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探索
7.襲撃された村①(5月3日)
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どうしてこうなった……
俺は村の周囲に広がる麦畑の土手に身を伏せ、前方を窺いながら一人呟く。
ここまでの道のりは順調だった。
モンスターに出くわすことも、森で迷子になることもなかった。
だが森を抜けた俺の目に飛び込んできたのは、立ち登る太い煙だったのだ。
炊事の火ではないのは明らかだった。村が火事になっているのかと駆け付けてみたところ、村までおよそ100mの地点で異変に気づいた。
燃えていたのは村の門だったのだ。
そして門の周りに集まったモンスターの姿。
人間よりも一回り大きな姿の人型のモンスター、棍棒を持ったオーガだ。そして取り巻きのゴブリンが何匹もいる。その数はオーガが4匹にゴブリンが50匹ぐらいだろうか。ゴブリン達は槍や錆びた剣で武装しており、弓矢を持った奴もいる。
村人達も櫓の上から応戦してはいるが、いかんせん多勢に無勢だ。門が燃え落ちれば蹂躙されるのも時間の問題だろう。
いったいどこからこんな数のモンスターが湧いてきたのだろう。自宅防衛戦で撃破したゴブリンは100匹は下らないはずだ。この森にはそれ以上のゴブリン達が潜んでいたという事か。
まさか森でモンスターに遭遇しなかったのは、村に攻め寄せていたからか。
どうする?など考える余地はなかった。
同じ人型同士でも、明らかに人間寄りの姿をした者とモンスターが争っていたら、どちらに味方するかは考えるまでもない。
俺は麦畑の影を走り、モンスターの真後ろへと移動を開始した。
◇◇◇
最も村の塀に近い麦畑の端まで辿り着くと、村からの怒鳴り声と悲鳴が聞こえてくる。
「もっと矢を持ってこい!塀に取り付かれるぞ!」
「北門に回り込まれてないか!誰か張り付けとけ!」
「アベルが行ってる!大丈夫だ!」
モンスター達の耳障りな鳴き声に混じって聞こえりのは、間違いなく人間の言葉だ。
日本語……というのは変だろうが、ともかく俺にも理解できる言語だ。
なんにせよ、モンスター達は俺に気付いていない。攻撃するなら今しかない。
彼我の距離は30~50m。ここはG36Vの出番だ。
土手に身を預けたままバイポットを展開し、スコープを覗く。セレクターはセミオート。狙いが逸れれば塀を貫通して村人を殺傷しかねない。
最優先で狙うべきは、弓矢を持った敵だ。折しも櫓の上の村人に向かって弓を引き絞るゴブリンを発見する。
タン!
小さくも鋭い発射音と共に飛び出したBB弾は、狙い過たずゴブリンの頭部を吹き飛ばした。
スコープを覗いたまま、次々にBB弾を撃ち込んでいく。さすがに標的が小さくすばしっこいと狙いが逸れる事も多々あるが、何せ密集陣形である。正に“撃てば当たる”のだ。
G36Vの300連マガジンの1/5も打ち切らぬ間に、立っているゴブリンはいなくなった。手や足を失った奴等が転げ回る中、残った5匹のオーガが敵を求めて右往左往している。
その中の1匹が俺の存在に気付いたらしい。
咆哮を上げて襲いかかってくる。
俺はG36Cを構えながら身体を起こし、フルオートでBB弾を撃ち込む。BB弾のストッピングパワーなどたかが知れている。数で押し切るしかない。
分厚い胸板に幾つもの穴を穿たれたオーガが、俺にたどり着く事なく倒れ込む。
敵の姿を見つけた残りのオーガ達が一斉に襲いかかってくるが、4匹の正面突撃など電動エアガンの敵ではなかった。
1匹づつ狙いを付けBB弾を撃ち込む。
すぐに立っているモンスターはいなくなった。
村人達の悲鳴と怒号が包んでいた辺りは、今や即死を免れたゴブリン達の呻き声と激しい息遣いだけが包んでいた。
◇◇◇
俺はミリタリーリュックにG36Vを収納し、G36Cをスリングで吊ったままゆっくりとゴブリン達に近づく。右手にはレッグホルスターから抜いたM93R。セレクターはセミオート、マガジンは装填数15発の純正品だ。
まだ息のあるゴブリンを探しては、1発づつ急所に撃ち込んで止めを刺す。
すまん。個人的には何の恨みもないが、生かしておけば明日には俺の家を襲うかもしれない。
倒したモンスターをテイムしたり心を通わせるなど、所詮はアニメやゲームの中だけの話なのだ。
本当にそうだろうか。
今俺の目の前で恐怖に顔を引き攣らせ命乞いをするモンスターこそが人類の成れの果てで、村に住んでいる人型の生き物こそがモンスターである可能性はないだろうか。
そういえば昔読んだ漫画に、そんな話があった気がする。
俺は同族殺しを犯しているのではないか。
そう思うと涙が込み上げてくる。短期間で多くの命を屠ったストレスもあるかもしれない。
タン!
