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兄妹として
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カティから手紙をもらったヴィクトルはかなりのショックを受けた。
ようやく婚約を承諾してくれたのに、一瞬にして失ってしまった。あの愚かな側近がいなければカティが翻すことはなかったのに。
手紙には、前世の記憶をもつ自分は王族、貴族の社会になじむことは出来ない。ヴィクトルの事は信頼し、大切な人であるが王族のあなたの横に立てる人間ではないと書かれていた。側近のハートはげに思うことはあるが、貴族社会について考えるきっかけになって感謝しており、処罰はしないであげて欲しいとあった。
「ふふ・・・カティらしい。自分がひどい罰与えてるじゃないか。」
力なくヴィクトルは笑った。
そして、手紙は素敵な令嬢と結婚して幸せになって欲しいと締めくくられていた。
「・・・君はわかってないなあ。君の中身にずっと惹かれてた・・・君に堅苦しい生き方を強いるつもりなんかなかったのに。」
ヴィクトルは溜息をついて、元側近にもう少し罰を与えようと決めた。
二週間後、カティはヴィクトルに、「今からいっていい?」と伝令を送った。
諾の返事をもらうと、カティは転移でヴィクトルのもとを訪れた。
カティは身勝手な言動を誠心誠意お詫びした。ヴィクトルも側近の言葉で傷つけてしまって申し訳なかったと謝った。
もう一度、婚約を考えて欲しいとヴィクトルは申し出たが、カティは異世界の記憶のある自分にはやはり無理そうだと辞退し、この先誰とも結婚するつもりがないことを伝えた。でもヴィクトルの事は信頼していて大好きな存在だと臆面もなく言うカティに、ヴィクトルは笑った。
カティは精神が成人(こちらの世界では)の割には幼い、これでは恋の駆け引きも何も伝わることもないのだろう。
王族として生きてきて数々の貴族子女と接してきたが、これほど純粋で裏表がなく危なっかしい子に会ったことはない。高位貴族としては失格といわれるかもしれないが、これからも守ってやらなければいけないと庇護欲を掻き立てられる。
自分の長い初恋は成就しなかったけれど
「では、兄のようにこれまで通り側にいてもいい?」
「とっても嬉しい。ありがとうヴィー。」
大切な少女の信頼と側にいる権利を得ることが出来た。
二人の関係はぎくしゃくすることもなく、これまで通り仲が良かった。ヴィクトルはカティの心を支え続け、カティもヴィクトルの良き相談相手、悪友として絆を深めていった。
がっくりしたのは国王夫妻。せっかく娘としてカティを側に置けると思ったのに残念に思い、
「ヴィクトルの元側近、なんて言ったかな?そ奴は取り返しのつかない事をしたんだ、相応の対処はしたのだろうな。」
と怒りが収まらない。
「ええ。まあ、カティがすでにあいつの心を折りましたが。」
ハート形に毛髪がくりぬかれた元側近は引きこもるようになったという。そして、カティに治癒魔法をかけて欲しいとヴィクトルに手紙をよこすのだ。
「で、カティちゃんは?」
「あれは病にあらず!治癒魔法は施しません!と。」
国王は大笑いすると、
「そうか。カティちゃんらしくて・・・落ち込んでいないようで良かった。」
国王はほっとした。
ヴィクトルとカティの婚約が叶わなかったきっかけになったことも許せなかったが、エドヴァルドの死を喜び茶化すような発言が許しがたかった。
「どれ、わしの方からも家の方に慰謝料を請求しておこう。」
「私もすでにいろんな噂を流しましたので、彼の未来は明るいものではありませんが。」
「そんなものは自業自得だ。カティちゃんへの慰謝料と・・・傷心のお前への慰謝料はしっかりと回収する。そんなものでお前の心が慰められるとは思えないがせめてそれだけでもさせてくれ。」
「父上・・・心遣い感謝いたします。」
ようやく婚約を承諾してくれたのに、一瞬にして失ってしまった。あの愚かな側近がいなければカティが翻すことはなかったのに。
手紙には、前世の記憶をもつ自分は王族、貴族の社会になじむことは出来ない。ヴィクトルの事は信頼し、大切な人であるが王族のあなたの横に立てる人間ではないと書かれていた。側近のハートはげに思うことはあるが、貴族社会について考えるきっかけになって感謝しており、処罰はしないであげて欲しいとあった。
「ふふ・・・カティらしい。自分がひどい罰与えてるじゃないか。」
力なくヴィクトルは笑った。
そして、手紙は素敵な令嬢と結婚して幸せになって欲しいと締めくくられていた。
「・・・君はわかってないなあ。君の中身にずっと惹かれてた・・・君に堅苦しい生き方を強いるつもりなんかなかったのに。」
ヴィクトルは溜息をついて、元側近にもう少し罰を与えようと決めた。
二週間後、カティはヴィクトルに、「今からいっていい?」と伝令を送った。
諾の返事をもらうと、カティは転移でヴィクトルのもとを訪れた。
カティは身勝手な言動を誠心誠意お詫びした。ヴィクトルも側近の言葉で傷つけてしまって申し訳なかったと謝った。
もう一度、婚約を考えて欲しいとヴィクトルは申し出たが、カティは異世界の記憶のある自分にはやはり無理そうだと辞退し、この先誰とも結婚するつもりがないことを伝えた。でもヴィクトルの事は信頼していて大好きな存在だと臆面もなく言うカティに、ヴィクトルは笑った。
カティは精神が成人(こちらの世界では)の割には幼い、これでは恋の駆け引きも何も伝わることもないのだろう。
王族として生きてきて数々の貴族子女と接してきたが、これほど純粋で裏表がなく危なっかしい子に会ったことはない。高位貴族としては失格といわれるかもしれないが、これからも守ってやらなければいけないと庇護欲を掻き立てられる。
自分の長い初恋は成就しなかったけれど
「では、兄のようにこれまで通り側にいてもいい?」
「とっても嬉しい。ありがとうヴィー。」
大切な少女の信頼と側にいる権利を得ることが出来た。
二人の関係はぎくしゃくすることもなく、これまで通り仲が良かった。ヴィクトルはカティの心を支え続け、カティもヴィクトルの良き相談相手、悪友として絆を深めていった。
がっくりしたのは国王夫妻。せっかく娘としてカティを側に置けると思ったのに残念に思い、
「ヴィクトルの元側近、なんて言ったかな?そ奴は取り返しのつかない事をしたんだ、相応の対処はしたのだろうな。」
と怒りが収まらない。
「ええ。まあ、カティがすでにあいつの心を折りましたが。」
ハート形に毛髪がくりぬかれた元側近は引きこもるようになったという。そして、カティに治癒魔法をかけて欲しいとヴィクトルに手紙をよこすのだ。
「で、カティちゃんは?」
「あれは病にあらず!治癒魔法は施しません!と。」
国王は大笑いすると、
「そうか。カティちゃんらしくて・・・落ち込んでいないようで良かった。」
国王はほっとした。
ヴィクトルとカティの婚約が叶わなかったきっかけになったことも許せなかったが、エドヴァルドの死を喜び茶化すような発言が許しがたかった。
「どれ、わしの方からも家の方に慰謝料を請求しておこう。」
「私もすでにいろんな噂を流しましたので、彼の未来は明るいものではありませんが。」
「そんなものは自業自得だ。カティちゃんへの慰謝料と・・・傷心のお前への慰謝料はしっかりと回収する。そんなものでお前の心が慰められるとは思えないがせめてそれだけでもさせてくれ。」
「父上・・・心遣い感謝いたします。」
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