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第一章:パーティー追放
14、仲間
しおりを挟む「ま、待て待て、ルルティエラ落ち着け!」
俺の拳を脳天に受けてうずくまるライドは放置して、俺はルルティエラに向き直った。彼女は相変わらずギャーギャー泣き続けている。
うっわ、めんどくせ……ゲフン、なんでもありません。俺の心の声を読んだかのように睨むのやめて。
「なあルルティエラ、泣くなよ。どうしたら泣き止む?」
「グス……ひどいことを言わないでくださいまし」
「うん分かった、言わない」
「では聞きますが、わたくし達は仲間ですよね?」
「いや違うだろ」
「うわあああーん! ザクスが酷いことを言いましたー!」
「やーい、ザクスがルルちゃん泣かし……すみません、口閉じます」
最後はライドに睨みをきかして黙らしたのね。
ギロリと睨んでから、ルルティエラに向き直る。
「あのさあ、俺ら別に仲間でもなんでもないだろ?」
「ひどい! 洞窟で俺のことをいいように利用したくせに! 利用するだけしてポイなんてあんまり……すみません黙ります」
多分今の俺は、魔王レベルの恐い顔してると思う。それで睨んだらライドは黙った。次しゃべったら口を縫い付けてやる。
「わたくしはもう、仲間だと思っております。一緒に冒険したら、仲間でしょ?」
「いやそんな理屈聞いたことないんですけど」
「洞窟でピーカンデュ倒した仲でしょう!?」
「えええ……あれはたまたま。というか、あれはルルティエラが勝手についてきただけで……」
「ひどい! わたくしの純粋な心をもてあそんだんですのね!?」
このセリフ、ライドが言ったと思うだろ? ルルティエラが言ってんだぜ。でもって口元押さえて泣くルルティエラの横で、同じく口元押さえて泣き真似するライドは殴っていいだろうか。きっと誰も俺を責めない。
「もてあそんだって、あのなあ……そもそも、どうして俺と仲間になりたいの? ルルティエラって『一人でも充分強いので、仲間はいりません』って言ってたよね?」
「言ってません。わたくしはか弱いので仲間が必要です」
出たよ、[か弱い]強調。
レベルは低いけど、あんな洞窟に一人で入るような強さをもってるくせになあ。
「その……わたくしは、人と接するのがどうにも苦手で……」
悩む俺の顔を見て、思うところがあったのか。
俯きながら、ボソボソと話し出した。
「冒険者資格を得た、本当に最初の頃。仲間はいたんですの。そもそも僧侶は貴重ですから」
そういやそうだな。僧侶ってのはなかなかに難しい職業で、なにより必要なのは精神力。その純粋さにある。
少しでも悪い心があれば、僧侶にはなれないとかなんとか。なので僧侶職は非常にレアで、引っ張りだこなのだ。
実際、かつての仲間、勇者一行にも僧侶はいなかった。回復は基本、俺が負傷者に回復薬を渡していた。
「その仲間はどうしたんだ?」
「なんというか……わたくし以外は和気あいあいと仲良くやってるのですが、どうもわたくしとは一線を引いてるような感じでして……」
なるほど、なじめなかったんだな。
「居心地悪くなって、抜けました」
それはきっと本当の話なのだろう。
自身の情けない過去を話すことの恥ずかしさからか、ほんのり頬を染めながら涙目で語るルルティエラ。
俺に話すのは、彼女なりの誠意なのだろう。俺に信用してほしいってとこか?
──そんなんされたらトゥンクしてまうがな!
俺、そういうの駄目なんよ。俺もパーティー内で浮いてたからさあ! そういう話聞かされるとグッとくるもんがあるんよー!
という心の内は聞かせないけどな。
「俺とは平気なの?」
「ザクスは……なんでしょう、最初から素の自分でいられるというか、とても自然体でいられて居心地がいいんです。変ですよね、会ったばかりですのに」
「ま、そういうこともあるだろ。変じゃないよ」
つまるところは相性ってことだろう。人と人にはどうしても相性が存在する。それは努力でどうにかなるもんじゃない。
「会ったばかりで殴りたくなるやつとかいるもんな」
「おいそこでどうして俺を見る」
「初対面で財布すられたこと思い出したら、なんかムカついてきたから」
「すみませんでしたあ!」
普通に考えて、俺の財布すった奴と同行ってありえないよなあ。
「え、ライドはスリなんですか?」
「そうです、俺の財布をスリました」
「う~わ~~~~」
俺の暴露に、これでもかという氷の目でライドを見るルルティエラ。僧侶からしたらありえないよな、ホント。
「じゃ、まあ、ルルティエラはいいよ」
「え?」
「あらためて仲間として、宜しくな」
「!! は、はい、宜しくですわ!」
頷いて言えば、パッと顔を明るくするルルティエラ。うん、可愛い。
嬉しそうにするルルティエラの横で、「え、俺は?」とか言ってるスリがいるが、見えないことにしておこう。
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