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 そうして私はひたすら歩き続けた。

 馬車に乗れば私の居場所は簡単につかめてしまうことを考え歩き、止まれば同じことな為、野宿をしている。

 初めは、何から何まで人にやってきてもらった生活しかしてこなかったため何も分からなかったが、何日かすればようやく慣れることができた。

 隣の街に差し掛かる頃、街が何やら騒ぎ始めていた。

 何か嫌な予感がした私は、その街に入らずに、小さな小道へと逸れた。

 その小道は長い長い道になり、何かに導かれるように私は歩いて行った。

 ようやく道を抜け出すと、目の前に小さな小川が流れていた。

 喉を潤そうと近づいて両手で掬い、水を飲んだ。

 乾いた喉を潤すと自然と余裕が生まれた。

 あたりを見回すと少し向こうに、なんとボロではあるが小さな小屋があった。

 本当に小さかったが寝泊まりするにはちょうどよかった。

 中に入ると、埃だらけだが、木の板で横になれるスペースもある。

 私は疲れた体をその板に預けて目を閉じた。

 どれくらい寝ていたのだろうか、目が覚めれば、あたりは暗くなっていた。

 ぐっすり眠ったおかげで、元気を取り戻していた。

 しかし小屋は真っ暗なままだった。

 私は、荷物からマッチを取り出した、マッチの明かりを頼りに身の回りのものを探すと、使いかけの蝋燭を見つけた。

 そこに明かりを灯して、部屋を明るくする。

 ここで生活するのも悪くないわ。

 そう思った私は、ここでの生活を考えた。

 とは言っても今はまだ真っ暗な夜、何かするにしても何もできない。

 私は蝋燭の火を消して、再び目を閉じた。

 とは言ってもぐっすり眠ってしまった為、全く眠くなかった。

 そうしているうち、ハリアの事が気になった。

 あれから屋敷を出て何日目になるだろうか、黙って出てきたので、必ず迷惑をかけているだろう。

 彼には、申し訳ないがその代わりハーブ嬢に手紙を送ったから心配ないと思う。

 ハーブ嬢には、これからハリアを支えてほしい事づけている為彼とうまくやっていくだろう。

 そう自分に言い聞かせながらも、ハリアとハーブ嬢が仲睦まじい姿を考えると嫌な感情が流れてくる。

 何考えてるのか…。

 私は頭を振って雑念を払った。

 次の日、小屋のゴミを払い、食べ物を買いに街へと出かけた。

 頻繁に出歩いては、バレてしまうと思い街に馴染めるローブと、たくさんの食材を買って、急いで小屋へ帰った。

 そうして何ヶ月すぎただろうか、小屋での生活は安定してきていた。

 昔煌びやかなドレスに貴族の決め事に縛られて生きていたが今では、少しずつ身の回りの事ができるようになってきた
 。

 少しずつだが、心地いい生活を迎えている。

 しかし昼間はいいが、夜になればハリアが恋しくなり、薄い布団を抱きしめていた。
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