私を捨てた王子様と聖女へ。今さら助けを求められても、もう聖女には戻りません。
ある国に、カナリア=ラフィーネという聖女がいた。
彼女は「本物の聖女を虐げ、未来の王太子妃を害した」罪により、聖女の名を騙る偽りの存在と断じられ――かつて婚約者だった王太子ロイドの手によって、祖国から国外へ追放された。
――かつて、私を捨てたロイド様とリリへ。
「ロイド様。元婚約者――カナリア様が、祝福祭にいらっしゃっています」
「国外追放者が王国の祭典に足を踏み入れるなど、言語道断だ! 伝えておけ。僕の愛は君ではなく、真の聖女であるリリに捧げられている。もう僕に未練がましく縋りつくなとな」
「そ、それが……」
報告役の声が、わずかに震える。
「カナリア様は……『オルディア帝国の新聖女』として招待されています。しかも、その……帝国皇太子メルシオン様に伴われてのご入場です」
「…………は?」
――――国外追放されたはずの私が、帝国の皇太子殿下にエスコートされ、この場所へ現れるなど……まさか、夢にも思わなかったでしょう?
私を、役立たずの聖女。自分たちの恋路を邪魔する鬱陶しい婚約者だと思われていた。だからロイド様は、私を追い出せば全てがうまくいくと信じていたのでしょう。
「ご招待いただきありがとうございます。ロイド王太子殿下、聖女リリ様。――オルディア帝国聖女、カナリアと申します」
けれど、貴方たちはまだ知らない。
私を手放した瞬間から、破滅は静かに始まっていたことを。
「ロイド殿下には深く感謝しております。貴方がカナリアを手放してくださったおかげで……私は、かけがえのない聖女を得られたのですから」
私を捨てたロイド様とは、比べ物にならないほど素敵なメルシオン様。
どうぞ、心から悔しがってくださいませ。
私を追い出せて、本当によかったですね。私も今、幸せです。
そして――貴方方が失ったものの大きさを、私を敵に回したことへの脅威を、じきに思い知ることになるでしょう。
不定期更新。
貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。
この作品は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
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