決算情報からは、都心部の店舗が好調な一方、郊外店は苦戦が続いているという傾向も明らかになっている。これは、価格に対する感応度が立地や客層によって大きく異なることを示唆している。デパ地下や駅ビルといった好立地の店舗ほど、多少の値上げでは離脱しにくい顧客層を抱えているとみられる。
もう一つの要因として、RF1が採用する「量り売り」の仕組みが挙げられる。100グラムあたり400〜500円台という価格設定のもとで、多くの商品を100グラム単位で購入できるため、単価が上がっても「今日は少なめにしておく」「1品だけ買い足す」といった形で、顧客自身が支出総額を調整できる。これは、単品ごとに価格が固定されている商品と比べて、値上げの心理的な抵抗を和らげる効果があると考えられる。
流通コンサルタントの永田由紀氏は、こうした構造を次のように分析する。
「値上げそのものよりも、値上げに納得感があるかどうかが消費者の購買行動を左右します。量り売りのように顧客が自分で支出をコントロールできる仕組みは、値上げ局面において心理的な負担を軽減する効果があると考えられます」
スーパーの惣菜は「調理の手間を省く」という意味合いから、罪悪感を伴う消費として捉えられがちだ。一方でRF1は、健康的な食材、丁寧な仕込み、洗練された見た目を通じて、「賢い時短」「ちょっとした贅沢」というポジティブな意味合いを商品に持たせている。このような感情的な価値の転換は、価格への納得感を高める要因の一つと考えられる。
RF1のような高級惣菜が成立する背景には、比較対象の設定の巧みさもある。顧客がRF1の価格を評価する際、比較対象となるのはスーパーの数百円の惣菜ではなく、数千円かかる外食だとみられる。外食産業でも人件費や原材料費の上昇を背景とした価格改定が広がっており、その中で「家庭にいながら専門店クオリティの食事を楽しめる」という立ち位置は、相対的に割安に映る可能性がある。
家庭での「再現コスト」の高さも見逃せない。20〜30種類の野菜を買いそろえ、洗って切り、ドレッシングまで手作りする手間とコストを考えれば、時間対効果という観点からRF1の商品は合理的な選択肢になり得る。共働き世帯が増える中で、こうした「時間を買う」価値への支払意欲は今後も一定の底堅さを維持すると考えられる。
品質面では、セントラルキッチンで一括生産する工業製品的な効率性と、店舗での手仕込み・当日調理という人の手によるプロセスを両立させている点も特徴だ。完全な工場生産ではなく、仕込みや調理の一部を店舗に残すことで、「デパ地下の特別感」や出来立て感を保っている。これが、量産品にはない付加価値として顧客の納得感を支えていると考えられる。
「中食市場で価格転嫁が進む中、単なる利便性の提供だけでは価格上昇に耐えられなくなっています。今後は、家庭内調理や外食との比較優位性をいかに明確に打ち出せるかが、中食ブランドの収益力を左右するでしょう」(同)
同社の商品戦略や出店エリアから見えてくるのは、明確なターゲット設定だ。第一に、共働き世帯や働く女性など、時間的制約がありながらも食生活の質に妥協したくない層。第二に、量よりも質を重視するシニア層や単身層。第三に、週末の家飲みやホームパーティーといった「ハレの日」に、ちょっとした贅沢として利用する一般層である。
出店戦略もこのターゲット像と一致している。RF1は1992年の1号店開業以来、百貨店の地下食品売り場(デパ地下)や駅ビル(エキナカ)を中心に展開してきた。これらの立地は、価格に対する許容度が比較的高く、商品の価値を理解しやすい客層が集まりやすい。郊外店の苦戦と都心店の好調という決算からうかがえる傾向は、この立地戦略の妥当性を裏付けているともいえる。