銃把を握る右手に軽い衝撃を残して発射されたBB弾が、尻餅をついたゴブリンの眉間に吸い込まれ、後頭部に血飛沫を上げた。
こいつが最後の1匹だったようだ。
辺りに動く影はなくなった。
俺の周りを静けさが包む。
やり過ぎたか?
一抹の不安が脳裏をよぎる。
俺が知っている異世界物は、一様に“モンスターは敵”だった。中には人間と友好関係を気付いている魔人族や獣人族がいたりもするが、それはコミュニュケーションが取れる種族同士だからだ。
しかしである。
例えばこの世界ではモンスターと人間が共存共栄していて、この騒ぎも単なるお祭りだったりしたらどうだ。
日本でも戦国時代の合戦の再現を目玉にした祭りや催し物は幾つも開催されている。その異世界バージョンで、真に迫った演技をしていただけだったりはしないか。
だとすれば、俺は単なる大量殺人者だ。
銃把を握り締めたままの右手が震え出す。グローブの中がじっとりと湿ってくる。逃げ出したい衝動に駆られながら、ゆっくりと村の方に振り返る。
村からドッと声が聞こえた。
大勢の村人達が櫓や塀に群がって声を上げている。怒りや恐怖の声ではない。これは歓声だ。
◇◇◇
右手のM93Rを軽く掲げて村人達に挨拶する。
村人達も拳や武器を持った手を上げているから、変な意味はないはずだ。迂闊なジェスチャーが“敵対”や“求婚”の意味だったら大変な事になるからな。
「門を開けろ!英雄を迎え入れるんだ!」
「いや、まずは火を消せ!燃え広がるぞ!」
「水だ水!水を持ってこい!」
そうである。モンスター達は一掃されたとはいえ、村の門は相変わらず炎を上げて燃えさかっているのだ。
火を付けられたのか、侵入を防ぐために火を放ったのかはわからないが、このままでは塀や村の家屋にまで延焼してしまいそうだ。
水か。
だったら自宅防衛戦飛び散ったゴブリン達の血痕を洗い流した、あの魔法はどうだ。消火栓の代わりにはなるだろう。
頬に熱を感じるギリギリのところまで門に近づき、右の手のひらを燃え盛る門に向ける。
炎に包まれた門を手のひらから迸る霧状の水で飲み込む。
木造の、それも屋外の火災なら火点目掛けて棒状注水するのがセオリーなのだろうが、水流で門を破壊してしまうリスクもある。門の後方に住居があったり消火活動中の村人がいたら、それこそ二次災害に直結する。
まずは噴霧注水による窒息効果と冷却効果で火勢を抑えてから、火点を絞って棒状注水を行うべきだ。
その光景を櫓や塀に鈴生りになった村人達が呆気に取られたような顔で見ている。
あれ?水魔法の使い方間違えているのか?
