「日銀の正常化局面において、貸出金利の再設定は預金金利の上昇よりも先行して進みやすく、利ざやの拡大効果は今後1〜2年程度は残存する可能性が高い。ただし、追加利上げのペースが鈍化すれば増益率は徐々に収斂していくだろう」(金融アナリスト・川﨑一幸氏)
3メガバンクは同じ追い風を受けながらも、収益構造にはそれぞれ特色がある。
三菱UFJフィナンシャル・グループは、純利益2兆4272億円(前期比30.3%増)で国内メガバンク単体として初めて2兆円を突破した。圧倒的な規模とグローバルネットワークが強みで、傘下の米モルガン・スタンレーからの持分法投資利益(約6764億円)だけで純利益全体の約3割弱を占める。海外投資銀行機能の強さが、他行にない収益源となっている。
三井住友フィナンシャルグループは純利益1兆5829億円(同34.4%増)。業界随一とされる低い経費率(高い収益効率)に加え、スマホ決済・金融サービス「Olive」やクレジットカード事業を軸としたリテール・決済領域の強さが特徴だ。
みずほフィナンシャルグループは純利益1兆2486億円(同41.0%増)で初の1兆円台に到達。銀行・信託・証券が一体となった「銀信証一体」モデルによる大企業向けソリューション力と、グローバル市場部門(トレーディング)の収益力が際立つ。
3社とも過去最高益を更新した一方、増益率で最も高かったのはみずほであり、その復活ぶりは業界内でも注目を集めている。
みずほFGは2021年から2022年にかけて相次いだシステム障害で金融庁から業務改善命令を受け、経営体制の立て直しを迫られた。長年、経営リソースの多くをガバナンス改革やシステムの安定運用という「守り」に割かざるを得ず、他の2メガバンクに対して収益面で後れを取ってきた経緯がある。
転機となったのが、2022年に就任した木原正裕社長のもとでの構造改革である。木原氏は就任後、企業風土改革とあわせて、銀行・信託・証券の壁を越えて顧客に一体的なサービスを提供する「銀証兼職」体制などを推進してきた。企業のM&Aや資金調達において、融資(銀行)・証券引受(証券)・アドバイザリー(信託・コンサルティング)をワンストップで提供し、複数の手数料を同時に獲得できる体制を整えてきたことが、近年の決算に結実している形だ。
2026年3月期の決算発表で木原社長は「(手数料収入など)非金利ビジネスが非常に好調だ」と述べ、クロスボーダー案件を含むM&Aアドバイザリー業務の伸長を強調した。海外の投資銀行の買収を通じて北米事業の体制を強化してきたことも、収益拡大に寄与している。加えて、金利上昇局面をとらえた市場部門(セールス&トレーディング)の運用成果や、政策保有株の売却益も業績を押し上げた。木原氏自身は単純な利益額の大小よりもROE(自己資本利益率)などの「質」を重視する姿勢を示しており、2027年3月期は純利益1兆3000億円を見込む。
川﨑氏は「みずほの改善は一時的な金利頼みではなく、システム障害という負の遺産を処理し切った上で、グループの縦割りを崩す組織改革を先に済ませていたことが大きい。金利上昇という追い風が吹いたタイミングで、その改革の成果が一気に表面化した典型例だ」と評価する。
日銀は今後も「経済・物価情勢に応じて」段階的な利上げを継続する方針を示しており、市場では年内の追加利上げも視野に入っている。追加利上げが実現すれば、各行の利ざやはさらに拡大し、収益にはなお上振れ余地があるとみられる。企業の設備投資やM&A需要が旺盛な状況が続けば、非金利収入の伸びも下支えとなるだろう。