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夫のことを愛している
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その日、異世界に来てから久しぶりに元の世界の夢を見た。
夫と初めて出会ったときの事、親に紹介した時の事、結婚式の事。どれもこれも幸福な記憶だった。
目が覚めると幸福な気持ちで目を覚ました。身体の関係がなくても上手くいけたのだから、元の世界に戻っても上手くいける。今度はいいたいことを言って、仕事でも始めよう。手に掃除道具を持っていると窓の外を見るとアレンが帰ってきた姿が見えた。
獣に襲われるといけないので、アレンが入ってくるギリギリまで待ってドアを開ける。
「おかえりなさい」
驚いた顔をしたアレンが目を細めて優しい嬉しそうな顔をする。手には沢山の獣を飼ってきたみたいで血だらけだった。お風呂を準備してアレンを入れると手際の良さにアレンは香織が異国の人だと一瞬忘れてしまう。
アレンが無言で動いて身支度をするのだが、香織は何も聞かない。アレンも何か考えたいことがあるのだから。
「何かいいことがあったのか」
椅子に腰かけてお茶を飲んで暫くすると、帰ってきて最初に聞いた一言に香織は笑顔で答える。久しぶりに故郷の夢を見たこと。夫と初めて出会った時のことを言うとアレンは悲しそうな顔をしたので、話をすることをやめようとした。
「続けてくれ、もっと話を聞きたい」
「面白い話ではないですよ」
「それでもいい」
アレンは香織の話している言葉を、異国の単語が出てきても聞き返さず、聞いていた。香織は気を使って出来るだけ分かるようにアレンに話した。
どうか、この話で夫のことを愛している事を理解してほしいと思いながら。
香織が話し終えるとアレンはここにやってきたときのことを、異世界にやってきて初めて聞いた。
「夫と約束していたのですが、約束の時間と場所に来なくて。一人で大きな舟に乗ってるときに、大量に流れ星が流れてこちらの世界に来たのです」
「何故来なかったんだ?何故カオリは怒らない」
「仕事だから仕方ないんですよ。それに慣れているから」
「慣れている?」
アレンの顔が苛立ちを感じている表情に変わると香織はしまったと思ったが、アレンはアイスブルーの瞳はまっすぐ香織を見つめている。
「忙しいから、向こうの世界では仕事している人は凄く忙しいんです」
「だから番を蔑ろにする理由ではない」
「アレン、私は蔑ろにされてない。愛されていた」
愛されていた。
口に出して見ると恥ずかしくなって体温が高くなり顔が赤くなった。
アレンは香織の表情を見て何か考える
泣きそうな困った顔をした香織だったから
「元の世界に戻れるとしたら帰るのか?」
「……そうね。帰りますよ。帰って治療をするの」
「治療?」
香織はアレンが握られた手に少し力が入ったことが感じられると言わなきゃよかったと心から思った。アレンの前では嘘がつけないらしい。
「子供が出来ないから、病院に行って治療をするの。夫が私に起たないから。私が魅力がないから。向こうの世界では普通にすることだから」
香織は言葉に少し嘘を混ぜる。向こうの世界では普通にすることなんだろうか。自分が知っている範囲で治療している人は見たことも聞いたこともない。
「カオリに、女性に負担があるのか?」
香織も少ししか知らないが、女性の方が負担が多いと知識で知っている。男性は容器に出して検査をする。女性は排卵促進剤を注射で打って、針の痕が凄いことになるということもネットで見た。でもそれを今説明することが出来ない。口ごもるとアレンは手を労わるように握ってきた。
「本当は治療したくないんじゃないか、カオリはそう思ってないか?」
答える変わり、涙がとめどなく溢れて頬を伝う。涙を止めようとして顔に手を当てるとアレンがハンカチで涙を拭ってくれる。
治療を受けることが怖い。
どうして、しないといけないの?
