東京でロボタクシー本格始動へ…ウーバー・日産vsウェイモ・トヨタの主導権争い

「エンドツーエンド型のAIは開発期間を大幅に圧縮できる半面、判断の根拠がブラックボックス化しやすいという課題がある。日本特有の狭い生活道路や変則的な交差点で、どこまで安全性を説明できるかが問われるだろう。一方のウェイモは十年以上かけて積み上げてきた走行データという実績で勝負できる強みがある」(自動車アナリスト・荻野博文氏)

運転手不足解決のカギは自動運転ではなく職種転換?

 自動運転タクシーへの期待が高まる背景には、日本のタクシー業界が直面する深刻な人手不足がある。業界関連の統計では、タクシー乗務員数は2019年比で約2割(約6万人)減少し、2023年時点で約23万人まで落ち込んだ。現役乗務員の平均年齢は60歳前後とされ、今後5〜10年で大量退職が見込まれる。2025年度のタクシー・ハイヤー事業者の廃業・倒産件数は102件と前年の1.6倍に増えており、需要はコロナ禍前の水準まで回復している一方で、供給力の低下がむしろ深刻化しているのが実情だ。

 こうした状況のなかで自動運転タクシーが目指すのは、「運転手をゼロにすること」というより、既存ドライバーの役割そのものを変えることだといえる。日の丸交通が担う運行体制では、当初は東京の交通事情を熟知した同社のベテラン乗務員が「セーフティドライバー」として同乗し、車両の挙動を監視しながら、AIの学習データを提供する役割も担う。将来的には、運転操作そのものよりも、車両の遠隔監視や異常時対応、車両基地でのオペレーション管理といった、いわば「モビリティエンジニア」的な業務へのシフトが想定される。

 日の丸交通は1950年創業、東京23区や武蔵野市・三鷹市を地盤とする老舗の大手グループだ。同社は2023年からUberの電気自動車フリート(テスラ・モデルYなど100台超)の運行実績を持ち、過去にはロボット開発企業ZMPとの提携で自動運転タクシーの実証実験にも参加している。業界最大手の日本交通がウェイモ陣営に加わる一方、日の丸交通は「ウーバー連合の運行拠点」という立ち位置を選び取った格好であり、規模で勝負するのではなく、運行ノウハウという専門性で存在感を示す戦略と読める。

「タクシー会社の生き残り戦略として、自ら車両を運転して収益を得るビジネスから、車両運用のノウハウそのものを外部プレーヤーに提供するビジネスへの転換は理にかなっている。セーフティドライバーの待遇や労働環境が改善されれば、人材確保の面でも好循環が生まれる可能性がある」(同)

勝つのは「完璧なAI」か「泥臭い現場の可動率」か

 ロボタクシー事業の採算性を左右する最大のボトルネックは、実はAIの技術的完成度以上に、地味な運用インフラにあるとの指摘は業界内で根強い。急速充電、センサーの清掃、悪天候時の対応、事故やトラブル発生時の現場急行――こうした「泥臭い」オペレーション能力こそが、車両を止めずに稼働させ続けられるかどうかを決め、最終的な事業の採算ラインを左右する。

 日本の道路運送法では、旅客の有償運送は国土交通大臣の許可を受けた事業者でなければ行えないと定められている。この規制構造により、ウーバーのようなプラットフォーム企業は単独で配車・運行事業を営むことができず、必ず認可を受けたタクシー事業者と組む必要がある。ウーバーが日の丸交通という認可事業者と密接に連携せざるを得ない背景には、こうした法的な必然性がある。逆に言えば、ウーバーの配車マッチング技術と日の丸交通の現場運行力を密結合させた陣営は、車両の「稼働率」という極めて実利的な指標で、ウェイモ・日本交通陣営を追い上げる余地を持つ。