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使い魔狩り
怪しげな会話
しおりを挟む「そういや最近、使い魔狩りが頻発してるらしいぜ。お前ら…とくにルカくん、気をつけろよ」
リヒトの仕事場に一緒についてきた日。
中庭の噴水前で6人揃って休憩を取っていると、ケンさんが突然そんなことを言い出した。
リヒトの仕事場には、たまに一緒についてきて部屋を掃除したり書類を整理したりコーヒーや紅茶を淹れたり、ちょっとしたことを手伝っている。
この日も、今日はカイもリアムも来るみたいだけどルカも行く?なんて聞かれて迷わず行くと即答した。
使い魔狩り。
聞き慣れないがなにやら不穏な気配が漂う単語に首を傾げる。
「俺ら祓魔師にとって、他人の使い魔を祓うことは禁忌事項なんだ。ところがどっかの誰かさんがその禁忌事項を破って、他人の使い魔祓いまくってるって話」
クオンの説明を聞いて背筋がゾクリと震え、思わず隣にいたリヒトの腕をギュッと掴むと、リヒトは安心させるようにおれの頭を撫でてくれて、ルカのことは俺が守るから大丈夫だよ、と言ってくれた。
「まぁうちのリアムはゴリラだから心配ないけどね」
「誰がゴリラだ」
「うちのカイも顔濃いから大丈夫そうだけどなー」
「えっ顔の濃さ関係なくね?」
みんなのやり取りを聞いていると、面白くてつい笑ってしまう。
(…楽しいなぁ。)
みんながみんな、こんな風にいい人達だったらいいのに。
つい先日、おれは普通の人間がまるで悪魔のように豹変する瞬間を目の当たりにしてしまった。
あんな風な恐ろしい人間が他にも存在していると知ってなんだか悲しい気持ちになる。
「まぁでもケンさんも言ってたけど、こん中で一番危険なのはルカだと俺も思うから。マジで気をつけるんだぞ?」
「オレらも今総力挙げて犯人探ししてっからさ。犯人見つかるまでは油断すんじゃねぇぞ」
悪魔のおれを相手に、まるで人間の女性か子供のように心配して声を掛けてくれるクオンとケンさんの優しさが嬉しい。
「ルカ、そろそろ行こうか」
もう仕事に戻らないと、と言うリヒトに手を引かれて立ち上がる。
俺らももう行くわ、そう言っておれ達に続いて立ち上がったクオンとリアムに、またねと手を振り歩き出した。
今日の夜ご飯何にしようかなーなんて話をしながら。
…だから、気付けなかった。
去っていくおれ達を見送りながら、ケンさんとカイがあやしげな会話を交わしていたことに。
「…分かってんな、カイ。決行は5日後の夜だ。それまで絶対バレねぇようにしろよ?」
「分かってっし。おれはおっさんの方が心配だわ。うっかり口滑らすとかやめてね?バレたら全部水の泡なんだから」
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