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12.諦めろ!
しおりを挟む確かに、俺と俺の恩人であるロフズテルに全ての罪を着せて切り捨てた王は憎んでいる。
しかし、破壊の魔法については理解がない。その名前と、まだ魔法学が広まっていないうちに争いの道具とされたせいで、すこぶるイメージは悪いが、次々新しい魔法が生み出される中、破壊の魔法が争いに使われることはほとんどなくなった。
たとえば破壊の魔法で魔物を倒そうと思ったら、それは世界一の魔力を持っていてもかなり苦しい戦いになる。何しろ、破壊の魔法では、破壊できる範囲が魔力量に依存する上に、膨大な魔力を持ってしてもごく小さな範囲しか破壊できない。よほど正確に相手の急所だけを狙える力がない限り、それで敵を倒すことはかなり難しい。その上、魔物のように魔力だけで動くものに対しては、ほとんど効果がない。そんなものを使うより、火炎や氷の、破壊規模の広い魔法でも覚えた方がよほど効率的だ。
それでも王が破壊の魔法の研究を続けたのは、魔力を蓄えた岩の庭園を掘り起こすためだった。ここから少し離れた森を抜けると、いくつもの岩山が連なる場所がある。そこには、魔力を蓄えた草木が咲き誇り、それから滲み出た魔力が次第にそこにある土や石と同化して、莫大な魔力が溜まっているらしい。しかしそこは、切り立った岩山に囲まれ、しかもその岩山は、その周囲にいる魔物の魔力を取り込んでいるため、破壊が難しく、魔力が溜まっているところまで辿り着いたものは誰もいない。破壊の魔法はその岩を壊すにはぴったりの魔法で、王はそれを掘り起こしたかったのだ。
しかし、岩の庭園の魔力が恐ろしく膨大なものだと分かってくると、貴族たちの間で、王は破壊の魔法を兵器として使い、独裁を企んでいると噂になった。貴族たちは庭園の魔力を王が独り占めすることを避けたかったのだろう。
議会でその問題が持ち上げられると、それまで、庭園の発掘と破壊の魔法の研究に協力的だった貴族たちまでもが、掌を返したように王の敵に回った。
貴族たちはこぞって王を裏切ったのだ。破壊の魔法を使い、魔物たちを呼び起こす気だと吹聴され、どう責任を取るつもりだと迫られた王は、俺たちを切り捨てて、自分だけ逃げた。
腹は立つ。憎んでもいる。復讐もする。だが、一方で王の立場もわかる。
だからこそ、俺はあの王がいなくなっては困るのだ。少なくとも、王が魔法の国と繋いだ人脈と、魔法の取引のノウハウを次代に引き継いでもらうまでは、勝手に代替わりなどされては困る!
「言っておくが、破壊の魔法は、極めたところで王など殺せないぞ!」
「そんなことはありません! 破壊の魔法で、僕は父上と兄上を……」
「黙れ! そんなに殺したいなら暗殺術でも身につけろ!! いや、身につけられても困るが……とにかく、暗殺は諦めるんだ!!」
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