中国客45%減でも消費16%増…インバウンド市場で起きた「静かな革命」

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●この記事のポイント
中国人訪日客が前年同月比45.3%減となったにもかかわらず、訪日客消費額は16%増という逆転現象が起きている。三井住友カードの決済データでは、百貨店・高級ブランドなど“爆買い型”消費が減少する一方、飲食店や居酒屋、家電量販店など体験・生活型消費が拡大。欧米豪や台湾・韓国からの長期滞在客が増えたことが背景にある。インバウンド市場は「客数重視」から「高単価・体験型」へと構造転換し、日本の観光産業は第2フェーズに入った。

 インバウンド(訪日外国人客)ビジネスが、静かに、しかし決定的な構造転換を迎えている。

 かつて日本の観光産業にとって最大の市場とされてきた中国人客。その動向は観光地や小売業の業績を左右するほどの影響力を持ち、「爆買い」に最適化されたビジネスモデルが日本各地で構築されてきた。

 それが最新の統計データでは、その常識がすでに過去のものになりつつあることを示している。

 2025年12月のインバウンド統計で観測されたのは、一見すると矛盾しているように見える、しかし極めて示唆に富む現象だった。

「中国人客は半減したのに、訪日客消費は増えている」――。この逆転現象こそ、日本のインバウンド市場が「第2フェーズ」に突入したことを象徴する出来事といえるだろう。

●目次

中国客「45.3%減」でも消費は「16%増」

 日本政府観光局(JNTO)が発表した訪日統計によれば、2025年12月の中国人訪日客数は前年同月比で45.3%減という大幅な落ち込みとなった。背景には複数の要因がある。

 ・日中関係の政治的緊張
 ・中国国内の景気減速
 ・海外旅行需要の回復遅れ

 中国は長年、日本のインバウンド市場で最大のシェアを占めてきた。2019年には訪日客全体の約3割を中国人が占めており、その存在は観光産業の「屋台骨」と言っても過言ではなかった。

 その市場が半減すれば、通常は観光消費全体も落ち込むはずだ。ところが実際には、全く逆の結果が出た。

 三井住友カードが公表した訪日客のカード決済データによると、同月の訪日客消費額は前年同月比16%増。つまり、訪日客の構成が変化したことで、消費の質が上がった可能性が示唆されたのである。

 この現象について、観光経済に詳しい観光政策アナリスト・湯浅郁夫氏は次のように分析する。

「これはインバウンド市場の“ポートフォリオ転換”が起きている典型例です。中国客は数量的には非常に大きい市場ですが、消費構造は特定商品に偏る傾向があります。一方、欧米豪や台湾などの市場は客数は少なくても滞在期間が長く、体験型消費が多いため、総消費額はむしろ安定的に伸びる傾向があります」

 つまり、日本の観光産業は今、客数依存型から単価重視型へと構造が変わりつつあるのである。

「爆買い」の終焉と消費構造の変化

 消費の内訳を見ると、この変化はさらに鮮明になる。三井住友カードの決済データによると、中国人観光客の減少によって、これまで“爆買い”の象徴だった以下の業種が大きく落ち込んだ。

減少した業種
・貴金属・高級時計
・高級ブランドアパレル
・免税店・百貨店

 これらの業種は、転売や贈答目的の消費が中心だった領域である。

 一方で、訪日客の支出が増えているのは次のような業種だ。

増加した業種
・飲食店
・居酒屋
・一般アパレル
・家電量販店