不安がよぎるが、何せ人前で魔法を使うなんて初めてだし、始めてしまった事は仕方ない。途中で止める方が恥ずかしいだろう。
もうもうと立ち登っていた煙の柱は、真っ白な水蒸気に包まれ、その霧が晴れた後にはすっかり鎮火していたのである。
◇◇◇
塀に梯子をかけて、何人かの村人が出てきた。
炎が見えなくはなったとはいえ、焼け焦げた門は簡単には開きそうにない。
一人の男が話しかけてきた。年齢は40代ぐらいか。茶色の癖っ毛に同じ色の瞳。身長は俺より頭ひとつ分低いから、160cmぐらいか。腰からは剣を帯び、黄土色のチュニックに茶色のパンツ。足元は皮のサンダルだ。
「兄ちゃんすごいなあ。さぞかし名のあるカサドールなんだろう!?」
カサドールとはなんだ?固有名詞ではなさそうだから、俺の行為に対する呼称か。魔法使いか、それとも大量殺戮者か。咎めるような口調ではないから魔法使いの呼び名かもしれない。
「見た事もない徽章だが、“獅子狩人”のものとは違うな。それはいったい?」
もう一人の男が俺の肩の辺りを指さす。
黒地に鷲の翼を持つライオンと2本の交差する剣を銀糸で刺繍したワッペン。実在しない部隊章だが、とあるミリタリーショップで衝動買いしたものだ。まだフィールドでは誰とも被った事はない。
「ちょっとあんた!治癒魔法は使えないかい?怪我人をみてやってくれ!上手な奴が街に行っちまってるんだよ!」
塀から体を乗り出した女性が呼んでいる。
治癒魔法か。火魔法や水魔法がいわゆる攻撃魔法だとすれば、補助系の魔法や精神系の魔法もあるのだろう。それなら治癒魔法があるのも当然か。
「おう!今連れて行く!ささ、お兄さんこちらへ」
治癒魔法なんぞ使った事もないし、怪我人を前にしていきなり使えるようなものでもないだろう。だが乗り掛かった船という言葉もあるし、この場から逃げ出すわけにもいかない。今日の目的はこの世界の人々とコミュニケーションを図る事なのだ。
最初に来た男に連れられるまま、俺は梯子を登って村の中に入ったのである。
俺は村の周囲に広がる麦畑の土手に身を伏せ、前方を窺いながら一人呟く。
ここまでの道のりは順調だった。
モンスターに出くわすことも、森で迷子になることもなかった。
だが森を抜けた俺の目に飛び込んできたのは、立ち登る太い煙だったのだ。
炊事の火ではないのは明らかだった。村が火事になっているのかと駆け付けてみたところ、村までおよそ100mの地点で異変に気づいた。
燃えていたのは村の門だったのだ。
そして門の周りに集まったモンスターの姿。
人間よりも一回り大きな姿の人型のモンスター、棍棒を持ったオーガだ。そして取り巻きのゴブリンが何匹もいる。その数はオーガが4匹にゴブリンが50匹ぐらいだろうか。ゴブリン達は槍や錆びた剣で武装しており、弓矢を持った奴もいる。
村人達も櫓の上から応戦してはいるが、いかんせん多勢に無勢だ。門が燃え落ちれば蹂躙されるのも時間の問題だろう。
いったいどこからこんな数のモンスターが湧いてきたのだろう。自宅防衛戦で撃破したゴブリンは100匹は下らないはずだ。この森にはそれ以上のゴブリン達が潜んでいたという事か。
まさか森でモンスターに遭遇しなかったのは、村に攻め寄せていたからか。
どうする?など考える余地はなかった。
同じ人型同士でも、明らかに人間寄りの姿をした者とモンスターが争っていたら、どちらに味方するかは考えるまでもない。
俺は麦畑の影を走り、モンスターの真後ろへと移動を開始した。
◇◇◇
最も村の塀に近い麦畑の端まで辿り着くと、村からの怒鳴り声と悲鳴が聞こえてくる。
「もっと矢を持ってこい!塀に取り付かれるぞ!」
「北門に回り込まれてないか!誰か張り付けとけ!」
「アベルが行ってる!大丈夫だ!」
モンスター達の耳障りな鳴き声に混じって聞こえりのは、間違いなく人間の言葉だ。
日本語……というのは変だろうが、ともかく俺にも理解できる言語だ。
なんにせよ、モンスター達は俺に気付いていない。攻撃するなら今しかない。
彼我の距離は30~50m。ここはG36Vの出番だ。
土手に身を預けたままバイポットを展開し、スコープを覗く。セレクターはセミオート。狙いが逸れれば塀を貫通して村人を殺傷しかねない。
最優先で狙うべきは、弓矢を持った敵だ。折しも櫓の上の村人に向かって弓を引き絞るゴブリンを発見する。
タン!
