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王子に会いたくない
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「どうでしたか?昨日のパーティーは。」
「レオン…俺は何を信じていいのかわからなくなった。」
「…どうしたんですか?」
「公爵に招待されたという女は『ニナ・スミス』という名で『オリビア・スミス』の双子の姉だった。」
「双子の姉?…ですか?」
「ああ、そしてニナは伯爵夫人の侍女だそうだ。」
「また面倒な立ち位置ですね。…けど、名前は似てませんか。『ニナ』に『ニーナ』でしょう。」
「ああ、それに本当に双子なのかも怪しい。」
「ニナが仕事を探している場合、就職斡旋なら伯爵はすぐ紹介してくれるでしょう。そうなると紹介所で仕事を探す必要があるのはオリビアですよね。」
「…たしかにそうだが…」
「他に気になる事でもあったんですか?」
「…ニナは『侍女』ではないように思う。
ドレスの着こなしも、姿勢、歩き方、それに公爵を前にして物怖じしない。それどころか、殿下の前でシャロンの事を、容易くあしらった。」
「一体何をしたんですか?」
「どこかのパーティーで1度会った時のシャロンの醜態を周りに聞こえるように言ったあと、『その礼儀を弁えない女はシャロン様ではないと理解している』と、皆の笑い者にした。シャロンは何も言い返せなかった。」
…たとえ王子がニナに何か言った場合でも『ニナはシャロンの事を言っている訳ではないだろう。何を怒っている』と公爵に言われればそれまでだった。そして、周りも『そんな事でむきになるなんて…』と王子の評価はがた落ちだ。
だから、『笑い者にされる前に引け』と言ってきた。
あの女はただ者ではない。
直接話をしたいが、おそらく断られる。だから嘘をついた。
『妹が誘拐犯かもしれない』…と。そういえば、誘いを断れないと思った。
マール様の誘拐の調書は、『別邸付近で歩いているのを警察が見つけた。』となっている。ただそれだけだ。内容は全く書かれていない。それは伯爵の指示だろう。ここまで
頑なに隠すのは何故なのか。ニーナ様を匿っているからかもしれない。
マール様とニーナ様が誘拐犯から逃る為に隠し部屋にいて、2人は一緒に保護されたのかもしれない。ニーナ様は身分を隠し『身寄りがない』と伯爵で引き取られ侍女をしている…。
今まで伯爵に誘拐の真相を聞くまで動けないと思っていたが、視点を変えよう。
「レオン、明日ニナに会う事になっている。店は以前使ったところで。店内を騎士で固めろ」
「はい。」
「エドワードも連れていく。」
クリフから呼び出されて、指定の場所へ向かった。それは、初めてクリフと話をした所。
「………」
聞いてないわよ…。
クリフと会う約束はしたわ。だからと
言って、こんな大きなオマケがついてくるなんて!!
エドワードが一緒に来るとか、ありえないでしょ!
「ニナ様、殿下も貴女とお話したいとの事ですので、ご一緒しても宜しいでしょうか?」
嫌です。即刻退場願います。
「ええ、殿下とお話できるなんて光栄です。」
「そうですか。ならよかった。」
クリフ…誘拐の話ではなかったの?まさか、本当に誘拐事件で私がニーナだと判明してる…?
焦っては駄目。まず相手の出方を見るのよ。
「ニナ、先日は酷い事を言ってしまったね。申し訳ない。」
「いいえ。こちらこそ、殿下の愛する
シャロン様を傷つけてしまったのではないかと後悔しております。」
何だかパーティーとは様子が違うわ。胡散臭い。侍女が相手だと作り笑いしかできないのね。
「かなり傷ついていたよ。私もそんな彼女を見るのがとても辛かった。」
…うん、勝手に傷ついて下さい。
とても面倒だから、もう謝っておこう。
「それは、申し訳ございません。」
「ニナが謝っていたとシャロンに伝えておくよ。そうそう、クリフに聞いたんだけど、君はニナではなくニーナらしいね。」
やっぱり気がつかれてた?ううん、例えつかめるとしても状況証拠だけ。
「少し似ているお名前ですが、私はニナです。クリフ様は何故そのような事を仰るのでしょうか?」
「マール様の誘拐の捜査を進めていると、貴女がニーナ様だとわかりましたので、偽名を使っている訳を知りたいのです。」
嘘ね。捕まった女がいると知っても、それがニーナなのかは誰にもわからないもの。名前は言わなかったんだから。
……まずい…
私は出してもらおうとして『エドワードの婚約者だ』とかなんとか言った気がする。どこまで足を引っ張れば気がすむのこの
『情けない王子』は!
「『オリビアが犯人だ』と仰ったのに、なぜニーナという女性の話になるのか、私にはよくわからないのですが。」
私が言うと、エドワードがクスクスと笑い、そして言った。
「オリビア…そんな女性最初からいない…のでは?」
…何なのこの男、物凄く腹が立つ笑顔だわ。
「失礼ですが、私の家族構成を知っているのは、殿下ではなく私の方です。」
…絶対鎌をかけてるだけだわ。
「殿下やクリフ様がどうお考えであろうと、私には双子の妹がいます。これは誰にも否定できません。それにこの状況。察するに妹は誘拐事件になど関与していない…という事ですね…」
「いえ、容疑はあります。」
「では、私がニーナだという女性であるかどうかよりも、オリビアの事を最初にするのが道理ではないかしら。伯爵に聞けなかった事件の真相を私から知りたかったのでしょう?」
「では聞くが、オリビアは今どこにいる。」
クリフ、その質問は想定内よ。
「サカヨタに行くと言っていました。」
「サカヨタに?」
遊牧民が多い国、どの部族かわからなければ探しようがないのよね。
「昔お世話になっていた人がいるから、そこで働くと言っていました。」
「逃がしたのか?」
「ハァ…そのような失礼な言い方、殿下の側近でもあろう男性がするとは思えませんわ。」
「世話になっていた…そこから先は聞いてないんですか?妹の行く場所を、貴女のようなしっかりした女性が聞かなかったとは思えません。知っていますよね。」
この爽やか似非スマイル…本当に腹が立つ。もしこの男と結婚する絶望の日を迎えたなら、即日別居よ!
「レオン…俺は何を信じていいのかわからなくなった。」
「…どうしたんですか?」
「公爵に招待されたという女は『ニナ・スミス』という名で『オリビア・スミス』の双子の姉だった。」
「双子の姉?…ですか?」
「ああ、そしてニナは伯爵夫人の侍女だそうだ。」
「また面倒な立ち位置ですね。…けど、名前は似てませんか。『ニナ』に『ニーナ』でしょう。」
「ああ、それに本当に双子なのかも怪しい。」
「ニナが仕事を探している場合、就職斡旋なら伯爵はすぐ紹介してくれるでしょう。そうなると紹介所で仕事を探す必要があるのはオリビアですよね。」
「…たしかにそうだが…」
「他に気になる事でもあったんですか?」
「…ニナは『侍女』ではないように思う。
ドレスの着こなしも、姿勢、歩き方、それに公爵を前にして物怖じしない。それどころか、殿下の前でシャロンの事を、容易くあしらった。」
「一体何をしたんですか?」
「どこかのパーティーで1度会った時のシャロンの醜態を周りに聞こえるように言ったあと、『その礼儀を弁えない女はシャロン様ではないと理解している』と、皆の笑い者にした。シャロンは何も言い返せなかった。」
…たとえ王子がニナに何か言った場合でも『ニナはシャロンの事を言っている訳ではないだろう。何を怒っている』と公爵に言われればそれまでだった。そして、周りも『そんな事でむきになるなんて…』と王子の評価はがた落ちだ。
だから、『笑い者にされる前に引け』と言ってきた。
あの女はただ者ではない。
直接話をしたいが、おそらく断られる。だから嘘をついた。
『妹が誘拐犯かもしれない』…と。そういえば、誘いを断れないと思った。
マール様の誘拐の調書は、『別邸付近で歩いているのを警察が見つけた。』となっている。ただそれだけだ。内容は全く書かれていない。それは伯爵の指示だろう。ここまで
頑なに隠すのは何故なのか。ニーナ様を匿っているからかもしれない。
マール様とニーナ様が誘拐犯から逃る為に隠し部屋にいて、2人は一緒に保護されたのかもしれない。ニーナ様は身分を隠し『身寄りがない』と伯爵で引き取られ侍女をしている…。
今まで伯爵に誘拐の真相を聞くまで動けないと思っていたが、視点を変えよう。
「レオン、明日ニナに会う事になっている。店は以前使ったところで。店内を騎士で固めろ」
「はい。」
「エドワードも連れていく。」
クリフから呼び出されて、指定の場所へ向かった。それは、初めてクリフと話をした所。
「………」
聞いてないわよ…。
クリフと会う約束はしたわ。だからと
言って、こんな大きなオマケがついてくるなんて!!
