魁 安政七年咸臨丸渡米記
幕末。
日本人だけで太平洋を渡る――その無謀な挑戦の裏には、歴史に残らない“思惑”が渦巻いていた。
幕府の従者として、半ば強引に咸臨丸へ乗せられる事になった青年医師・長尾幸作。
寒さと船旅を嫌い、アメリカ行きなど望んでいなかった彼は、ただ断りを入れるつもりで講武所を訪れる。
しかしそこで彼を待っていたのは、
艦長・勝麟太郎の突然の下船騒動、
水夫たちの怒号、
幕府内部の不穏な思惑、
そして、異様なまでに人の本質を見抜く男――福澤諭吉だった。
「この航海には、表に出ていない意味がある」
日本初の太平洋横断。
その“さきがけ”となった者たちは、何を見て、何を隠したのか。
史実を土台に、勝海舟、福澤諭吉、大鳥圭介ら幕末の群像を瑞々しく描く、青春歴史小説。
理想と打算、誇りと恐怖が交錯する船上で、一人の青年は時代のうねりに巻き込まれていく。
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