巫女姫はかく語る

まだこの世界に神が沢山いた頃。

『我が君』『我らが君』

 そう、守護神と定めた神を呼び慕い、時に神の求めに応じて神の花嫁を出す国があった。
 テュティは王の娘にして、数えで六つの時、此度の神の花嫁に選ばれた。

 けれど、テュティが数えで十七を迎えようとするある時、婚姻は破棄された。
 突如起こった轟音と閃光によって、テュティの嫁ぐ『我が君』『我らが君』はおろか、今まであった凡その神の気配がすべて消えてしまった。

 神が去った後。
 残されたのは、なにがしかがあったと思わしき、変わり果てた大地と、今まで盲目に神に縋っていた人々。
 残虐なテュティの実の兄は、この機に己を神と立てる計画をまことしやか、父王に吹き込む。
 
 新たな神となる為には、前の神から花嫁を奪う必要がある。

 実の兄妹での契りは絶対の禁忌。神はもういない。

 そんな中で、テュティはある決断をする。
 これは、神に棄てられた巫女姫の決断と、確かな恋の物語。
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