マイクロソフト4800人削減の裏側…Xbox不振とAAA開発費高騰、ゲーム業界の分岐点

 パブリッシャー側の生存戦略も保守化が進む。冒険的な新規IPへの投資は絞り込まれ、既存シリーズの続編やリマスターに依存する傾向が強まっている。元Rockstar Northのテクニカルディレクター、オッベ・フェルメイー氏は、数十億ドル規模の予算が動く現代のAAA開発では、パブリッシャーが「誰もが知っている舞台」を繰り返し選びがちになり、結果としてクリエイティブな停滞を招いていると分析する(フェルメイー氏はかつて『GTA6』の前段階で東京を舞台にした構想が検討されながら見送られた経緯にも言及している)。

「AAAの一本足打法は、もう限界に来ています。今後生き残るのは、巨大な開発費を投じられる企業か、逆に身軽な体制でヒットを生み出せる企業か、その両極になるでしょう」(戦略コンサルタント・高野輝氏)

これからのゲーム業界—3つの新秩序

 第一に、「AA(ダブルA)」と呼ばれる中規模開発、そしてインディーズの存在感が増している。Pocketpairの『Palworld』は発売から1年で総プレイヤー数3200万人を突破し、Arrowhead Game Studiosの『Helldivers 2』も発売12週間で1200万本を売り上げた。両タイトルとも大手AAAに比べて大幅に少ない開発体制でありながら、世界的なヒットを記録しており、巨額予算に頼らずアイデアとコミュニティ形成で勝負するモデルの有効性を証明した形だ。

 第二に、生成AIによる開発プロセスの再定義が進む。Take-TwoのゼルニックCEOは、AIによる開発コスト低減について「まだその効果は見えていない」と率直に述べているが、一方でフェルメイー氏は、アニメーションのリギングや衝突判定メッシュの調整といった単調作業をAIが肩代わりすることで、開発の敷居が下がり、パブリッシャーが再びニッチな挑戦に資金を振り向けられる可能性を示唆している。マイクロソフトの人事責任者エイミー・コールマン氏も、今回の削減について「AIによる職務の直接的な代替ではない」としながら、AIが仕事の進め方そのものを変えつつあると認めている。

 第三に、ハード(コンソール)の普及台数を競う時代からIP・エコシステム展開への移行である。マイクロソフトはXbox事業において、自社スタジオを大量に抱え込む方針から距離を置き、Windows 11をベースに他社のPCゲームストアにも対応する次世代機「Project Helix」を通じて、コンテンツとプラットフォームを分離する方向へ舵を切ろうとしている。

 現在のリストラの波は、産業の衰退というより、次の成長フェーズに向けた新陳代謝の過程と捉えるべきだろう。今後の競争を制するのは、潤沢な資金力を持つ企業ではなく、AIを活用して開発効率を極限まで高めた組織と、身軽な体制で純粋な”面白さ”を生み出せるクリエイティブ集団の双方だ。マイクロソフトの4800人削減は、その転換点を象徴する出来事として記憶されることになりそうだ。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=高野輝/戦略コンサルタント)