エルフに転生したら花吐き病になりまして、生薬素材のために思い人に飼われています
注意。花吐き病はオリジナルではありません。問題がありましたら即刻削除いたします。また今作におきまして、闘病中の方、また医療に関わる方々を揶揄する意はございません。
嘔吐、流血表現。また攻めに妻子のいる表現?が含まれています。苦手な方は閲覧をご控えください。
ー
花吐き病を知っているだろうか。片想いしたものにのみ発症する奇病。思い人と結ばれるまで花を吐き続ける病気だ。もちろん日本には存在しない。想像上の産物だ。オレだってそんな設定の話があるのかーへぇーと他人事にしか思ってなかった。
まさか、その病がある世界に転生するなんて思わなかったんだ。
ー
「ーーカ、スピカ。起きてくれ。」
ギイッと鉄格子の檻が開きベッドの柵に繋がれた鎖を、屋内なのに外套を頭まですっぽり被ったご主人様が解く。
自分の耳を引っ張る。尖ってんだよな。肌は透けるように白く、爪は青く、髪もまっちろけ。日本にいたときの黒髪も日に焼けた肌ももうない。なんならタッパもない。
「はい、ご主人様」
「いい返事だ。具合はどうだい?君は沢山吐かないといけないから、喉をよく痛めるだろう。」
「……。ご主人様、奴隷には身に余るお言葉です。」
込み上がってくるものを無理やり押さえ込む。仕事場で吐かなきゃ。
「今日も、調合しなきゃならないんだ…。よろしく頼むよ」
ポンポンっと頭を撫でられ、横抱きにされる。外套からはご主人様の匂いがして外套越しにぬくもりを感じて…。
「…ごしゅじ、ん…様、揺れるからとても吐きそうです。」
「ええっ!ここで吐かれたら困るよ。」
「急いでください。」
間違えるな傷つくな。優しく接してくれるのは、オレが薬に使える薬草を吐くからだ。
木でできた大きなたらいに頭を下げる。ゲェッと吐いた花は花弁をたっぷりと開き甘い匂いを放つ。花も茎も根も傷つかないように喉の奥を開き吐き出した。
吐いた花は手袋越しに拾われる。でもそれは生けられることも、愛でられることも、腕に抱かれることもない。ご主人様が聖水で洗ったあと天日に干され乳鉢ですり潰される。
「うん。今日もいい花だ。ありがとうね。」
「ゥ…げぇ…」
喉が開く。涎で汚れた花弁がたくさん桶の中に山積みになる。汚いそれをご主人様が拾い上げ種類ごとに分けて並べていく。
「ああ、今日は一段とよく吐くね。このトコノエソウは鎮痛に必要なものだから、ありがたいな。」
「…奥様のご病気が治るといいですね。」
「あぁ、あぁ…。ありがとうスピカ。君のおかげだよ」
ご主人様は優しく笑う。それだけでまた胸が苦しくなり花が喉奥からこみ上げる。
ああ、花吐き病、なんて厄介な病気なんだ。鮮やかな花が、俺の悲劇を嘲り笑うのだ。お前は諦められていないと。
嘔吐、流血表現。また攻めに妻子のいる表現?が含まれています。苦手な方は閲覧をご控えください。
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花吐き病を知っているだろうか。片想いしたものにのみ発症する奇病。思い人と結ばれるまで花を吐き続ける病気だ。もちろん日本には存在しない。想像上の産物だ。オレだってそんな設定の話があるのかーへぇーと他人事にしか思ってなかった。
まさか、その病がある世界に転生するなんて思わなかったんだ。
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「ーーカ、スピカ。起きてくれ。」
ギイッと鉄格子の檻が開きベッドの柵に繋がれた鎖を、屋内なのに外套を頭まですっぽり被ったご主人様が解く。
自分の耳を引っ張る。尖ってんだよな。肌は透けるように白く、爪は青く、髪もまっちろけ。日本にいたときの黒髪も日に焼けた肌ももうない。なんならタッパもない。
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「いい返事だ。具合はどうだい?君は沢山吐かないといけないから、喉をよく痛めるだろう。」
「……。ご主人様、奴隷には身に余るお言葉です。」
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「…ごしゅじ、ん…様、揺れるからとても吐きそうです。」
「ええっ!ここで吐かれたら困るよ。」
「急いでください。」
間違えるな傷つくな。優しく接してくれるのは、オレが薬に使える薬草を吐くからだ。
木でできた大きなたらいに頭を下げる。ゲェッと吐いた花は花弁をたっぷりと開き甘い匂いを放つ。花も茎も根も傷つかないように喉の奥を開き吐き出した。
吐いた花は手袋越しに拾われる。でもそれは生けられることも、愛でられることも、腕に抱かれることもない。ご主人様が聖水で洗ったあと天日に干され乳鉢ですり潰される。
「うん。今日もいい花だ。ありがとうね。」
「ゥ…げぇ…」
喉が開く。涎で汚れた花弁がたくさん桶の中に山積みになる。汚いそれをご主人様が拾い上げ種類ごとに分けて並べていく。
「ああ、今日は一段とよく吐くね。このトコノエソウは鎮痛に必要なものだから、ありがたいな。」
「…奥様のご病気が治るといいですね。」
「あぁ、あぁ…。ありがとうスピカ。君のおかげだよ」
ご主人様は優しく笑う。それだけでまた胸が苦しくなり花が喉奥からこみ上げる。
ああ、花吐き病、なんて厄介な病気なんだ。鮮やかな花が、俺の悲劇を嘲り笑うのだ。お前は諦められていないと。
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