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黒の少女
31話《リリアside》
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「居た…」
リリアは木の影からゴリラの様な筋肉隆々のラゴン種の災害級モンスター、ゴリゴランを見る。
「ゴリゴランの気性は非常に荒い…慎重に戦おう。」
リリアは物音を立てないように細心の注意をはらって、ゴリゴランに接近する。
(パキッ)と足元の枯れ枝が音を立てる。
リリアがしまった!と思った時には時既に遅し、ゴリゴランが素早く後ろを振り返ってリリアと目が合う。
「…」
ゴリゴランは少しだけリリアの目を見つめると全身の筋肉を倍以上に膨張させて、咆哮を放つ。
ゴリゴランの咆哮で周囲の木々が吹き飛ぶ。
「筋力強化!どらああぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
リリアは力強く声を上げる事で筋力を上げて大斧を構える。
「ゴルルァーン!」
ゴリゴランが力強くドラミングして、闘争本能を覚醒させる。
「先手必勝!ぶん回し!」
リリアが勢いよく片手で右から左へと大斧をぶん回す。
ゴリゴランはそれを避けようともせず、左腕で受け止めるとニヤリと笑う。
「この程度の攻撃を受け止めただけで勝ったつもり?どんどん行くよ!」
リリアは一度軽く後ろに飛び退くとゴリゴランが拳を構えて飛びかかる。
「でやぁ!」
リリアの右手に持った大斧の振り上げでゴリゴランの振り下ろされる左の拳を受け止める。
(ドゴォン!)とゴリゴランの拳とリリアの大斧がぶつかり、凄まじい衝撃波を発生させる。
「ゴリゴーリ」
ゴリゴランがまるでやるじゃねぇかと言いたげにリリアを見る。
「本気出てない…」
リリアがそう言うとゴリゴランがそのままリリアの大斧を蹴っ飛ばして、後ろに飛び退いて全身の血管を膨張させて、ドクドクと皮膚越しに血流が上がるのを確認できた。
「ここからが本番…!」
リリアは制限解除を発動して、魔力を通常よりかなり多く使用して、魔力で大斧を2倍の大きさにさせる。
リリアの制限解除は武具に対する枷を外す能力であり、武具の質量と破壊力を自在に変化させる能力なのだ。
重さは単純に2倍だが、破壊力は10倍、100倍と重さが上がる度に乗算されていく、リリアだから出来る技能であり、消費魔力に応じた破壊力の上昇がある。
そのため、現在のリリアの攻撃力は通常時とは比べ物にならないレベルだと推定される。
「ゴリゴリ!」
ゴリゴランが来いよと言いたげに指をクイクイと動かしてリリアを挑発する。
「言われなくても…」
リリアは縮地法で一瞬でゴリゴランの目の前に移動する。
「ぶっ叩くわよ!」
リリアが左手に持った大斧をゴリゴランの構えられた右腕に勢いよく叩きつける。
(ズガアァァァァァァァン!)ととてつもない轟音と衝撃波が発生する。
「ゴリゴーリ?」
ゴリゴランは自身の右腕を傷つけることすら出来ずに完全に止まってるリリアの大斧の刃を見ながら、これが限界か?と言いたげにリリアを見る。
「…傷もつかないのは予想外だったわ。でもね…」
リリアの大斧がさらに巨大化する。
「リリアの攻撃はまだまだこれからよ!20倍!」
ゴリゴランの右腕の表皮に刃が勢いよく食い込む。
「ゴリゴーリ!」
ゴリゴランはリリアを20倍の重さになった大斧をはじき飛ばす。
リリアは軽々と扱っているが、通常時でも本来は筋肉隆々の戦士が両手で持ってやっと扱えるほどの重さなのだが、リリアの圧倒的な人間離れした筋力によって、どれだけ重くしても軽々と扱えるのだそう。
リリアの華奢な見た目とは違い、まさに鬼神の如き筋力を持っていた。
リリアは左手で軽々とした動きで大斧を構えて言う。
「さすがに今のリリアではこれ以上は魔力的に厳しいけど、これならアンタも甘い顔出来ないんじゃないかしら?」
ゴリゴランがニヤリと笑う。
「ゴリゴーリ!」
ゴリゴランが右の拳を構える。
「ゴリ!ゴリー!」