小さくも鋭い発射音と共に飛び出したBB弾は、狙い過たずゴブリンの頭部を吹き飛ばした。
スコープを覗いたまま、次々にBB弾を撃ち込んでいく。さすがに標的が小さくすばしっこいと狙いが逸れる事も多々あるが、何せ密集陣形である。正に“撃てば当たる”のだ。
G36Vの300連マガジンの1/5も打ち切らぬ間に、立っているゴブリンはいなくなった。手や足を失った奴等が転げ回る中、残った5匹のオーガが敵を求めて右往左往している。
その中の1匹が俺の存在に気付いたらしい。
咆哮を上げて襲いかかってくる。
俺はG36Cを構えながら身体を起こし、フルオートでBB弾を撃ち込む。BB弾のストッピングパワーなどたかが知れている。数で押し切るしかない。
分厚い胸板に幾つもの穴を穿たれたオーガが、俺にたどり着く事なく倒れ込む。
敵の姿を見つけた残りのオーガ達が一斉に襲いかかってくるが、4匹の正面突撃など電動エアガンの敵ではなかった。
1匹づつ狙いを付けBB弾を撃ち込む。
すぐに立っているモンスターはいなくなった。
村人達の悲鳴と怒号が包んでいた辺りは、今や即死を免れたゴブリン達の呻き声と激しい息遣いだけが包んでいた。
◇◇◇
俺はミリタリーリュックにG36Vを収納し、G36Cをスリングで吊ったままゆっくりとゴブリン達に近づく。右手にはレッグホルスターから抜いたM93R。セレクターはセミオート、マガジンは装填数15発の純正品だ。
まだ息のあるゴブリンを探しては、1発づつ急所に撃ち込んで止めを刺す。
すまん。個人的には何の恨みもないが、生かしておけば明日には俺の家を襲うかもしれない。
倒したモンスターをテイムしたり心を通わせるなど、所詮はアニメやゲームの中だけの話なのだ。
本当にそうだろうか。
今俺の目の前で恐怖に顔を引き攣らせ命乞いをするモンスターこそが人類の成れの果てで、村に住んでいる人型の生き物こそがモンスターである可能性はないだろうか。
そういえば昔読んだ漫画に、そんな話があった気がする。
俺は同族殺しを犯しているのではないか。
そう思うと涙が込み上げてくる。短期間で多くの命を屠ったストレスもあるかもしれない。
タン!
銃把を握る右手に軽い衝撃を残して発射されたBB弾が、尻餅をついたゴブリンの眉間に吸い込まれ、後頭部に血飛沫を上げた。
こいつが最後の1匹だったようだ。
辺りに動く影はなくなった。
俺の周りを静けさが包む。
やり過ぎたか?
