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第4章 忍びよる闇の策略と失われし久遠の刻編
16.真実は時として残酷なり②
しおりを挟む耳打ちされた内容ーーーーーーーーーーーーーーー。
「……………………ガチ?」
「の、意味が分からんが、がちだ」
マジか…
一言で言えば「やりたくない」。やるのが嫌だとかではなく、皆の前というのがとにかくイヤ。
恨めしげにセレストを睨めつけるが、俺の視線如きで、セレストが動じる訳もなく、渋々了承。
「ディオン殿下。おそらく、話はここまでとなりましょう。グレイ…当方の殿下が正気に戻りましたら、ひとまず空間解除願います」
「分かりました。確かに、これ以上は無理そうなので、また話はするという事で」
了承はしたが、やる事決定なんだな。サクサク話進めてるし……
「カーティス殿下、申し訳ありませんが、一緒に結界を張ってください」
「承知した」
結界が張られるのを確認し、俺は凍気ともいえる冷たく凍てついた魔導を放つバルドに向き合う。
うぅ……自分に向けられてるのではないと分かってても、やっぱ、バルドの魔導って凄い。
何だろ?もう、ね。格が違う。ラシルフでも、一回見たけど、バルドってほんと強いんだな。
チラッと、セレストに目で確認するが、黙って瞳を眇められただけ。
くっそ~~~~~~~~~~~!!やるの自分じゃないからって、好き勝手言いやがって!
これで、失敗したりして寒い奴になったら、恨むぞ?セレスト!
一度大きく息を吸い……
「バルドッッッ!!!」
「………………………」
大きな声で名前を呼び、バルドの意識が一瞬向いた瞬間、俺はバルド目がけて走り、勢いのまま抱きつく。
「……………ッ、……」
俺を見下ろすバルドの目の力が緩んだ。
皆の視線、バンバン感じる。
えーい!ままよ!!
バルドの首に両腕回し、俺は勢いままに、バルドに口付ける。バルドが目を見開き、ノロノロ持ち上がった両手が俺の体をやんわり抱き寄せ、やがて力が込められるとともに、魔導の奔流が潮を引くように収束されていった。
治まった?
「ふ、んぅ!?」
離れようとしたが、引き寄せられたまま口付けが深くなる。
「んぅー!んんぅうーーー!!」
肩や胸をバシバシバンバン叩くがビクともせず、散々翻弄されてから解放された。
「正気に戻りましたか?殿下」
「あぁ……チッ!腹立つ!あのクソ女のせいで、気分台無しだ!」
俺はあんたらのせいで気分台無しだけどね。
クッソ!皆に見られた!
俺は、あんたらと違って、見られて平気じゃないし、羞恥心ってもんが人並みにあるんだ!
「ディオン殿下、空間解除願えますか?」
「いいですよ。あまり、長くなると怪しまれますしね」
ゼーハーゼーハー息切らしてのに、無視か?!
「誰にだ?」
「父王と兄皇太子にです」
何かバレたらマズい的な?聞きたいけど、苦しいやら恥ずかしいやらで顔、上げらんない。
ディオンがパチンと指を鳴らし、空間が溶けるように歪み、もとの部屋に戻る。控えの侍従や、護衛兵も何事もなかったかのように控えていた。
「では、晩餐は以上で終了ですね。続きはまた明日。国王への謁見は二日後…それまでに、貴方方に伝えなければならない事が多々ある。それから………」
ディオンが軽く指を振り、俺たちの周りにだけ遮断結界を張る。
「モノリスでは、誰もご信用なさらぬよう。下は下男下女に至るまでね」
「ほぅ~…それは、貴様もという事か?」
「もちろん、カーティス殿下が、僕を信用できないと仰るのであればそのように」
軽く皮肉ったカーティスに、ディオンがしれっと応え、鼻白んだカーティスが、フンと鼻を鳴らし、アッディーンを引き連れ部屋を出て行く。
俺たちも部屋を出ようとし、バルドが用意された部屋でなく、セレストとキサが使う部屋の方へ歩き出した。
「バルド?」
「セレストたちの部屋に行く。お前は一人であの部屋使え。部屋は隣だから護衛的には問題ない」
「は?」
少し素っ気ない態度で言い置いて歩き出すバルドに、言われた俺は、あまりに信じられない事にしばし呆然としていた。
*アヤを一人にするバルド。真意は次項でm(_ _)m
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