まるで「行くぞ!小娘!」と言っているかのように雄叫びをあげるとそのまま勢いよく飛びかかって、拳を振り下ろす。
「でやぁ!」
(ドゴオオォォォォォォォン!)と爆音がなり響き、先程よりも強い衝撃波が発生する。
ゴリゴランは防がれたのが分かるとすぐに飛び退いて、次の攻撃の準備をしようとする。
「逃がさないわよ!」
リリアが縮地法で距離を一気に詰めて、振り上げた大斧を勢いよく振り下ろす。
ゴリゴランは初めてリリアの攻撃に対して回避行動をとる。
(バキバキバキバキ!)と周囲の地面がとてつもない速さで砕け、まるで隕石でも落ちたかのようなほど凹み、周囲では地下からマグマが吹き出ていた。
ゴリゴランの左腕を吹き出したマグマが掠め、ゴリゴランの巻き込まれた部分が少しだけ焼けたような跡が残る。
「ゴリゴーリ」
ゴリゴランは本能的にリリアの攻撃が一撃必殺級に跳ね上がっているのを察すると共に己の命を脅かす程の強者に喜びを感じているようだった。
リリアはそのまま大斧を持ち上げながら言う。
「アンタ、避けれたのね。てっきり、見た目通りに動きが鈍いから避けられないのかと思ってたわ。」
「ゴリ、ゴリゴーリ」
ゴリゴランはニヤリと笑う。
「面白いわ…アンタみたいなモンスターは初めてよ。」
リリアがそう言うとゴリゴランは楽しそうに笑って素早く怒涛のラッシュ攻撃を始める。
「リリアとインファイトしようだなんて面白いわね!」
リリアは目にも止まらない速さでゴリゴランのラッシュ攻撃を的確に対処して、反撃を加えていく。
「ゴリ!」
ゴリゴランが地面を沈めるほどの四股踏みをして大地を砕く。
「リリアには効かないわよ!」
リリアも地面に大斧を叩きつけて、衝撃を相殺する。
「ゴーリ!」
ゴリゴランの隙の生じぬ二段構えでリリアの腹にゴリゴランの右の拳が刺さる。
「ぐっ?!」
リリアの身体が勢いよく吹き飛び、後ろにあった木々をなぎ倒して何本もの木に叩きつけられ、血を吐いて木に沿って力なく地に落ちる。
「はぁ…はぁ…防御力は…はぁ…変わらない…か…ら…効くわね…骨も何本か逝ったし、内蔵もボロボロね…」
リリアは残り僅かな魔力で自身の傷を癒す。
「完全に治すとまではいかないけれど、マシなレベルにまでは回復出来たわ…」
リリアは元のサイズに戻った大斧を見て言う。
「さすがにこの状態であのゴリゴラン相手に戦闘を続けるのは死にに行くようなものね…完全に隙を突かれたわ。」
リリアが立ち上がると目の前にゴリゴランが現れる。
「ゴリゴーリゴリゴリ」
これでトドメだと言わんがばかりの振り下ろしがリリアに叩きつけられようとしていた。
無限の時間が流れる様に感じた一瞬の時間と共にリリアの目が閉じられ、死を覚悟した瞬間であった。
(ドゴオオォォォォォォォン!)
爆音と共にゴリゴランの身体が目の前で黒焦げになり、ゴリゴランが絶命する。
「…え?」
リリアが驚いて目を開くとそれをやった主の声がする。
「灯りをつけましょ爆弾に♪ドカンと鳴らして♪ほい、毎度ありってね♪」
リリアが声の方に振り返ると楽しげに笑う少女と無表情の少年が居た。
「エイラ…やりすぎ…」
深海を思わせるような青く長い髪と黄色い瞳の少年が言う。
「しょうがないじゃん!目の前で死にかけてたお姉さんが居たんだもん!」
燃えるように赤く短い髪と黄色い目の少女がムッとした様子で言う。
「もう少し…お姉ちゃん…死んでた…」
「あーもう!うるさいなぁ!無事だったんだから、良いでしょ!」
「…」
やれやれと言いたげに少年は軽く目を閉じて首を横に振る。
少女がリリアの前に来て言う。
「お姉さん、大丈夫?怪我はない?」
リリアは立ち上がって少女を見て言う。
「あ、うん…ありがとう…」
リリアが困惑していると少年が言う。
「エイラ…自己紹介…」
「わかってるわよ。」
少女はそう言うと楽しげに笑って言う。
「私はエイラ!こっちの無愛想なのはセイラだよ!」
リリアはセイラと呼ばれた少年が少しだけニヤリと笑った様な気がした。
「僕達…双子…兄妹…」
「違うわ!姉弟よ!」
言葉のニュアンスの違いなのだろうか、エイラが少しムッとした様子で言う。
「どうでもいいよ…」
「良くないわよ!私の方が30分も早く産まれたのよ!」