一抹の不安が脳裏をよぎる。
俺が知っている異世界物は、一様に“モンスターは敵”だった。中には人間と友好関係を気付いている魔人族や獣人族がいたりもするが、それはコミュニュケーションが取れる種族同士だからだ。
しかしである。
例えばこの世界ではモンスターと人間が共存共栄していて、この騒ぎも単なるお祭りだったりしたらどうだ。
日本でも戦国時代の合戦の再現を目玉にした祭りや催し物は幾つも開催されている。その異世界バージョンで、真に迫った演技をしていただけだったりはしないか。
だとすれば、俺は単なる大量殺人者だ。
銃把を握り締めたままの右手が震え出す。グローブの中がじっとりと湿ってくる。逃げ出したい衝動に駆られながら、ゆっくりと村の方に振り返る。
村からドッと声が聞こえた。
大勢の村人達が櫓や塀に群がって声を上げている。怒りや恐怖の声ではない。これは歓声だ。
◇◇◇
右手のM93Rを軽く掲げて村人達に挨拶する。
村人達も拳や武器を持った手を上げているから、変な意味はないはずだ。迂闊なジェスチャーが“敵対”や“求婚”の意味だったら大変な事になるからな。
「門を開けろ!英雄を迎え入れるんだ!」
「いや、まずは火を消せ!燃え広がるぞ!」
「水だ水!水を持ってこい!」
そうである。モンスター達は一掃されたとはいえ、村の門は相変わらず炎を上げて燃えさかっているのだ。
火を付けられたのか、侵入を防ぐために火を放ったのかはわからないが、このままでは塀や村の家屋にまで延焼してしまいそうだ。
水か。
だったら自宅防衛戦飛び散ったゴブリン達の血痕を洗い流した、あの魔法はどうだ。消火栓の代わりにはなるだろう。
頬に熱を感じるギリギリのところまで門に近づき、右の手のひらを燃え盛る門に向ける。
炎に包まれた門を手のひらから迸る霧状の水で飲み込む。
木造の、それも屋外の火災なら火点目掛けて棒状注水するのがセオリーなのだろうが、水流で門を破壊してしまうリスクもある。門の後方に住居があったり消火活動中の村人がいたら、それこそ二次災害に直結する。
まずは噴霧注水による窒息効果と冷却効果で火勢を抑えてから、火点を絞って棒状注水を行うべきだ。
その光景を櫓や塀に鈴生りになった村人達が呆気に取られたような顔で見ている。
あれ?水魔法の使い方間違えているのか?
不安がよぎるが、何せ人前で魔法を使うなんて初めてだし、始めてしまった事は仕方ない。途中で止める方が恥ずかしいだろう。
もうもうと立ち登っていた煙の柱は、真っ白な水蒸気に包まれ、その霧が晴れた後にはすっかり鎮火していたのである。
◇◇◇
塀に梯子をかけて、何人かの村人が出てきた。
炎が見えなくはなったとはいえ、焼け焦げた門は簡単には開きそうにない。
一人の男が話しかけてきた。年齢は40代ぐらいか。茶色の癖っ毛に同じ色の瞳。身長は俺より頭ひとつ分低いから、160cmぐらいか。腰からは剣を帯び、黄土色のチュニックに茶色のパンツ。足元は皮のサンダルだ。
「兄ちゃんすごいなあ。さぞかし名のあるカサドールなんだろう!?」
カサドールとはなんだ?固有名詞ではなさそうだから、俺の行為に対する呼称か。魔法使いか、それとも大量殺戮者か。咎めるような口調ではないから魔法使いの呼び名かもしれない。
「見た事もない徽章だが、“獅子狩人”のものとは違うな。それはいったい?」
もう一人の男が俺の肩の辺りを指さす。
黒地に鷲の翼を持つライオンと2本の交差する剣を銀糸で刺繍したワッペン。実在しない部隊章だが、とあるミリタリーショップで衝動買いしたものだ。まだフィールドでは誰とも被った事はない。
「ちょっとあんた!治癒魔法は使えないかい?怪我人をみてやってくれ!上手な奴が街に行っちまってるんだよ!」
塀から体を乗り出した女性が呼んでいる。
治癒魔法か。火魔法や水魔法がいわゆる攻撃魔法だとすれば、補助系の魔法や精神系の魔法もあるのだろう。それなら治癒魔法があるのも当然か。
「おう!今連れて行く!ささ、お兄さんこちらへ」
治癒魔法なんぞ使った事もないし、怪我人を前にしていきなり使えるようなものでもないだろう。だが乗り掛かった船という言葉もあるし、この場から逃げ出すわけにもいかない。今日の目的はこの世界の人々とコミュニケーションを図る事なのだ。
最初に来た男に連れられるまま、俺は梯子を登って村の中に入ったのである。
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