フサフサのハゲ




 ある冬の寒い日の昼前。



 俺はフサフサのファーが付いたジャンパーを羽織って、牛丼屋へ出かけた。



 そのジャンパーは、俺のお気に入りだった。牛丼は、俺の好物だった。



 牛丼屋の店内に入り、俺は空いている席に腰掛けた。



 正面を見ると、典型的なバーコード頭の男がいた。



 その男は、丼の中の物(中身はこちらからは見えなかった)を豪快に、口の中へとかき込んでいた。



(ハゲ散らかしながら、喰い散らかしてんなぁ……)



 俺はそんなことを思いながらも、優越感に似た何かを覚えていた。



 俺が注文を選んでいる間に、その男は、丼の中身を食べ終えた。



 丼の中身はわからなかったが、そこには米粒が残っていた。



 農家の方に感謝しろ……などという無粋なことを言うつもりはなかったが、俺自身は、米粒を一粒も残さないように心がけていた。



 それが最低限、料理を作ってくれた人へのマナーだと思っていた。



 俺がこの男に、負けている要素は、何一つないように思えた。



 はげちらかした男は、椅子の後ろに手を伸ばし、おもむろに、そこに置いてあった防寒着を、身につけ始めた。



 次の瞬間、俺は息を呑んだ。



 男が羽織ったのは、俺のとよく似たジャンパーだった。



 だが、そのフードについているファーは、俺の物よりも圧倒的にモコモコで暖かそうだった。



 「こいつ……俺より、フサフサだ!」



 俺は思った。



 俺の中の自尊心は、そこで砕けた。




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