「大差ない…」
リリアがオロオロと口論する二人の様子を見ているとセイラが言う。
「お姉ちゃん…困惑してる…」
「あ、忘れてた…」
エイラは完全に忘れていた様子だった。
「あの…えっと…」
リリアはどうしようか困った様子で目を逸らしていた。
「お姉さん、忘れててごめんね!お姉さんの名前も教えてよ!」
リリアは「ブレイブ」を心の中で唱える。
「わ、わかった…リリアは戦乙女のリリア…です…一応、S級冒険者…です…」
セイラが嬉しそうにほんの少しだけ目を細めて言う。
「可愛い名前だね…」
エイラは頷きながら言う。
「リリア…さん?」
「呼び捨てでも気にしないよ…」
「じゃあ、リリアのお言葉に甘えちゃうね!」
セイラはよく見ると自分も呼び捨てで呼ぼうか迷っている様子だった。
「セイラさんもリリアの事、呼び捨てで良いよ。」
セイラはそれを聞くと少しだけ嬉しそうな雰囲気を出していた。
「セイラ…呼び捨て…良い…」
「あ、ずるいぞ!私だって、リリアに呼び捨てで呼んでもらうからね!」
「強制…しない…」
リリアは二人の目線に顔を合わせて言う。
「遅くなったけど…エイラ、セイラ、助けてくれてありがと。おかげで命拾いしたわ。」
エイラは嬉しそうにドヤ顔して言う。
「フッフーン♪セイラよ、聞いたか?私の方がセイラより先に呼び捨てで呼んでもらったよ!」
「はいはい…」
セイラはやれやれと言いたげにエイラを軽くあしらっていた。
2人に話を聞いたところ、偶然近くを探検していて、凄まじい戦闘音が聞こえ、興味本位で行ったところ、リリアが死にかけていたと言うわけなんだそう。
なんと言うか、ほんとに偶然通りがかった二人に助けられたようだ。
リリアは木の影からゴリラの様な筋肉隆々のラゴン種の災害級モンスター、ゴリゴランを見る。
「ゴリゴランの気性は非常に荒い…慎重に戦おう。」
リリアは物音を立てないように細心の注意をはらって、ゴリゴランに接近する。
(パキッ)と足元の枯れ枝が音を立てる。
リリアがしまった!と思った時には時既に遅し、ゴリゴランが素早く後ろを振り返ってリリアと目が合う。
「…」
ゴリゴランは少しだけリリアの目を見つめると全身の筋肉を倍以上に膨張させて、咆哮を放つ。
ゴリゴランの咆哮で周囲の木々が吹き飛ぶ。
「筋力強化!どらああぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
リリアは力強く声を上げる事で筋力を上げて大斧を構える。
「ゴルルァーン!」
ゴリゴランが力強くドラミングして、闘争本能を覚醒させる。
「先手必勝!ぶん回し!」
リリアが勢いよく片手で右から左へと大斧をぶん回す。
ゴリゴランはそれを避けようともせず、左腕で受け止めるとニヤリと笑う。
「この程度の攻撃を受け止めただけで勝ったつもり?どんどん行くよ!」
リリアは一度軽く後ろに飛び退くとゴリゴランが拳を構えて飛びかかる。
「でやぁ!」
リリアの右手に持った大斧の振り上げでゴリゴランの振り下ろされる左の拳を受け止める。
(ドゴォン!)とゴリゴランの拳とリリアの大斧がぶつかり、凄まじい衝撃波を発生させる。
「ゴリゴーリ」
ゴリゴランがまるでやるじゃねぇかと言いたげにリリアを見る。
「本気出てない…」
リリアがそう言うとゴリゴランがそのままリリアの大斧を蹴っ飛ばして、後ろに飛び退いて全身の血管を膨張させて、ドクドクと皮膚越しに血流が上がるのを確認できた。
「ここからが本番…!」
リリアは制限解除を発動して、魔力を通常よりかなり多く使用して、魔力で大斧を2倍の大きさにさせる。
リリアの制限解除は武具に対する枷を外す能力であり、武具の質量と破壊力を自在に変化させる能力なのだ。
重さは単純に2倍だが、破壊力は10倍、100倍と重さが上がる度に乗算されていく、リリアだから出来る技能であり、消費魔力に応じた破壊力の上昇がある。
そのため、現在のリリアの攻撃力は通常時とは比べ物にならないレベルだと推定される。
「ゴリゴリ!」
ゴリゴランが来いよと言いたげに指をクイクイと動かしてリリアを挑発する。
