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第1章 新しいバイトが………

030★怪我が治癒していることはナイショ

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 和輝からの促しに、桜も頷く。

 「あぁ…そうだな
  和輝には、本当に
  世話をかけたな……」

 そう和輝に言って、桜は座り込んでいたベッドからサッと降りる。

 「それでは、台所に行くとするか
  よっ…とぉぉぉ…うわっ…っと」

 診療室の床に降り立った桜は、すぐにクラリとする。
 桜の様子をつぶさに観察していた和輝は、すかさず桜を抱き上げる。

 「やっぱり…まだまだ……
  本調子じゃなさそうだな
  まぁーしゃーねーか

  あれだけの怪我を、全部1度に
  治癒させたんだから」

 再び和輝の腕に抱き抱えられた桜は、小さな声で礼を言う。

 「……その…すまない…助かった
  ありがとう…和輝…」

 桜からの素直な礼に、和輝は優しく答える。

 「あぁ…気にするな…
  手足の怪我を、1度に全部
  治癒させたからな

  生体エネルギーの消耗が
  激しいんだろう

  それに、あんな怪我のあとに
  ホテホテとそこらへんを
  平然と歩かれると………

  優奈や真奈も、不審がるだろう
  からな

  俺だって、自分の身体の傷を
  有る程度《意志力》で治癒
  させるコトが出来るってコトは

  優奈や真奈に教えてないしな
  あいつらに、コレを教える
  には、まだ早いしな」

 そう言いながら、和輝は桜を片腕に軽々と抱いて、診察室をでる。

 「そうなのか?」

 「ああ…まだ、優奈も真奈も
  成長途中で、肉体的にも
  精神的にも、育ちきって
  いないからな

  教えても無駄だろう
  女の子はデリケートだしな

  それに、こういうのは
  向き不向きもあるしな

  つーことで、桜
  お迎えが来るまで、あまり
  動けないフリしてろよ」

 「うん、理解(わか)った」

 桜は、和輝の首に縋りながら頷いた。
 内心では、自分の正体が、和輝に怪しまれなかったコトにホッとしながら………。

 良かった、これで白夜兄ぃ様や
 紅夜に迷惑をかけなくてすむ

 私の失態で、現在一族の長となった
 白夜兄ぃ様の足を引っ張り、窮地に
 追い込まずにすんでよかった

 これも、和輝が特殊な古武術を
 習っていたお陰だな
 私の口付け行為などを
 特異体質ゆえと誤認してくれた

 現在の私は、非常に運が良い
 という状態にあるらしい

 あとは、これで和輝を〈レイ〉と
 〈サラ〉のペットシッターとして
 雇えればなお安全なのだけど……

 さて、どう言って、和輝を
 雇えば良いのだろう?

 自分の腕の中で、桜がそんなコトを悩んでいるとは露知らず、和輝はスタスタと台所へ向かい、そのドアを開いた。
 そして、台所で待っているはずの2人に声をかける………が。

 「優奈、真奈、待たせたな
  ぅん?……あれ?居ない?」

 台所には、双子の優奈と真奈の姿は無かった。

 えっ? 居ない? ってコトは
 あの2頭のボルゾイのところだな

 「えっとぉ…指定した、ここに
  2人が居ないってコトは……
  はぁ~…あいつら…

  俺が一緒に居ない時には…
  ボルゾイに…不用意に…
  近付くなって言っておいたのに
  まったく………」

 そう言いながら、和輝は桜を腕に抱いたままで、台所の隣室にある待合室のドアをガチャッと開ける。










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