ヒーローになりたくて。異世界転生したサラリーマン、転生先でヒーローはじめました。

結城英雄(ゆうき ひでお)は、幼い頃からヒーローに憧れ続けた男だった。

 消防士を目指し、警察官を目指し、そのたびに挫折し、気づけば三十二歳の平凡なサラリーマンになっていた。

 ある昼休み、赤信号に気づかず道路へ飛び出した少女を発見する。
 迫る大型トラック。
 考えるより先に、英雄の体は動いていた。

 少女を歩道へ押し出すことには成功したが、英雄自身はトラックに轢かれ、そのまま息を引き取った。

 「子供を助けて、自分が轢かれるとか情けないな……でも、助けられてよかった」
 青い空を見上げながら、英雄はそう思い、目を閉じた。

 目覚めると、そこは白い虚空だった。

 案内人と名乗る存在から、異世界「ハーレシア」への転生を告げられる。

 魔法と剣の世界。魔王が復活の兆しを見せ、各地に魔物が増える危険な時代。
 「好きに生きられるよう、環境を整えましょう」と案内人は提案する。
 しかし英雄は、幼い頃の記憶を思い出していた。
 「やっぱり、人を助ける生き方がしたい」
 「ヒーローになれる力を欲しい」と告げる英雄に、案内人は申し訳なさそうに言う。
 「ヒーロー」というスキルは存在しない、と。
 与えられるのは「身体強化」と「成長」の二つのスキルのみ。最初は弱く、道のりは険しい。
 それでも英雄は笑った。
 「それだけあれば、十分です」
 こうして英雄は、ハーレシアの地に赤子として転生する。
 チートなし。特別な才能なし。ただ、諦めなかった三十二年分の憧れと、二つのスキルだけを胸に。
 ヒーローになれなかった男が、異世界で本物のヒーローを目指す物語が、今、始まる。
24h.ポイント 7pt
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