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   朝食の後、レオポール兄様はクロを連れて騎士団へ向かった。お父様もお城へ向かう。私はステファニー様、お母様にお茶会のマナー教習という名目で大量のお菓子を用意させられた。

「お茶会なんてね、ようは慣れよ」
「そうですわ、今のうち練習を積んでおきましょう」

 お二人はそう言って笑顔で出したお菓子を食べている。さっき朝食が終わったよね。たくさん食べたよね。と、確認したい気分だったがやめた。そういう野暮なことは言うものではない。

「この生クリーム?美味しいわね、天使ちゃん、たっぷり乗せてもいい?」

 お母様はにっこりと微笑んだ。ボールごと生クリームを渡すと目を輝かせて、カレースプーンでモリモリと食べている。

「マリアンヌ様、殿下が後程お越しになります」

 セバスチャンがこっそり教えてくれた。例の小部屋にやってくるらしい。それまでに昼食の準備をしておこう。私はキッチンに移動した。お母様たちのマナー教習は強制的に終了である。実際のところ、2人はお菓子を食べお茶を飲みおしゃべりに花を咲かしている。口は忙しく動いているのだが、不思議なことに大変優雅に見える。あれこそが淑女というものだ。と、私は感心した。あれができるようになれば、きっとお茶会をマスターしたことになるのだろう。できる気がしないが。

 昼は昨日のローストビーフを利用したサンドイッチ。その他にも照り焼きチキンのサンドイッチも作る。生クリームが好評だったのでフルーツサンドも作っておく。後は野菜サンドやたまごサンド。スープも用意して、お父様や魔法省、レオポール兄様にも送っておく。

 しばらくすると、馬の鳴き声や馬車の音が聞こえてきた。ご到着のようである。

「マリアンヌ嬢?」

 ドミニク様の声だ。私は外に出てご挨拶をする。白馬から降り立ったドミニク様は爽やかな笑顔で私を見ると、いきなり私を抱き上げた。

「え?」

 驚いてドミニク様を見た。ドミニク様は笑顔で私を見返して下さる。

「叔父上、何をしてるのですか」

 殿下の声がした。見ると、殿下は怒った顔をしている。

「リィは私のものです。すぐに離してください」
「いいじゃないか、結婚までは私が抱き上げてもいいだろう」
「よくありません」

 私は物ではないし、そもそも抱き上げるという行為がわからない。何故そんなことをするのか?力自慢?渋々、ドミニク様は私を下ろしてくれた。

「会いたかったよ、プリンセス」

 は?何言ってるの?

「叔父上」
「結婚するまではどう振る舞っても問題はないだろう」

 プリンセスって・・・。何を言ってるんだか。だんだん意味不明になってきた。

「魔獣の利用についていろいろ案を聞いたんだ。その件でも話したくて」
「ダメですよ、仕事の話は。今日はリィと新居について相談し合うんですから」

 新居って、お城以外に住むのだろうか。場所とか選べるのかな?そんなわけないだろうけど。

「とりあえず、お入りください。昼食を用意しております」

 イラついたら負けだ、と思い私は小部屋に招き入れた。テーブルの上にはすでにサンドイッチを用意してある。さっさと座ってもらい、さっさと食べてもらい、そしてさっさと帰ってもらおう。

「叔父上も座るのですか?」

 殿下はあろうことかドミニク様にそんなことを言う。

「ご相伴に預からせてもらうよ」

 殿下の嫌味な発言にもにっこりと微笑み、ドミニク様は笑顔を向けた。

「護衛で来られたと思っていましたから」
「護衛ならアレンがいるだろうし、そもそも自分で襲撃に備えておかないとね。護衛に任せたままなんて困るよ」
「だから騎士団試験も受ける予定でいます」
「アルは15だっけ?その時私はすでに騎士団に入っていたけどね」

 笑顔のまま見つめ合ってるけど、心情的には睨み合ってるってことかな。なんだか訳がわからない。それよりさっさと座ってほしい。

 私の心を読んでくれたのか、ドミニク様がソファに座った。

「さ、お膝においで」

 当たり前のように私を見ると自分の膝の上をポンポンと叩いた。ドミニク様、なぜ私が膝の上に座るのですか?

「リィは私の隣に座ります」

 殿下に手を握られた。手を繋いだ、というよりも強制連行状態である。そのまま殿下の隣に座る。

「見つめ合って食事できるなんて光栄だな」

 目の前でドミニク様がウインクしながら言うので、私は心の中でため息をついた。もういいから、さっさと食べてくれ。めんどくさいと思いつつ、私は愛想笑いで頬が引き攣るのだった。






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