「言われなくても…」
リリアは縮地法で一瞬でゴリゴランの目の前に移動する。
「ぶっ叩くわよ!」
リリアが左手に持った大斧をゴリゴランの構えられた右腕に勢いよく叩きつける。
(ズガアァァァァァァァン!)ととてつもない轟音と衝撃波が発生する。
「ゴリゴーリ?」
ゴリゴランは自身の右腕を傷つけることすら出来ずに完全に止まってるリリアの大斧の刃を見ながら、これが限界か?と言いたげにリリアを見る。
「…傷もつかないのは予想外だったわ。でもね…」
リリアの大斧がさらに巨大化する。
「リリアの攻撃はまだまだこれからよ!20倍!」
ゴリゴランの右腕の表皮に刃が勢いよく食い込む。
「ゴリゴーリ!」
ゴリゴランはリリアを20倍の重さになった大斧をはじき飛ばす。
リリアは軽々と扱っているが、通常時でも本来は筋肉隆々の戦士が両手で持ってやっと扱えるほどの重さなのだが、リリアの圧倒的な人間離れした筋力によって、どれだけ重くしても軽々と扱えるのだそう。
リリアの華奢な見た目とは違い、まさに鬼神の如き筋力を持っていた。
リリアは左手で軽々とした動きで大斧を構えて言う。
「さすがに今のリリアではこれ以上は魔力的に厳しいけど、これならアンタも甘い顔出来ないんじゃないかしら?」
ゴリゴランがニヤリと笑う。
「ゴリゴーリ!」
ゴリゴランが右の拳を構える。
「ゴリ!ゴリー!」
まるで「行くぞ!小娘!」と言っているかのように雄叫びをあげるとそのまま勢いよく飛びかかって、拳を振り下ろす。
「でやぁ!」
(ドゴオオォォォォォォォン!)と爆音がなり響き、先程よりも強い衝撃波が発生する。
ゴリゴランは防がれたのが分かるとすぐに飛び退いて、次の攻撃の準備をしようとする。
「逃がさないわよ!」
リリアが縮地法で距離を一気に詰めて、振り上げた大斧を勢いよく振り下ろす。
ゴリゴランは初めてリリアの攻撃に対して回避行動をとる。
(バキバキバキバキ!)と周囲の地面がとてつもない速さで砕け、まるで隕石でも落ちたかのようなほど凹み、周囲では地下からマグマが吹き出ていた。
ゴリゴランの左腕を吹き出したマグマが掠め、ゴリゴランの巻き込まれた部分が少しだけ焼けたような跡が残る。
「ゴリゴーリ」
ゴリゴランは本能的にリリアの攻撃が一撃必殺級に跳ね上がっているのを察すると共に己の命を脅かす程の強者に喜びを感じているようだった。
リリアはそのまま大斧を持ち上げながら言う。
「アンタ、避けれたのね。てっきり、見た目通りに動きが鈍いから避けられないのかと思ってたわ。」
「ゴリ、ゴリゴーリ」
ゴリゴランはニヤリと笑う。
「面白いわ…アンタみたいなモンスターは初めてよ。」
リリアがそう言うとゴリゴランは楽しそうに笑って素早く怒涛のラッシュ攻撃を始める。
「リリアとインファイトしようだなんて面白いわね!」
リリアは目にも止まらない速さでゴリゴランのラッシュ攻撃を的確に対処して、反撃を加えていく。
「ゴリ!」
ゴリゴランが地面を沈めるほどの四股踏みをして大地を砕く。
「リリアには効かないわよ!」
リリアも地面に大斧を叩きつけて、衝撃を相殺する。
「ゴーリ!」
ゴリゴランの隙の生じぬ二段構えでリリアの腹にゴリゴランの右の拳が刺さる。
「ぐっ?!」
リリアの身体が勢いよく吹き飛び、後ろにあった木々をなぎ倒して何本もの木に叩きつけられ、血を吐いて木に沿って力なく地に落ちる。
「はぁ…はぁ…防御力は…はぁ…変わらない…か…ら…効くわね…骨も何本か逝ったし、内蔵もボロボロね…」
リリアは残り僅かな魔力で自身の傷を癒す。
「完全に治すとまではいかないけれど、マシなレベルにまでは回復出来たわ…」
リリアは元のサイズに戻った大斧を見て言う。
「さすがにこの状態であのゴリゴラン相手に戦闘を続けるのは死にに行くようなものね…完全に隙を突かれたわ。」
リリアが立ち上がると目の前にゴリゴランが現れる。
「ゴリゴーリゴリゴリ」
これでトドメだと言わんがばかりの振り下ろしがリリアに叩きつけられようとしていた。
無限の時間が流れる様に感じた一瞬の時間と共にリリアの目が閉じられ、死を覚悟した瞬間であった。
(ドゴオオォォォォォォォン!)
