長らく、ある工程だけが自動化できずに残されてきた。それが、不定形食品の盛り付け工程である。唐揚げ、天ぷら、煮物など、形がバラバラな食材は、従来の産業ロボットではうまく掴むことができなかった。結局は大量の人員が“最後の手作業”としてパック詰めを行う必要があり、これが生産性向上の最大のネックだった。