115 / 122
本編完結:あなたと紡ぐ未来
しおりを挟む
後でお母様にお聞きしたところ、セオドア王国エリック王太子殿下と、ユリア男爵令嬢様は、シュワルミット王国に連行され、奴隷として働いているそうです。
あの国の奴隷は、奴隷紋という魔法の印を刻まれて、国から出ようとすると、体にものすごい痛みが生じるのだとか。
国が違うと、色々知らないことがあるのですね。
それに、キチンと働かないと食事が支給されないらしく、最初は抵抗していたお二人も、食欲に負けて働いているらしいです。
元王太子殿下は、鉱山での荷物運び。
元男爵令嬢様は、その鉱山での賄い婦だそうです。
一生そこから出ることは叶わないそうですが、それでもキチンと働き、一生懸命償っていれば、その世界の中での自由は得られるのだとか。
例えば奴隷同士の結婚とかですね。
婚約者がいながら惹かれあった二人です。いつの日か結ばれる日が来るといいですわね。
「お綺麗です。アリスティア様」
アンナの声に、鏡の中の女性が顔を上げました。
銀色の髪を結い上げ、髪に真珠が飾られています。
真っ白なドレスは、真珠とダイヤモンドが縫い散りばめられ、銀糸の刺繍が明かりの光でキラキラしています。
「ありがとう、アンナ。これからもよろしくね?」
「もちろんです。本当におめでとうございます、アリスティア様」
アンナに微笑みかけると、アンナは涙ぐみながらも私に祝いの言葉をくれました。
今日は、わたくしアリスティア・イングリスとジークハルト王太子殿下の結婚式です。
一年の婚約期間は準備が大変でした。
王太子殿下の結婚となると、衣装やお飾りの準備も手間取ります。
もちろんそれも、嬉しくて楽しい時間でしたけど。
「アリスティア、いいかしら?」
お母様がお部屋に入っていらっしゃいました。
式までは、ジーク様とはお会いできません。
聖堂の入口でお父様とお会いしてエスコートしていただき、神父様の前でお待ちになるジーク様の元へ向かうのです。
「綺麗よ、私の大切なお姫様。貴女が本当に好きな人と結ばれて嬉しいわ。幸せになってちょうだい」
「ありがとうございます、お母様。わたくし、お父様とお母様の子供に生まれて、本当に幸せですわ」
「ふふっ。私たちも優しい娘がいて幸せよ。王太子妃になっても、いつでも遊びに来てちょうだいね」
「はい。甥っ子か姪っ子が産まれたら、必ずお祝いに参りますわ」
そうなのです。
あのパーティーの後に結婚されたお兄様とキャスリーン様ですが、もうすぐお子様が生まれるのです。
わたくし、おばさまになってしまうのですわ。
なのでお義姉様は現在、親族控室で休んでいただいています。
出席も無理をなさらないようにとお願いしたのですが、絶対に出るとおっしゃるんですもの。
「アリスティア様。お時間です」
「はい」
お母様の手を借りて、立ち上がります。
聖堂の入口ではお父様がお待ちでした。
「お父様」
「アリスティア、幸せになりなさい。何かあれば何でも言うんだよ」
「はい」
お父様の目が、少し潤んでいる気がするのは気のせいかしら?
わたくしも涙が出てしまいそう。
駄目ですわ。お化粧が崩れると、アンナに叱られてしまいます。
扉が開いたその先に・・・
誰よりも愛しくて大切な方の姿が見えました。
***end***
これにて本編は完結です。
この後、番外編を数話投稿予定です。
あの国の奴隷は、奴隷紋という魔法の印を刻まれて、国から出ようとすると、体にものすごい痛みが生じるのだとか。
国が違うと、色々知らないことがあるのですね。
それに、キチンと働かないと食事が支給されないらしく、最初は抵抗していたお二人も、食欲に負けて働いているらしいです。
元王太子殿下は、鉱山での荷物運び。
元男爵令嬢様は、その鉱山での賄い婦だそうです。
一生そこから出ることは叶わないそうですが、それでもキチンと働き、一生懸命償っていれば、その世界の中での自由は得られるのだとか。
例えば奴隷同士の結婚とかですね。
婚約者がいながら惹かれあった二人です。いつの日か結ばれる日が来るといいですわね。
「お綺麗です。アリスティア様」
アンナの声に、鏡の中の女性が顔を上げました。
銀色の髪を結い上げ、髪に真珠が飾られています。
真っ白なドレスは、真珠とダイヤモンドが縫い散りばめられ、銀糸の刺繍が明かりの光でキラキラしています。
「ありがとう、アンナ。これからもよろしくね?」
「もちろんです。本当におめでとうございます、アリスティア様」
アンナに微笑みかけると、アンナは涙ぐみながらも私に祝いの言葉をくれました。
今日は、わたくしアリスティア・イングリスとジークハルト王太子殿下の結婚式です。
一年の婚約期間は準備が大変でした。
王太子殿下の結婚となると、衣装やお飾りの準備も手間取ります。
もちろんそれも、嬉しくて楽しい時間でしたけど。
「アリスティア、いいかしら?」
お母様がお部屋に入っていらっしゃいました。
式までは、ジーク様とはお会いできません。
聖堂の入口でお父様とお会いしてエスコートしていただき、神父様の前でお待ちになるジーク様の元へ向かうのです。
「綺麗よ、私の大切なお姫様。貴女が本当に好きな人と結ばれて嬉しいわ。幸せになってちょうだい」
「ありがとうございます、お母様。わたくし、お父様とお母様の子供に生まれて、本当に幸せですわ」
「ふふっ。私たちも優しい娘がいて幸せよ。王太子妃になっても、いつでも遊びに来てちょうだいね」
「はい。甥っ子か姪っ子が産まれたら、必ずお祝いに参りますわ」
そうなのです。
あのパーティーの後に結婚されたお兄様とキャスリーン様ですが、もうすぐお子様が生まれるのです。
わたくし、おばさまになってしまうのですわ。
なのでお義姉様は現在、親族控室で休んでいただいています。
出席も無理をなさらないようにとお願いしたのですが、絶対に出るとおっしゃるんですもの。
「アリスティア様。お時間です」
「はい」
お母様の手を借りて、立ち上がります。
聖堂の入口ではお父様がお待ちでした。
「お父様」
「アリスティア、幸せになりなさい。何かあれば何でも言うんだよ」
「はい」
お父様の目が、少し潤んでいる気がするのは気のせいかしら?
わたくしも涙が出てしまいそう。
駄目ですわ。お化粧が崩れると、アンナに叱られてしまいます。
扉が開いたその先に・・・
誰よりも愛しくて大切な方の姿が見えました。
***end***
これにて本編は完結です。
この後、番外編を数話投稿予定です。
応援ありがとうございます!
26
お気に入りに追加
3,844
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる