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常春の国 篇

〈閑話〉黒曜の姫と側仕えのコハク

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元は〈はなれのみや〉の住人であったきさき

今は「コハク」と名を変え、常に異世界の姫の側にはべることを許されている。


〈王のみや〉とは、王宮とは別に建てられた王の私的な豪華な宮殿。その中にある豪華な〈王の寝所〉は、今では異世界の姫を閉じ籠める為の美しい堅牢けんろうと化している。

〈王の寝所〉の隣には、「執務しつむ」と「応接おうせつ」が併設へいせつされ、その「応接おうせつ」の一角が改築され、コハクはそこにきょを構える。

常春とこはるの王の懐刀ふところがたなにも認められた異世界の姫の唯一ゆいいつ側仕そばつかえ。

常春とこはるの王にさえひるむことなく毅然きぜんとした態度で進言をするコハクは、もはや一目ひともく置かれた存在。

異世界の姫である冬子を「黒曜こくようの姫君」と呼ぶことさえ許されている。

冬子とうこもコハクには良くなつき、時には常春とこはるの王さえかせるほどに「コハク、コハクー」と離れない。おなごのコハクから見ても愛らしく、庇護欲ひごよくそそる冬子。

異世界から顕現けんげんした稀有けうな存在の冬子が、少しでもこの世界で心穏こころおだやかに暮らせるように、心をしてつかえるコハク。その所為せいで、常春とこはるの王が公務こうむで王宮へと出払っている時などは、特にコハクからは離れない冬子。

夜毎に、常春とこはるの王から激しい情愛じょうあいを注がれる冬子。事後の身を清める湯浴ゆあみは常春とこはるの王が行うも、その後の身支度みじたくはコハクが整える。

美しい裸体をさらす冬子に、重ね合わせの美しいころもまとわせ、太めの腰結衣こしゆいで胸元の下でゆるゆわく。

夜毎に常春とこはるの王から刻まれる情欲じょうよく名残なごりが、生々しく身体からだに残る冬子は、おなごのコハクから見ても酔わされてしまう程になまめかしい色香いらかを放つ。

冬子の長くつややかな黒檀色こくたんいろの髪をくしですき、身支度みじたくを整え終えれば、常春とこはるの王が不在の折は、寝所の窓から見える美しい庭園をよくながめている冬子。

黒曜こくようの姫君ー……もしや庭園へとお出になりたければ、わたくしから王へと進言致しましょう」

無言むごんで首を横に振る冬子。

「……ううん、大丈夫よコハク。外へ出ようとは思わないー……ただ、あまりにも美しい庭園だから、少しあこがれるだけー……本当にそれだけよ。ここから出ようとは思わないー……だから、王には言わないでね……」

冬子はさみしげに微笑ほほえむ。

「出たいー」などと口に出したら最後、常春とこはるの王からは非情な責苦せめくされる。そこに愛などは一欠片ひとかけらもなく、ただ冬子というはな無惨むざんにも蹂躙じゅうりんするのみ。

ーしばしの沈黙ちんもくが流れるも、気丈きじょうに振る舞う冬子は、すぐに愛らしい笑みを浮かべ、コハクへと告げる。

「今では優しいコハクがいてくれるから嬉しいのー……本当よ、本当にそう思えるの。いつも側にいてくれる貴女あなたが大好き……大好きだよ、コハク……!」

冬子は両手を広げては、コハクに抱き付き、そのまま離れない。

(いとおしい御方おかたー……!)

背の高いこの国のおなごからすれば、冬子は華奢きゃしゃ小柄こがら所為せいで、思わず守りたくなる程の美しい姫。

やわらかな笑みを浮かべ、コハクも冬子の身体からだを優しく抱き締め返す。

そのコハクを見上げる冬子は、ゆっくりとコハクの左頬ひだりほほに口付けを落とし、涙のにじむ瞳でささやく。

「コハク、ずっと側にいてね……」

(ああっ、なんと愛らしい姫君……!)


突如とつじょこの世界に呼び寄せられた冬子の周りには、常春とこはるの王と双翼そうよくの二人しか、側にいることは許されていない。

(おそらく、心細さをいだいていたに違いないー……)

あまつさえ、その小さなはらには御子おこさえはらまされ、もはや情緒じょうちょすら不安定。

思わず冬子を抱き締める腕に、さらに力がこもるコハク。

その刹那せつな常春とこはるの王が寝所へと現れる。

二人の様子を見遣みや常春とこはるの王。

いとしい姫、というものがありながら、ただの側仕そばつかえのコハクに言い寄るとはー……これ以上かせるな」

そして冬子の身体からだをコハクから引き離し、その腕に取り戻すなり、すぐさま寝所へと連れ去る。

ひかえるコハク。

やがて〈王の寝所〉からは、常春とこはるの王が激しく魔羅まらを打ち付ける音と、冬子のあえく声がれ聞こえる。

冬子の淫欲いんよくあえさまが、コハクの脳裡のうりかすめ、おのれのめたるところがあらぬ熱を持ち、うずき出す。そしてコハクのめたるところは、甘いみつがとろりとしたたり落ち、じんわりと下履したばきをらす。

欲情があおられるコハク。

(嗚呼ああっ! 黒曜こくようの姫君、貴女あなたは素晴らしいー……!」

コハクは甘いみつれそぼるめたるところに、己れの指を差し入れ、冬子を想っては挿入そうにゅうを繰り返し、みずからをなぐさめる。

(淫靡いんびな姫君ー……ああっ! あっ、あっ、あっ、姫君! 姫君! ああっ、あっ……いくっ! あああっ……!)

ついぞ果てるコハク。その顔は恍惚こうこつとしている。


良くも悪くも、誰をも魅力みりょうする冬子は、やはり稀有けう極上華ごくじょうか

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