この「客数が減っても売上は伸びる」という構図は、ココイチの顧客層の特性を反映している。牛丼チェーンやハンバーガーチェーンが「ワンコイン」で気軽に立ち寄れる価格帯の維持に神経を使うのに対し、ココイチの主要顧客層は複数のトッピングを自由に組み合わせて1,200〜1,500円程度を支払う層だ。数十円から100円程度の値上げでブランドを乗り換えるインセンティブは、相対的に働きにくい。
加えて、「今夜はココイチのカレーが食べたい」という強い指名買いの存在も見逃せない。トッピングによるカスタマイズ性は他チェーンでは代替しにくく、牛丼店やコンビニ弁当への流出が起きにくい土壌をつくっている。
今回の発表で特に異例なのは、深夜料金を店内飲食に限定せず、テイクアウトにも適用した点だ。従来、深夜料金は「接客や着席スペースを提供する対価」として説明されることが多かったが、この前提は今回の措置で崩れている。
テイクアウトであっても、深夜帯に調理を担うスタッフの人件費や店舗の光熱費は、店内飲食とほぼ同じように発生する。壱番屋は今回の改定理由として、為替や国際情勢の影響による原材料・包装資材の高騰に加え、物流費・人件費など「さまざまなコストが継続的に上昇し、企業努力で吸収できる水準を超えている」と説明している。テイクアウトを対象外にすれば、深夜に持ち帰り需要が集中し、コスト増だけを店舗側が抱え込む構図になりかねない――そうした事情も透けて見える。
消費者の受容性という観点では、店舗まで足を運ぶ「持ち帰り」と、自宅で待つだけの「宅配」とでは事情が異なる。深夜に営業している店舗を見つけた消費者の心理としては、「開いていて助かった」という安堵感が先に立ちやすく、7%(1,200円のカレーなら80円強)程度の加算は許容範囲に収まりやすいと考えられる。
一方、フードデリバリーサービスは今回の深夜料金の対象外とされた。宅配はすでに配送料やサービス料が上乗せされており、店舗受け取りに深夜料金を加えてもなお宅配より割安なケースが多い。この価格差が、持ち帰り需要の崩壊を防ぐ緩衝材として機能する可能性がある。
「深夜料金をテイクアウトにまで広げる動きは、“深夜料金=着席サービスの対価”という従来の説明ロジックが、コスト構造の実態に追いついていなかったことを示している。厨房が動いている限りコストは発生するという当たり前の事実に、価格を合わせにきたと見るべきだ」(同)
深夜料金の導入は、ココイチが最初ではない。すき家は2024年4月3日から7%の深夜料金を先行導入している。導入から1カ月後の月次データでは、全店客数が前年同月比110.1%、全店売上高が同110.10%と、いずれも前年を上回る結果となった。少なくとも導入直後の段階で、客数が「激減」するような事態は確認されていない。
松屋も2024年7月から関東圏で深夜料金(7〜10%程度)の導入を始め、その後段階的に対象エリアを拡大してきた。ガストやサイゼリヤ、デニーズといったファミリーレストラン各社も10%前後の深夜料金を採用している。牛丼・ファストフード系は7%前後、ファミレス系はやや高めの10%前後という水準が、業界内である程度の相場観として定着しつつある。
もっとも、外食チェーンのすべてが同じ方向に動いているわけではない。吉野家は深夜料金を導入せず、逆に17時から23時に一定額以上を利用した客へ翌日使えるクーポンを配布するキャンペーンを展開するなど、対照的な戦略をとっている。深夜需要への向き合い方は、各社のブランド戦略や客層によって分かれているのが実情だ。