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試作料理
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騎士団へ手土産を持っていくために、何を作ればいいのか考えては却下され、試作品を連日作って試食した。
サンドイッチを持っていくことに決定したが、中身がジャムの物しか皆知らなかった。
歴代の異世界召喚者が残してくれた知識のおかげで、食パンはこの世界にはあった。しかし、等分に切る機材がなかった。
ああでもないこうでもないと使用人たちと評価し、何とか完成した料理は完成した。
気軽にサクッと食べられるサンドイッチで、中身は色んな味の物にした。ジャムに、フルーツに、おかず系まで作り、これでパーティーが出来ますねと褒め称えてくれたくらいだ。量が多くて確かにそうだと納得した。
喜んでくれたらいいなと少しだけ期待をして騎士団の鍛錬場に向かう事にした。エリオットは連日仕事に忙しいから帰ってくるのが遅い。頭がスッキリする紅茶の茶葉も持って、目の前で入れる練習もした。
連日のエッチな出来事を過去の出来事と割り切ってくれるくらいスッキリして欲しい。道中、子供たちが遊んでいて長閑な風景が広がった。
今日、一緒に来るメイドさんはステファニーで、同じ年齢の彼女はこの世界について事を教えてくれる。
鍛錬場の近くまで行くと同じ年位の女の子たちが集まっていた。どの子達も思い思いに何かを手にして誰かを待っている。
そこに華やかな美少女がやってきた。整えられた見た目はお人形のみたいで、周りと比べて段違いにオーラが違う。メイドさんたちが私が持ってきた籠に似たものを持っていた。あの子も料理を持ってきているんだ。
「…………雪美様?」
「今日は帰ろう」
「どうしてですか?一生懸命頑張って作ったのに」
「見て。外にいる女の子たちも一生懸命頑張って作った物を持ってるよ。私が異世界から来た人で、優先されたら悔しいでしょ。家族じゃないのに、ただの居候なのに。外から来たポッと出の女に居場所を奪われたら溜まったもんじゃないよ。
あの子たちはこれからずっとこの世界にいる。思春期の今、変な事があってトラウマになる方が嫌だもん。決めた、今日は帰って使用人たちのお土産にすればいいのよ。ほら、帰りましょう。」
「…………分かりました。御者に理由を伝えます」
「うん、お願い」
馬車はゆっくり来た道を戻っていく。
本当はエリオットに食べてほしかったなぁ。
♢♢♢
早く帰るとエリオットに届けてこいと説教される事を考えて、長閑な景色と例えた場所を少しだけ歩くことにした。
美しい草原が広がって、お腹が空いたから少しだけサンドイッチを食べることにした。一口食べると、手作りしたサンドイッチは凄く美味しかった。食パンに味が染みこんでプロが作ったから、素人に出せない味が出ていた。
料理長を皆の前で褒め称えよう。
「これを全部食べるのは流石にしんどいな」
口に出てしまうほど、お腹は満腹に近い。コルセットのせいにしたいが、これ以上食べたらまた太ってしまう。一つは食べきった。隣を向くとステファニーがあからさまに顔を背けられた。
ステファニーは太りたくないと顔に出ていて、御者は妻のお弁当を食べたばかりで食えないと顔に出ていた。
不意に視線を感じて、そちらを振り向いた。馬車の周りに子供たちが集まってお腹を空かした音が聞こえた。耳付きの獣人の子供たちがこちらを見ている。
「ステファニー」
「ダメです」
授業中に教わったのだが、獣人は懐くために必要以上に近づいたら危険なのだ。
「いいじゃない、それとも持って帰って怒られたい?どうしてエリオット様に持って行かなかったんだって」
「ええ、それ脅しですよ。まあ、いいですけれど子供たちだけですし」
急いで馬車に駆け寄るとバスケットを下ろした。御者が子供たちに説明してくれる。人間の女性から、獣人の男に子供でも話しかけてはいけない。理由は伴侶と勘違いして襲われるから。思い込み、マジで凄い。
「いいの…………」
上目遣いの大きな瞳で見つめられて大きく頷いた。獣人の子供たちは睫毛が長くて大きな瞳で可愛らしい。キッズモデルに今すぐ採用されるのが決定になるくらい手足が長い。ちんちくりんは1人もいない。
それから彼らは凄かった。独特の声を出すとどこからともなく子供たちが現れて、騎士団のために作ったサンドイッチの入ったバスケットを抱えると何処かに消えた。
「バスケットって高いよね」
「まあ仕方がないですね。警戒して目の前で食べませんから」
「…………食べているところ、みたいなぁ」
「ダメです」
「ダメか」
