深夜ラジオの構成作家である私が選んだ「妻と別れて恋人を選びたい」という相談――差出人は、私の夫でした
「妻は、人の言葉にはいくらでも答えを作れるのに、僕の言葉には返事をしてくれません」
深夜ラジオの人生相談に届いた、その一文を書いたのは私の夫だった。
佐伯真帆、三十三歳。番組の構成作家。他人の気持ちを、その人が使えなかった言葉に直すのが仕事だ。
夫は妻に打ち明ける前に、顔も知らない他人へ「あなたは悪くない」と言わせようとしていた。その番組を妻が作っていることは、忘れたまま。
真帆は三つだけ条件を課して、そのメールを生放送に乗せる。個人情報は明かさない。書かれていない事実は足さない。罵倒だけの投稿は選ばない。
殺到したメールから三通を選び、パーソナリティーへ渡す最後の一行を書いた。
「あなたが欲しいのは助言ではなく、許可です」
「あなたには恋人を選ぶ自由があります。けれど奥様にも、あなたを許さず、あなたのいない人生を選ぶ自由があります」
放送は終わった。けれど、妻からの回答はまだ残っている。
これは、十年間ずっと他人の言葉を整えてきた女が、自分の気持ちを初めて自分で書き、自分の声で話すまでの物語。
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7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。