弟のお前は無能だからと勇者な兄にパーティを追い出されました。実は俺のおかげで勇者だったんですけどね

カッパ

文字の大きさ
11 / 48
第一章:パーティー追放

11、隕石が生み出す出会い

しおりを挟む
 
「すみませんが、一つ質問していいですかね」
「ダメだ」
「ザクス、お前は一体何者なんだ?」

 質問はダメだと俺が言ったのを無視して質問してきたのは、盗賊ライド。俺の財布をすった男である。
 呆れたような、ホッとしたような、複雑な顔を俺に向ける。なんとなく、俺の無事に安堵してる部分が大きいような気がして、なんだか嬉しくなった。

「ザクスは化け物ですの?」

 多分に失礼な発言をしてることに気付いているのかいないのか。分からんがとにかくホッとしたことで出たのであろう、ルルティエラの発言。
 信じられないものでも見るような目で、俺と俺の眼前にある物体を交互に見ていた。
 俺の眼前にあるものとは、それすなわち隕石である。ゴウゴウと炎をまとって落ちてきた巨大な隕石は、まず俺の拳で止めた。でもって手刀で隕石をぶった切る!
 あっという間に隕石は粉々。あっという間に炎は鎮火。残されたのは、お宝のみ。

「「えええええ!?」」

 かくして夜の闇にライドとルルティエラの叫び声が響き渡るのであった。うるせえよ。
 だが騒音を気にする必要はなさそうだ。だって振り返れば街が騒々しいんだもの。
 そりゃそうだよな、俺ら街の近くで野宿してたし。隕石、あのままなら街を直撃だったもんな。それを阻止したんだから、そりゃ大騒ぎになるわ。
 こりゃ街中の住人が起き出したな。てことはだ、勇者一行も出てくる可能性は高い。
 正直、やつらには会いたくない。というか、俺が隕石を止めたと知られたくない。

「逃げるか」

 ライドの問いとルルティエラの視線を無視して、俺はお宝が入ってるであろう小さな塊──粉々になった隕石の中に、手の平にすっぽり収まるサイズの石だけが残されていた──を手に、走り出した。

「え!? ちょ、おいザクス!?」
「じゃあなお二人さん。また縁があれば会おうぜ」

 慌てる二人を置いて、俺は走る。本気で走る俺に、ライドすら追いつくことはできないだろう。
 とにかく街が見えなくなるとこまで行くか。
 次の街や村がある方角はどっちかなんて考えない。今はとにかく兄貴たちがいる街から離れるのみ。
 そう思って俺は全力ダッシュするのだった。

* * *

「よし、もういいだろ」

 走ること小一時間。体力もかなり兄貴から戻ってきたらしく、大して疲れてない。
 だがもう充分だろうと振り返れば、そこには何も無い荒野が広がっていた。整備された街道からもはずれてしまったか。
 だがまあ焦ることはないさ。道は朝になってから探せばいい。今はとりあえず、お宝の確認だ。
 いつも兄貴たちに取られて俺のはなかったからなあ。
 これまで隕石の中にあったのは、希少な宝石が多かった。空から降る宝石は非常に希少で、貴族が喉から手が出るほど欲しがるのでかなり高額で売れる。
 そしたら当分働かなくてもいいだろう。
 せっかく獲ったピーカンデュ(「俺が獲ったんだ!」とライドの声が聞こえてきそうだ)を置いて来てしまったなとチラリと思ったが、なに気にすることはない。
 隕石の宝石さえあれば、ピーカンデュ十匹売ってもお釣りがくる。

「さあて、どんな宝石が入ってるかな?」

 どの宝石も高額になるが、それでもピンからキリがある。大当たりなら、質素に生きれば一生働かなくても生活できるかも……なんて期待をこめて、俺は石を地面に置いた。
 スラっと腰に差してた短刀を引き抜く。
 それをそっと、丁寧に石にカツンと当てる。すると石は簡単にポロリと剝げて落ちた。だがまだ中は見えない。
 カツンカツンと丁寧に刃をあてて、石をこそぎ落とす。
 そして最後の石が落ちて、中身があらわになった。
 なったのだが──

「なんだこれ? 金?」

 それは黄金の輝きを放っていた。まだ日の出には時間がある、暗い夜の中で、それはキラキラと輝きを放つ。
 眩しさに思わず目を細めた。と同時に落胆する。
 金は確かに高額で売れるが──正直、希少性はないので隕石のお宝としてはハズレである。
 一生遊んで暮らすのは無理か、と落胆して俺は思わず「ちぇっ、ハズレかあ」と金を指でピンと弾いた。
 その瞬間。

「痛いっ!」
「えっ!?」

 なんと金が声をあげたのである!

「何をするか、バカ者!」

 黄金がそう言った瞬間。
 光がはじけた。その眩しさに思わず目を閉じて。
 開いた瞬間、俺は言葉を失うのだった。

「まったく……乱暴に扱いおって」

 偉そうな口調でそう言って。
 美しい長い金の髪を払うその人。
 いや、人と言ってはいけないのだろう。だってその背には──透ける羽が生えていたのだから。
 金の髪、青い瞳、半透明の羽。そして手の平サイズ。

「お前は……」

 それは間違いなかった。
 それは間違いなく、宝石ではなく。
 宝石以上に希少な存在。

「妖精……?」

 だった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

処理中です...