「授業で聞いてないんですか?獣人の食事をするところを見てしまったら、いくら逃げても捕まって、寝床に連れて行かれて孕ませられるって。人間に物凄いセックスをする癖に、お金を支払う能力が低いから未婚の母になる人が多いのです。
獣人は性欲と食欲旺盛で維持費も馬鹿にならないので人間とはしてはいけません。」
「やけに詳しいじゃない」
「姉がそうだからです。興味本位で獣人とセックスしたのが運の尽き。貴族学校を首席でキープしていたのに妊娠して退学しました。相手が働かないので、お金を稼ぐために産みながら働きましたよ。ちなみに相手はお金がないと分かると逃げましたね。ロクデナシでした。子供は維持費が高くて、私はこうして行事見習いに早すぎる年齢で始めました。この世の地獄を身内が体験しているのに、わざわざ勧めません」
この世の闇を聞いてしまった。戻ってきた獣人の子供たちは、お腹いっぱいになるまで食べたのかバスケットを渡した後、すぐに戻っていく。
早く帰宅した私たちは帰ってきた理由を聞かれてハッキリ答えた。女性たちは理由を理解してくれて、男性たちは気をつかわなくてもいいのにと残念そうな顔をしていた。
「雪美様の気持ちが凄く分かるよ。あたしたちは何度もそういうのに負けてきたからね」
「それでも届けていれば良かったのでは。誰も文句は言いませんよ」
「あんた。文句言うなら、妻を若い男に寝取られたと考えてみな。悔しいだろ?でも雪美様は、若い男の立場で妻に近づかなかったんだ。偉いとは思わないかい?」
ようやく理解できた男性たちは、酷く悲しそうな顔をしていた。
寝取られ耐性がないのか、怒りに震える者もいた。
やっぱり行かなくて良かったと思ったが、試作品を作っていた日々を思い出して涙がぽろっと出た。一度涙が出てしまうと、涙が止まらなくなってしまった。
本当はエリオットに渡したかった。連日付き合ってくれた料理長や長年使えている人たちから何が好きか聞いたのに。素人の発想なんてたかが知れている。それを再現しようとしてくれたのに。
「ごめんなさい。せっかく時間をかけて作ってくれたのに」
「何をおっしゃっているんですか。いいんですよ。こうして誰かに食べて頂けたのですから」
「獣人の子供たちだって分かっているさ。エリオット様に対する雪美様の気持ちを」
途中訳が分からない事が聞こえたけれど、雰囲気に流されてそのままにした。もしも、追い出されても獣人族の元に絶対に近づかないでおこう。
サンドイッチを持っていくことに決定したが、中身がジャムの物しか皆知らなかった。
歴代の異世界召喚者が残してくれた知識のおかげで、食パンはこの世界にはあった。しかし、等分に切る機材がなかった。
ああでもないこうでもないと使用人たちと評価し、何とか完成した料理は完成した。
気軽にサクッと食べられるサンドイッチで、中身は色んな味の物にした。ジャムに、フルーツに、おかず系まで作り、これでパーティーが出来ますねと褒め称えてくれたくらいだ。量が多くて確かにそうだと納得した。
喜んでくれたらいいなと少しだけ期待をして騎士団の鍛錬場に向かう事にした。エリオットは連日仕事に忙しいから帰ってくるのが遅い。頭がスッキリする紅茶の茶葉も持って、目の前で入れる練習もした。
連日のエッチな出来事を過去の出来事と割り切ってくれるくらいスッキリして欲しい。道中、子供たちが遊んでいて長閑な風景が広がった。
今日、一緒に来るメイドさんはステファニーで、同じ年齢の彼女はこの世界について事を教えてくれる。
鍛錬場の近くまで行くと同じ年位の女の子たちが集まっていた。どの子達も思い思いに何かを手にして誰かを待っている。
そこに華やかな美少女がやってきた。整えられた見た目はお人形のみたいで、周りと比べて段違いにオーラが違う。メイドさんたちが私が持ってきた籠に似たものを持っていた。あの子も料理を持ってきているんだ。
「…………雪美様?」
「今日は帰ろう」
「どうしてですか?一生懸命頑張って作ったのに」
「見て。外にいる女の子たちも一生懸命頑張って作った物を持ってるよ。私が異世界から来た人で、優先されたら悔しいでしょ。家族じゃないのに、ただの居候なのに。外から来たポッと出の女に居場所を奪われたら溜まったもんじゃないよ。
あの子たちはこれからずっとこの世界にいる。思春期の今、変な事があってトラウマになる方が嫌だもん。決めた、今日は帰って使用人たちのお土産にすればいいのよ。ほら、帰りましょう。」
「…………分かりました。御者に理由を伝えます」
「うん、お願い」
馬車はゆっくり来た道を戻っていく。
本当はエリオットに食べてほしかったなぁ。
♢♢♢
