世界観・シナリオ・キャラクターデザイン・カット割りという、従来は複数のプロフェッショナルが担っていた工程が、1人のクリエイターの手に渡る。
「1人のクリエイターが2時間あれば、5分から10分のアニメーションが作れます。コストはコーヒー1杯分程度を目指しています」
シナリオが得意な人はシナリオを自分で書き、苦手な部分はAIに任せる。プロからAI初心者まで幅広いクリエイターに門戸を開くフレキシブルな設計だ。キャラクター記憶バンクに保存したキャラクターは次回作にも引き継げるため、過去作のキャラクターを新作に登場させる「スターシステム」的な運用も可能になる。
「ポチポチするだけでアニメができる、という謎の世界に今突入しています」
大河内氏のこの言葉が、アニショートの革命性を端的に表していた。
この日ゲストとして登場したのは、SNS総フォロワー数270万人を誇るAIクリエイターのくりえみ氏だ。グラビア・タレント活動から連続起業家へ、さらにAIクリエイティブの旗手へと転身した彼女の言葉は、会場のクリエイターたちの心に深く刺さった。

くりえみ氏が現在精力的に取り組むのが、自身のIP(知的財産)をパブリックに開放し、誰でもAI創作に使えるようにするというプロジェクトだ。OpenAIのサム・アルトマン氏と自身のAI生成ツーショット画像をニュースに掲載したエピソードを紹介しながら、その背景にある思想を語った。
「これからIPのあり方や肖像のあり方が根本から変わってくると思っています。だから先陣を切って、パブリックに公開することをやりました」
この延長線上で開催されているのが、くりえみ氏プロデュースの映像コンテスト「くりえみAIショートフィルムコンテスト」だ。彼女の高精細な写真データを素材として公開し、誰でも自由にAI動画を制作して応募できる。すでに約200作品が集まり、Google Cloudをはじめとする複数の大手スポンサーが参画するほどの規模に成長している。

「権利問題をクリアにして、二次利用をきちんと許諾できる形を作ることが、日本がこのAI市場でグローバルに負けないためにすべきことだと思っています」
伊藤園のCMにAIが使われた事例を引き合いに出しながら、「これからはリアルに存在する人を学習して、CMや広告に使い、権利元にもきちんと収益が入る仕組みができてくる」と見通す。自身がスポンサー企業のCMにAIで出演するという新しいビジネスモデルも構想中だと明かし、会場を沸かせた。
「自分が別のお仕事をしている間に、知らないうちにドラマに出ちゃってるかもしれない。でもそういう時代が来ると思っているので、面白いなと思っています」
AIの進化スピードについても、くりえみ氏は前向きに語った。
「この半年くらいで、感動するクリエイティブが作れるようになってきました。この成長率でいくと、来年には見ている人がもうAIか人間か分からなくなる。むしろ感動においてAIが人間を超える可能性もある」
AI初心者のクリエイターへのアドバイスとして、こんな言葉も贈った。
「1番大事なのは言語化能力です。自分が何をこの動画で伝えたいかさえ言語化できれば、10秒でも10分でも作れる。自分は何をしたいのかを問いただす作業の方が、ツールの使い方を覚えるよりずっと大事だと思っています。つまり、思考力さえあれば、社員を抱えずに1人で社長になって、1人でユニコーン企業を作るのも夢ではない時代になってきています」