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僕の名前は

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 「僕の名前はジェット.ブラックだよ」
  
 「……」
 
 聞いたことがある。この国で一番の資産家はブラック家だと。昔、伯爵様たちが話していた。

 「クローバー。君のご両親はあと数ヶ月後に着く予定だ」
  
 私は少しキョトンとした顔になった。私はてっきりもう両親がここに着いているのだと思っていたから。だから驚いてしまった。

 「あ、あれ?思ってたのと違う反応だ」

 少し困り顔で私を見つめてくる。

 「……」

 やっぱり声が出ない。なんでだろう⁇安心して気が抜けたせい?ううん。違う。普通に考えてそれはありえない。

 数日前の夜

 「すぅーすぅー」

 「よかった。よく寝ている」

 ジェットがクローバーに手を伸ばしかけた時に扉を叩く音が聞こえた。

 「誰だ?」

 ジェットは少し低い声で言う。

 「公爵様。お医者様がお見えです」

 執事がそう答える。

 「わかった」

 本当はこの部屋に誰にも入って来て欲しくはない。だけど、クローバーのことを思うとそれは不可能。自分の身勝手な感情で彼女の傷の手当てを遅らせるのは得策じゃない。

 「失礼します」

 そう医者は少し怯えながら入り、クローバーの傷の手当てと容体を見た。

 「こ、これは……」

 医者は何かを言いかけて口をつぐむ。

 「なんだ?早く言え」

 少し圧をかけながらジェットは医者を睨みつける。

 「そ、その……少し言いづらいのですが、お嬢様の体に奴隷の紋様があります。おそらくは攫われた当時につけられたものでしょう。それと精神的なショックが大きくて声も出せなくなっていると思います」

 そう医者は言った。

 ジェットは怒りを隠しきれなかった。

 なぜなら自分がもっと早く来ていればよかった。こんなにもクローバーを追い詰めたあいつらを許すことはできないだろう。それに自分に対する怒りが大きく膨れ上がる。

 「殺す!!!!!!!」

 ドラゴンは強く怒りを覚えると竜化が進む。だから普段は感情を表に出さないようにしている。

 「こ、公爵様⁉︎落ち着いてください。今ここで龍化をしたらお嬢様まで危険になりますよ!」

 主人に対して怯みもせずに執事がそう言った。

 ジェットはなんとか怒りを抑え込み、医者の話の続きを聞いた。

 まず、クローバーは過去に両足を折られて歩くのが困難なことや体に無数のあざや傷などあり酷い有様だ。それに加えて栄養失調であるため成長が一時的に止まっていることも聞いた。

 ジェットは思った。こんなにした伯爵を許さない。必ず潰すと誓った。クローバーのためにそして、自分のためにも伯爵には目の前から消えてもらう必要があったからだ。

 「クローバー。助けに来るのが遅くなってごめんなぁ?もっと早く君を助けられればこんなことにはならなかった」

 どんなに悔やんでも過去は変わらない。だからせめてこの先の君の未来は明るい方へと導きたい。

 そして願わくはクローバーと夫婦になりたい。そう思ってしまうほどに君に惚れている。

 「自然を思い出させる君の綺麗な黄緑色の髪の毛とまるでそこにエメラルドがあるかのように美しい緑色の瞳。僕はもう君を離さないよ」

 九年前君が助けてくれたから君に恋をしたんだ。こんな気持ちは初めてだ。

 だからこそ他の男などに君を触れさせたくなんてなかった。汚い部分は全て排除してあげるからね。

 漆黒のドラゴンこと、ジェットはかなりの嫉妬深い人だと知ったのはまだ先のお話。
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