こうした動きに対し、日本の商用車メーカーの現状はどうか。
三菱ふそう(ダイムラートラックグループ)の「eCanter」が2017年に国内初のEV小型トラックを市場投入し、いすゞの「エルフEV」、日野自動車の取り組みなど、各社はEVトラック開発を進めている。ヤマト運輸などの大手物流事業者も数百台規模の先行導入でデータ収集を行っている。
しかし現状では、これらの多くは「充電式」の延長線上にあり、充電時間の問題を根本的に解決するブレイクスルーを伴うものではない。また、トヨタが中核を担うCommercial Japan Partnership Technologies(CJPT)がいすゞ・日野・スズキ・ダイハツと組んで商用電動車の大規模実証を進めるなど、協業の動きはあるものの、その主眼はあくまで「国内商用車の電動化推進」に置かれている。
エネルギートレーディング企業、電力会社、物流プラットフォーマーを巻き込んだ「エコシステムとしての設計」という発想は、日本の商用車産業においてまだ主流とは言いがたい。
「CJPTの取り組みは評価できるが、グローバルな視点で見たとき、それがエネルギービジネス・金融・物流インフラを包含したプラットフォーム戦略として設計されているかどうかが問われる。ハードウェアの完成度だけでは、欧州市場への参入障壁を越えられない可能性がある」(同)
Swaptopusの計画が順調に進むかどうかは、まだ不確かな要素も多い。
まず、欧州の重量トラックメーカー(ボルボ、スカニア、MAN、メルセデスなど)がCATL規格の電池を採用するかどうかは未定だ。現時点で欧州の主要トラックメーカーが正式にSwaptopusへの対応を表明したという情報はない。メーカーが独自規格を維持するか、業界横断の標準化が実現するかで、事業の広がりは大きく異なる。
次に、電池の「車両とバッテリーの分離」というビジネスモデルは、資産の所有権・保険・会計処理において新たな課題を生む。この問題は中国市場でも試行錯誤が続いており、欧州の法制度・商習慣に適合させる作業は容易ではない。
また、大規模な蓄電インフラが特定の企業グループに集中することに対して、欧州のエネルギー規制当局が何らかの審査・規制の目を向ける可能性もゼロではない。
Swaptopusが描くビジョンは、EVトラックの充電問題の解決にとどまらない。バッテリーの製造・流通・充電・電力取引・データ管理を一体化したプラットフォームを欧州物流の基幹インフラに据えようとするものだ。
この戦略の成否は、今後数年間で欧州のトラックメーカーや物流事業者がどのような調達・インフラ決定を下すかにかかっている。だが少なくとも、「インフラを誰が設計するか」という問いが、自動車産業とエネルギー産業の境界を消し去りながら問われ始めていることは確かだ。
日本の自動車・エネルギー産業にとって、Swaptopusの事例が突きつけるのは、技術開発の方向性だけでなく「誰と、何を、どんな仕組みで組むか」という戦略設計の問いではないだろうか。ハードウェアの高品質は必要条件だが、それだけでは十分条件にならない時代において、異業種を巻き込んだプラットフォーム構想力が、産業競争力の核心に据えられつつある。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=荻野博文/自動車アナリスト)