子供がいなくても幸せだと思っていたのは自分だけだったのかな。
「俺ならカオリを蔑ろにしない。カオリの嫌がることはしない。一生大切にする。愛している。」
アレンの告白がじわじわと隙間だらけの心に染みていく。
真っすぐな言葉は香織が欲しかった言葉だった。
夫のことを愛している香織という人間がアレンを受け入れるには時間が必要だった。夫を愛していると信じている香織の凍り付いた心を溶かす時間。
もうすぐ冬が来る。
人里は慣れたこの家は孤立する。
夫と初めて出会ったときの事、親に紹介した時の事、結婚式の事。どれもこれも幸福な記憶だった。
目が覚めると幸福な気持ちで目を覚ました。身体の関係がなくても上手くいけたのだから、元の世界に戻っても上手くいける。今度はいいたいことを言って、仕事でも始めよう。手に掃除道具を持っていると窓の外を見るとアレンが帰ってきた姿が見えた。
獣に襲われるといけないので、アレンが入ってくるギリギリまで待ってドアを開ける。
「おかえりなさい」
驚いた顔をしたアレンが目を細めて優しい嬉しそうな顔をする。手には沢山の獣を飼ってきたみたいで血だらけだった。お風呂を準備してアレンを入れると手際の良さにアレンは香織が異国の人だと一瞬忘れてしまう。
アレンが無言で動いて身支度をするのだが、香織は何も聞かない。アレンも何か考えたいことがあるのだから。
「何かいいことがあったのか」
椅子に腰かけてお茶を飲んで暫くすると、帰ってきて最初に聞いた一言に香織は笑顔で答える。久しぶりに故郷の夢を見たこと。夫と初めて出会った時のことを言うとアレンは悲しそうな顔をしたので、話をすることをやめようとした。
「続けてくれ、もっと話を聞きたい」
「面白い話ではないですよ」
「それでもいい」
アレンは香織の話している言葉を、異国の単語が出てきても聞き返さず、聞いていた。香織は気を使って出来るだけ分かるようにアレンに話した。
どうか、この話で夫のことを愛している事を理解してほしいと思いながら。
香織が話し終えるとアレンはここにやってきたときのことを、異世界にやってきて初めて聞いた。
「夫と約束していたのですが、約束の時間と場所に来なくて。一人で大きな舟に乗ってるときに、大量に流れ星が流れてこちらの世界に来たのです」
「何故来なかったんだ?何故カオリは怒らない」
「仕事だから仕方ないんですよ。それに慣れているから」
「慣れている?」
アレンの顔が苛立ちを感じている表情に変わると香織はしまったと思ったが、アレンはアイスブルーの瞳はまっすぐ香織を見つめている。
「忙しいから、向こうの世界では仕事している人は凄く忙しいんです」
「だから番を蔑ろにする理由ではない」
「アレン、私は蔑ろにされてない。愛されていた」
愛されていた。
口に出して見ると恥ずかしくなって体温が高くなり顔が赤くなった。
アレンは香織の表情を見て何か考える
泣きそうな困った顔をした香織だったから
「元の世界に戻れるとしたら帰るのか?」
「……そうね。帰りますよ。帰って治療をするの」
「治療?」
香織はアレンが握られた手に少し力が入ったことが感じられると言わなきゃよかったと心から思った。アレンの前では嘘がつけないらしい。
「子供が出来ないから、病院に行って治療をするの。夫が私に起たないから。私が魅力がないから。向こうの世界では普通にすることだから」
香織は言葉に少し嘘を混ぜる。向こうの世界では普通にすることなんだろうか。自分が知っている範囲で治療している人は見たことも聞いたこともない。
「カオリに、女性に負担があるのか?」
香織も少ししか知らないが、女性の方が負担が多いと知識で知っている。男性は容器に出して検査をする。女性は排卵促進剤を注射で打って、針の痕が凄いことになるということもネットで見た。でもそれを今説明することが出来ない。口ごもるとアレンは手を労わるように握ってきた。
「本当は治療したくないんじゃないか、カオリはそう思ってないか?」
答える変わり、涙がとめどなく溢れて頬を伝う。涙を止めようとして顔に手を当てるとアレンがハンカチで涙を拭ってくれる。
治療を受けることが怖い。
どうして、しないといけないの?
子供がいなくても幸せだと思っていたのは自分だけだったのかな。
「俺ならカオリを蔑ろにしない。カオリの嫌がることはしない。一生大切にする。愛している。」
アレンの告白がじわじわと隙間だらけの心に染みていく。
真っすぐな言葉は香織が欲しかった言葉だった。
夫のことを愛している香織という人間がアレンを受け入れるには時間が必要だった。夫を愛していると信じている香織の凍り付いた心を溶かす時間。
もうすぐ冬が来る。
人里は慣れたこの家は孤立する。
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