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武道館を夢見るも、鳴かず飛ばずのバンドマン・相馬悠人。
ステージに立てば客は数人、鳴らす音は誰にも届かない。
それでも彼の隣には、ずっと支えてくれる恋人・美咲がいた。
しかしある日、彼女は若く勢いのあるバンドマンと共に夜の街へと消えていく。
バンドも恋も、すべてを失った悠人の前に現れたのは――
ライブ中に大声で怒鳴りつけてきた、うるさい女・あかね。
「アンタの音はそんなもんじゃない!」
夢を諦めた女が、夢を見続ける男にぶつけた一言が、止まっていた音を再び鳴らし始める。
恋と夢が交差する下北沢。
絶望の底から這い上がり、再びマイクを握るまでの、泥臭くて不器用な再生の物語。
文字数 282,606
最終更新日 2025.06.28
登録日 2025.05.26
ずっと一緒にいられると思ってた。
何も疑ってなかった。
仕事で遅くなったって、LINEの返信が遅れたって、
「疲れてるんだろうな」って、勝手に納得してた。
――だけど、彼女はもう別の誰かと笑ってた。
5年付き合っていた恋人の裏切り。
信じていた“日常”が音を立てて崩れていくなか、
会社の階段で転びかけた俺に、声をかけてきたのは
同じ職場の、ほとんど話したことのない女の子だった。
「危なっ! ……あ、ごめん、変な笑い出た!」
明るくて、お転婆で、まっすぐで、
まるで正反対のその存在に、
最初は戸惑いしかなかった。
でも、気がつけば。
その声に救われて、
その笑顔に、癒されて、
そのまっすぐさに、心を動かされていた。
これは、
嘘から始まった終わりと、
笑顔から始まった恋の、
静かで優しい再出発の物語。
文字数 1,512
最終更新日 2025.05.23
登録日 2025.05.23
江戸・吉原の裏手、見習い芸者として日々を送る少女・すず。
唄は通るが、三味線の音だけはどうしても揺れてしまう。
「その音、心がある」――そんな言葉をくれたのは、冷たい眼差しの若侍・新次郎だった。
刀を帯びながら、なぜか静かに音に耳を傾ける男。
芸を磨くたび、心を乱すたび、すずの音は変わっていく。
けれど彼には、命に関わる“ある使命”があった。
芸に生きる少女と、死に向かう男。
雪の夜に交わされた、たった一つの約束。
届くかどうかもわからない想いを、音に託して――
少女は、三味線を抱え、ただ静かに弾き始める。
言葉では伝えられない想いが、音に宿る。
恋と芸の狭間で揺れる、切なくも静かな江戸恋語り。
文字数 41,891
最終更新日 2025.05.22
登録日 2025.05.22
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