酒の流れる川で君を待つ
都心から少し離れた川沿いの街。夜になると川面に提灯の明かりが揺れ、小さな飲食店がぎゅっと並ぶ一角は、いつしか人々から「酒の流れる川」と呼ばれるようになった。その一番はじっこに、本棚とカウンターがつながった小さな店「川べり文庫」がある。
数字に追われる会社員生活で心身をすり減らし、静かに退職した奏斗は、この店で店長代行として働き始める。そこへやって来たのは、大手チェーンに疑問を抱いて飛び出してきた元パティシエの璃音。料理バカな料理人・絵斗、店と常連を守ろうとするホールリーダーの花春、面倒ごとから逃げがちなアルバイトの凱理、元アスリートで店じゅうを走り回る阿紗美――癖の強い仲間たちと、川沿いに集うお客さんが、夜ごとにささやかな騒動を起こしていく。
クレーム対応に失敗しかけたり、予約が雪崩れ込む金曜の夜を乗り切ったり、うっかり口を滑らせた一言からスタッフ同士がぎくしゃくしたり。それでも、誰かの一皿や一杯の向こうには、その日をなんとか生き延びてきた物語がある。璃音が考案した限定メニュー「君に恋する確率」をきっかけに、仕事への迷い、家族への想い、まだ名前のついていない好意が、少しずつ形を帯びていく。
やがて商店街の再開発計画が持ち上がり、「川べり文庫」は店を手放すかもしれない岐路に立たされる。守りたいものと諦めざるをえないもの、明日もこのカウンターに立つ理由。自分の居場所を探して集まってきたスタッフたちは、それぞれの選択と向き合うことになる。
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