良薬口苦シ 婚約破棄されたので、病弱王子が寿命を減らしても薬師の私はもう知りませんよ?

西東友一

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少女時代

出会い5

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「どういうことか、聞いてよろしいかな。フローラ様」

 国王が呆れた気持ちを抑えながら、空笑いで私を見る。

「あらやだ、フローラ『様』なんて・・・」

 私は照れながらも、自分のカバンを漁る。

「やはりここはわしが・・・」

 医師のおじいちゃんが腕の袖をめくって、細い二の腕で力こぶを作ろうとする。
 頼りなさの極みだ。とはいえ、国一番の医師。それなりには延命処置ができるだろう。

「あった、これこれ」

「それは・・・?」

 兵士が訪ねてくる。

「言ったでしょ。私は薬師。もうできることはないわ。だって・・・」

 私はカバンから黒い粉の入った紙包みを出す。

「already over」

 私が呟くと、

「え?」
 
 兵士が反応する。

「私は有事の際にはもうできあがった薬を提供しなければならないもの」

 私は笑う。

「だから、ここからは・・・あなたの戦い」

 私は薬の入った紙包みをディアス王子に渡す。
 ディアス王子は恐る恐るその紙包みを取り、目の近くに持って行く。

「あっ、気をつけてね。匂い結構強烈だから。ぜーったい、鼻息とかで吹き飛ばさないでね」

 私はニコニコしながら経過観察をする。

「くんくんっ・・・ううぉっ」

 匂いを嗅いで吐きそうになるディアス王子。でも、私の言いつけを守って、横を向いて吐こうとしている。

「ほ、本当に大丈夫なんでしょうねえっ!?」

 王妃がまた騒ぎ出している。

「多分、大丈夫じゃ・・・」

 医師のお爺ちゃんが真剣な眼差しで薬を見ている。さっきから、ちょいちょいふざけたりノリが良かったけれど、その目は国一番の名医と言われるのも、幼い私にだってわかった。

 その言葉を聞いてか、ディアス王子が薬と向き合っている。
 
 サーーーーーッ

 ディアス王子は口の中に薬を流し込んだ。

「あっ、飲み物用意するの忘れちゃった?」

 てへっと、私が自分の頭をコツンッとしながら、ウインクしてベロを出す。

「んんんごごっ」

 マジかっ、と言う顔で上を向いたディアス王子が悶絶する。

「はっ、はやく水をっ」

 王妃が慌てて、兵士に水を持ってくるように指示する。

「はっ、はいっ」

 兵士は慌てながら、部屋から走っていった。
 
「お待たせしましたっ!!」

「はやっ!」

 私は出て行ってすぐに戻ってきた兵士にびっくりする。
 そんな、私を無視して兵士は王妃に水差しとコップを渡し、王妃はコップに水を注いで、ディアス王子に渡す。
 私は近くにキッチンがあるのかと、廊下を見るけれど、暗い廊下にはそのような場所が近くにあるようには到底思えなかった。

 ゴックンッ

 大きな喉を鳴らす音が聞こえたので、ふり返ると涙目になった王子が、どうやらちゃんと薬を飲み切ったようだ。
 
 背中をさする王妃と手を握る国王。

 そんな家族を見て私は遠くから、羨ましいなと思いながらも、ディアス王子が快方に向かうことを信じて、微笑んだ。

 



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