エドワードが一緒に来るとか、ありえないでしょ!
「ニナ様、殿下も貴女とお話したいとの事ですので、ご一緒しても宜しいでしょうか?」
嫌です。即刻退場願います。
「ええ、殿下とお話できるなんて光栄です。」
「そうですか。ならよかった。」
クリフ…誘拐の話ではなかったの?まさか、本当に誘拐事件で私がニーナだと判明してる…?
焦っては駄目。まず相手の出方を見るのよ。
「ニナ、先日は酷い事を言ってしまったね。申し訳ない。」
「いいえ。こちらこそ、殿下の愛する
シャロン様を傷つけてしまったのではないかと後悔しております。」
何だかパーティーとは様子が違うわ。胡散臭い。侍女が相手だと作り笑いしかできないのね。
「かなり傷ついていたよ。私もそんな彼女を見るのがとても辛かった。」
…うん、勝手に傷ついて下さい。
とても面倒だから、もう謝っておこう。
「それは、申し訳ございません。」
「ニナが謝っていたとシャロンに伝えておくよ。そうそう、クリフに聞いたんだけど、君はニナではなくニーナらしいね。」
やっぱり気がつかれてた?ううん、例えつかめるとしても状況証拠だけ。
「少し似ているお名前ですが、私はニナです。クリフ様は何故そのような事を仰るのでしょうか?」
「マール様の誘拐の捜査を進めていると、貴女がニーナ様だとわかりましたので、偽名を使っている訳を知りたいのです。」
嘘ね。捕まった女がいると知っても、それがニーナなのかは誰にもわからないもの。名前は言わなかったんだから。
……まずい…
私は出してもらおうとして『エドワードの婚約者だ』とかなんとか言った気がする。どこまで足を引っ張れば気がすむのこの
『情けない王子』は!
「『オリビアが犯人だ』と仰ったのに、なぜニーナという女性の話になるのか、私にはよくわからないのですが。」
私が言うと、エドワードがクスクスと笑い、そして言った。
「オリビア…そんな女性最初からいない…のでは?」
…何なのこの男、物凄く腹が立つ笑顔だわ。
「失礼ですが、私の家族構成を知っているのは、殿下ではなく私の方です。」
…絶対鎌をかけてるだけだわ。
「殿下やクリフ様がどうお考えであろうと、私には双子の妹がいます。これは誰にも否定できません。それにこの状況。察するに妹は誘拐事件になど関与していない…という事ですね…」
「いえ、容疑はあります。」
「では、私がニーナだという女性であるかどうかよりも、オリビアの事を最初にするのが道理ではないかしら。伯爵に聞けなかった事件の真相を私から知りたかったのでしょう?」
「では聞くが、オリビアは今どこにいる。」
クリフ、その質問は想定内よ。
「サカヨタに行くと言っていました。」
「サカヨタに?」
遊牧民が多い国、どの部族かわからなければ探しようがないのよね。
「昔お世話になっていた人がいるから、そこで働くと言っていました。」
「逃がしたのか?」
「ハァ…そのような失礼な言い方、殿下の側近でもあろう男性がするとは思えませんわ。」
「世話になっていた…そこから先は聞いてないんですか?妹の行く場所を、貴女のようなしっかりした女性が聞かなかったとは思えません。知っていますよね。」
この爽やか似非スマイル…本当に腹が立つ。もしこの男と結婚する絶望の日を迎えたなら、即日別居よ!
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