爆音と共にゴリゴランの身体が目の前で黒焦げになり、ゴリゴランが絶命する。
「…え?」
リリアが驚いて目を開くとそれをやった主の声がする。
「灯りをつけましょ爆弾に♪ドカンと鳴らして♪ほい、毎度ありってね♪」
リリアが声の方に振り返ると楽しげに笑う少女と無表情の少年が居た。
「エイラ…やりすぎ…」
深海を思わせるような青く長い髪と黄色い瞳の少年が言う。
「しょうがないじゃん!目の前で死にかけてたお姉さんが居たんだもん!」
燃えるように赤く短い髪と黄色い目の少女がムッとした様子で言う。
「もう少し…お姉ちゃん…死んでた…」
「あーもう!うるさいなぁ!無事だったんだから、良いでしょ!」
「…」
やれやれと言いたげに少年は軽く目を閉じて首を横に振る。
少女がリリアの前に来て言う。
「お姉さん、大丈夫?怪我はない?」
リリアは立ち上がって少女を見て言う。
「あ、うん…ありがとう…」
リリアが困惑していると少年が言う。
「エイラ…自己紹介…」
「わかってるわよ。」
少女はそう言うと楽しげに笑って言う。
「私はエイラ!こっちの無愛想なのはセイラだよ!」
リリアはセイラと呼ばれた少年が少しだけニヤリと笑った様な気がした。
「僕達…双子…兄妹…」
「違うわ!姉弟よ!」
言葉のニュアンスの違いなのだろうか、エイラが少しムッとした様子で言う。
「どうでもいいよ…」
「良くないわよ!私の方が30分も早く産まれたのよ!」
「大差ない…」
リリアがオロオロと口論する二人の様子を見ているとセイラが言う。
「お姉ちゃん…困惑してる…」
「あ、忘れてた…」
エイラは完全に忘れていた様子だった。
「あの…えっと…」
リリアはどうしようか困った様子で目を逸らしていた。
「お姉さん、忘れててごめんね!お姉さんの名前も教えてよ!」
リリアは「ブレイブ」を心の中で唱える。
「わ、わかった…リリアは戦乙女のリリア…です…一応、S級冒険者…です…」
セイラが嬉しそうにほんの少しだけ目を細めて言う。
「可愛い名前だね…」
エイラは頷きながら言う。
「リリア…さん?」
「呼び捨てでも気にしないよ…」
「じゃあ、リリアのお言葉に甘えちゃうね!」
セイラはよく見ると自分も呼び捨てで呼ぼうか迷っている様子だった。
「セイラさんもリリアの事、呼び捨てで良いよ。」
セイラはそれを聞くと少しだけ嬉しそうな雰囲気を出していた。
「セイラ…呼び捨て…良い…」
「あ、ずるいぞ!私だって、リリアに呼び捨てで呼んでもらうからね!」
「強制…しない…」
リリアは二人の目線に顔を合わせて言う。
「遅くなったけど…エイラ、セイラ、助けてくれてありがと。おかげで命拾いしたわ。」
エイラは嬉しそうにドヤ顔して言う。
「フッフーン♪セイラよ、聞いたか?私の方がセイラより先に呼び捨てで呼んでもらったよ!」
「はいはい…」
セイラはやれやれと言いたげにエイラを軽くあしらっていた。
2人に話を聞いたところ、偶然近くを探検していて、凄まじい戦闘音が聞こえ、興味本位で行ったところ、リリアが死にかけていたと言うわけなんだそう。
なんと言うか、ほんとに偶然通りがかった二人に助けられたようだ。
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