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本編完結:あなたと紡ぐ未来

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 後でお母様にお聞きしたところ、セオドア王国エリック王太子殿下と、ユリア男爵令嬢様は、シュワルミット王国に連行され、奴隷として働いているそうです。

 あの国の奴隷は、奴隷紋という魔法の印を刻まれて、国から出ようとすると、体にものすごい痛みが生じるのだとか。

 国が違うと、色々知らないことがあるのですね。

 それに、キチンと働かないと食事が支給されないらしく、最初は抵抗していたお二人も、食欲に負けて働いているらしいです。

 元王太子殿下は、鉱山での荷物運び。
 元男爵令嬢様は、その鉱山での賄い婦だそうです。

 一生そこから出ることは叶わないそうですが、それでもキチンと働き、一生懸命償っていれば、その世界の中での自由は得られるのだとか。

 例えば奴隷同士の結婚とかですね。
婚約者がいながら惹かれあった二人です。いつの日か結ばれる日が来るといいですわね。

「お綺麗です。アリスティア様」

 アンナの声に、鏡の中の女性が顔を上げました。

 銀色の髪を結い上げ、髪に真珠が飾られています。

 真っ白なドレスは、真珠とダイヤモンドが縫い散りばめられ、銀糸の刺繍が明かりの光でキラキラしています。

「ありがとう、アンナ。これからもよろしくね?」

「もちろんです。本当におめでとうございます、アリスティア様」

 アンナに微笑みかけると、アンナは涙ぐみながらも私に祝いの言葉をくれました。

 今日は、わたくしアリスティア・イングリスとジークハルト王太子殿下の結婚式です。

 一年の婚約期間は準備が大変でした。
王太子殿下の結婚となると、衣装やお飾りの準備も手間取ります。

 もちろんそれも、嬉しくて楽しい時間でしたけど。

「アリスティア、いいかしら?」

 お母様がお部屋に入っていらっしゃいました。

 式までは、ジーク様とはお会いできません。
 聖堂の入口でお父様とお会いしてエスコートしていただき、神父様の前でお待ちになるジーク様の元へ向かうのです。

「綺麗よ、私の大切なお姫様。貴女が本当に好きな人と結ばれて嬉しいわ。幸せになってちょうだい」

「ありがとうございます、お母様。わたくし、お父様とお母様の子供に生まれて、本当に幸せですわ」

「ふふっ。私たちも優しい娘がいて幸せよ。王太子妃になっても、いつでも遊びに来てちょうだいね」

「はい。甥っ子か姪っ子が産まれたら、必ずお祝いに参りますわ」

 そうなのです。
あのパーティーの後に結婚されたお兄様とキャスリーン様ですが、もうすぐお子様が生まれるのです。

 わたくし、おばさまになってしまうのですわ。

 なのでお義姉様は現在、親族控室で休んでいただいています。

 出席も無理をなさらないようにとお願いしたのですが、絶対に出るとおっしゃるんですもの。

「アリスティア様。お時間です」

「はい」

 お母様の手を借りて、立ち上がります。

 聖堂の入口ではお父様がお待ちでした。

「お父様」

「アリスティア、幸せになりなさい。何かあれば何でも言うんだよ」

「はい」

 お父様の目が、少し潤んでいる気がするのは気のせいかしら?

 わたくしも涙が出てしまいそう。
駄目ですわ。お化粧が崩れると、アンナに叱られてしまいます。

 扉が開いたその先に・・・

 誰よりも愛しくて大切な方の姿が見えました。



***end***

 これにて本編は完結です。
この後、番外編を数話投稿予定です。
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