【完結】【R18】執愛される異世界の姫(改稿中)

極冬の国 篇

愛し子はただの養い子

瀕死のところを極冬王に命を救われ、そのまま拾われては、食うに困らない生活まで与えてくれた優しい極冬王。
それ以来、極冬王の愛し子となったセツカ。

まさにそのはずであった。

今までもそう信じていたセツカ。この先もずっと極冬王の愛し子であるとそう信じて疑わないセツカの想いを、突如現れた乱入者は一瞬で打ち砕く。

極冬王の誠の愛し子である双生の二枚翅。更には、この場に駆け付けた神殿長さえも無情にセツカに告げる。

「其方はただの養い子ー」そうセツカを位置付ける面々は、極冬王に不敬を働いたセツカを最早冷ややかな眼差しで見つめ、更には裸体を晒すセツカに侮蔑すら浮かべている。
極冬王の外衣で包まれているとはいえ、セツカが何も身に付けていない事は一目瞭然。

セツカは双生の二枚翅らの侮蔑の眼差しを受け、羞恥に塗れながらも心は極冬王を求め、愛し子であるはずのセツカを否定することなく、受け入れて欲しいとばかりに、極冬王の外衣を固く握り締め、唇を噛み締める。

セツカはその事を極冬王に問いたくも、今は既に此の場から去っている。

双生の二枚翅から何事かを伝えられた極冬王は、セツカの前から一瞬で消えてしまったと云える。

極冬王が急く相手は、勿論異世界の姫である冬子をおいて他にはいない。極冬王の唯一の王后にして、氷華の宮にて住まう美しい姫。
その冬子の元へと向かう極冬王の脳裡には、既にセツカの事は捨て置かれている。

王宮に連れて来られて直ぐに、極冬王の手を離れ、神殿に預けられた以上、極冬王へと大胆にも不敬を働いたセツカの処遇は、神殿預かりとなる。即ち神殿長が処遇を決めるのである。

後の処遇は神殿長に任せ、双生の二枚翅のヒョウとセツも此の場を後にし、極冬王の後へと続く。

神殿長と二人。その場に残されたセツカ。

セツカの昂揚とする気持ちは、今や急激に冷めている。
神殿長からどこか得体の知れない恐ろしさを感じるセツカは、最早護る者もいない我が身が心許なく、自然と身体が震え出す。

皆がその場を後にしてから初めて、神殿長は冷ややかな眼差しで淡々と告げる。

「ー残念です、セツカ。己れの身分も弁えず、絶大なる君主である我が王に懸想するとは赦されざる行為。この国の宝である稀なる美しき王后を迎えられた我らが王には、貴女と云う愚かな存在はあってはならない。最早ー、毒にしかならないー……」

神殿長は音もなくセツカの背後に回り込むと、セツカの腕を後ろで捻り上げ、枷で拘束する。

「いやっ！　神殿長様！　どうしー……ううっ……！」

セツカを事も無げに枷で拘束した神殿長は、セツカの口にも騒がぬ様に口枷をつけてしまう。

「ー誠に残念です、セツカ。身の程を弁えなさい。ーああ、最早この者は不要です。例の所に連れて行きなさいー」

其処に佇む神殿長からは、以前の優しさは見受けられない。
おまけに誰かに何かを示唆する。

そしてセツカは、突如現れた二人の黒ずくめの男らに抵抗虚しく、何処かへと運び込まれる為に担がれる。

「求められてもいないのに、自ら恥態を晒す貴女です。恥辱に塗れた貴女になら、うってつけの場所があります。自慰などせずともきっと満足出来るはずです。若く瑞々しい貴女なら皆も気に入るでしょう。存分に可愛がってもらいなさい。その身が尽きるまでよく勤め、しかと励むようにー。セツカ、慈悲などありません」

神殿長は最後にそれだけ告げては、セツカへ手向けとばかりに妖しい笑みを浮かべ、そして振り返ることなく去って行く。

その日を最後に、幼い時分から神殿に預けられていたセツカと呼ばれていた養い子は姿を消す。

ある貴人の元へと嫁しとも云われているが定かではない。しかしその事を気に留める者は、誰一人としていない。

神殿内の事は神殿の管轄故に、極冬王さえも関知しない。
例え其処で何が行われていようとも口を出さないのが暗黙の了解。ましてやセツカは、この国の絶大なる王へと不敬を働いたのである。処罰されて当然と考える。

今頃セツカはー……。