早く帰るとエリオットに届けてこいと説教される事を考えて、長閑な景色と例えた場所を少しだけ歩くことにした。
美しい草原が広がって、お腹が空いたから少しだけサンドイッチを食べることにした。一口食べると、手作りしたサンドイッチは凄く美味しかった。食パンに味が染みこんでプロが作ったから、素人に出せない味が出ていた。
料理長を皆の前で褒め称えよう。
「これを全部食べるのは流石にしんどいな」
口に出てしまうほど、お腹は満腹に近い。コルセットのせいにしたいが、これ以上食べたらまた太ってしまう。一つは食べきった。隣を向くとステファニーがあからさまに顔を背けられた。
ステファニーは太りたくないと顔に出ていて、御者は妻のお弁当を食べたばかりで食えないと顔に出ていた。
不意に視線を感じて、そちらを振り向いた。馬車の周りに子供たちが集まってお腹を空かした音が聞こえた。耳付きの獣人の子供たちがこちらを見ている。
「ステファニー」
「ダメです」
授業中に教わったのだが、獣人は懐くために必要以上に近づいたら危険なのだ。
「いいじゃない、それとも持って帰って怒られたい?どうしてエリオット様に持って行かなかったんだって」
「ええ、それ脅しですよ。まあ、いいですけれど子供たちだけですし」
急いで馬車に駆け寄るとバスケットを下ろした。御者が子供たちに説明してくれる。人間の女性から、獣人の男に子供でも話しかけてはいけない。理由は伴侶と勘違いして襲われるから。思い込み、マジで凄い。
「いいの…………」
上目遣いの大きな瞳で見つめられて大きく頷いた。獣人の子供たちは睫毛が長くて大きな瞳で可愛らしい。キッズモデルに今すぐ採用されるのが決定になるくらい手足が長い。ちんちくりんは1人もいない。
それから彼らは凄かった。独特の声を出すとどこからともなく子供たちが現れて、騎士団のために作ったサンドイッチの入ったバスケットを抱えると何処かに消えた。
「バスケットって高いよね」
「まあ仕方がないですね。警戒して目の前で食べませんから」
「…………食べているところ、みたいなぁ」
「ダメです」
「ダメか」
「授業で聞いてないんですか?獣人の食事をするところを見てしまったら、いくら逃げても捕まって、寝床に連れて行かれて孕ませられるって。人間に物凄いセックスをする癖に、お金を支払う能力が低いから未婚の母になる人が多いのです。
獣人は性欲と食欲旺盛で維持費も馬鹿にならないので人間とはしてはいけません。」
「やけに詳しいじゃない」
「姉がそうだからです。興味本位で獣人とセックスしたのが運の尽き。貴族学校を首席でキープしていたのに妊娠して退学しました。相手が働かないので、お金を稼ぐために産みながら働きましたよ。ちなみに相手はお金がないと分かると逃げましたね。ロクデナシでした。子供は維持費が高くて、私はこうして行事見習いに早すぎる年齢で始めました。この世の地獄を身内が体験しているのに、わざわざ勧めません」
この世の闇を聞いてしまった。戻ってきた獣人の子供たちは、お腹いっぱいになるまで食べたのかバスケットを渡した後、すぐに戻っていく。
早く帰宅した私たちは帰ってきた理由を聞かれてハッキリ答えた。女性たちは理由を理解してくれて、男性たちは気をつかわなくてもいいのにと残念そうな顔をしていた。
「雪美様の気持ちが凄く分かるよ。あたしたちは何度もそういうのに負けてきたからね」
「それでも届けていれば良かったのでは。誰も文句は言いませんよ」
「あんた。文句言うなら、妻を若い男に寝取られたと考えてみな。悔しいだろ?でも雪美様は、若い男の立場で妻に近づかなかったんだ。偉いとは思わないかい?」
ようやく理解できた男性たちは、酷く悲しそうな顔をしていた。
寝取られ耐性がないのか、怒りに震える者もいた。
やっぱり行かなくて良かったと思ったが、試作品を作っていた日々を思い出して涙がぽろっと出た。一度涙が出てしまうと、涙が止まらなくなってしまった。
本当はエリオットに渡したかった。連日付き合ってくれた料理長や長年使えている人たちから何が好きか聞いたのに。素人の発想なんてたかが知れている。それを再現しようとしてくれたのに。
「ごめんなさい。せっかく時間をかけて作ってくれたのに」
「何をおっしゃっているんですか。いいんですよ。こうして誰かに食べて頂けたのですから」
「獣人の子供たちだって分かっているさ。エリオット様に対する雪美様の気持ちを」
途中訳が分からない事が聞こえたけれど、雰囲気に流されてそのままにした。もしも、追い出されても獣人族の元に絶対に近づかないでおこう。
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