KDDI「menu」撤退とWolt日本撤退が突きつけた現実…8240億円市場を制するウーバーイーツ

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menu公式サイトより

●この記事のポイント
KDDIが「menu」を2026年9月30日で終了・解散、同3月のWolt撤退に続く退場。8240億円規模(2025年)の国内市場でウーバーイーツが黒字化・一強体制を確立する一方、出前館は7期連続赤字、新興ロケットナウが急成長。通信キャリアの経済圏構想が通用しなかった理由を解説。

 KDDIは、傘下のフードデリバリーサービス「menu」について、2026年9月30日をもってサービスを終了すると発表した。運営会社menu株式会社は、レアゾン・ホールディングスが保有していた株式をKDDIが8月31日付で取得して完全子会社化した後、解散・清算する方針だ。KDDIは終了理由を「フードデリバリー市場を取り巻く競争環境の変化や今後の事業見通しを総合的に検討した結果」と説明している。

 この撤退は単独の出来事ではない。2026年3月には、フィンランド発の「Wolt」が日本市場から撤退している。運営元のDoorDashは「持続的な規模拡大と長期的な優位性を実現できると判断した地域に投資を集中する」という国際事業ポートフォリオの見直しの一環と説明した。コロナ禍の「巣ごもり需要」を追い風に急拡大した国内フードデリバリー市場は、2026年に入り、体力のないプレイヤーから退場していく「選別フェーズ」を迎えている。市場調査会社Circana Japan(NPD)によれば、2025年の国内デリバリー市場規模は8240億円と、コロナ前比では97.0%増の水準を維持しているものの、2023年の8622億円をピークに一度調整局面を経ており、市場が拡大を続ける一方で「勝ち残れる企業の数」は着実に絞り込まれつつある。

 本稿では、KDDIの「menu」撤退とWoltの日本撤退という二つの事例を手がかりに、なぜ通信キャリアの資金力や顧客基盤をもってしても、フードデリバリー事業で持続的な優位性を築けなかったのかを、プラットフォーム経済学の観点から読み解く。

●目次

通信キャリアが抱いた「経済圏×デリバリー」の野望と限界

 KDDIは2021年、menuに約50億円を出資し株式の約2割を取得した。狙いは明確だった。au PAY残高でのmenu決済対応、Pontaポイントの還元、そして2022年6月からはauスマートパスプレミアム会員向けに配達料が何度でも無料になる特典を導入するなど、フードデリバリーという「利用頻度の高い」サービスを、au経済圏に組み込むことでID連携とデータ活用を進め、顧客の囲い込みを強化する構想だった。通信料収入が伸び悩むなか、非通信領域での収益源とタッチポイントの拡大は、大手キャリア各社が共通して掲げてきた経営課題である。

 しかし、この構想は「アセット」と「オペレーション」のミスマッチという壁にぶつかった。au PAYやPontaポイントといった決済・ポイント基盤は、あくまでユーザーの利便性を高める付加価値にすぎず、フードデリバリー事業の核心的な競争力にはならなかった。配達員の確保、加盟店の開拓・営業、都市ごとの配送網の最適化といった「泥臭いリアルオペレーション」は、通信キャリアが従来培ってきたケイパビリティとは全く異なる筋肉を要求する。

 同様の構図は、ソフトバンクグループが議決権の一角を握るLINEヤフーが出資する出前館にも見て取れる。出前館は2019年8月期以降、実に7期連続で最終赤字を計上しており、LINEヤフーから300億円を超える出資を受けながらも黒字化の道筋は依然として見えていない。通信・IT大手が持つ巨大な資金力とポイント経済圏があっても、配送現場のオペレーション効率という「地上戦」では埋めきれない差が存在することを、menuと出前館の双方が証明した形だ。