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ガブリエルの剣

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 レオンとガブリエルは、冒険者の証しである冒険者証を受け取った。これでレオンとガブリエルは冒険者になれるのだ。レオンたちは、研修生として最後の夜を過ごしていた。

 食堂のおばちゃんたちは、最後だからといって、ごちそうをたくさん作ってくれた。おばちゃんたちは、アルスを孫のように可愛がってくれていたので、別れが辛そうだった。

 レオンももうすぐ友達のガブリエルと別れなければいけないのだ。その事が寂しくて仕方なかった。ガブリエルは、いつもと変わらずレオンとアルスの部屋に来て話しをしていた。

 ガブリエルは翌朝、早々研修所を去る事にしている。だからゆっくり会話をするのはこの時が最後になるのだ。

 レオンは悲しい表情にならないように、つとめて明るく振る舞った。ガブリエルは穏やかな表情でレオンとアルスを見て言った。

「レオン、アルス、ありがとう。お前たちのおかげで俺は冒険者になれた」
「こちらこそ、ありがとう。僕らこそガブに沢山助けられたよ」

 レオンが心からの感謝を言うと、となりにいたアルスがふんぞりかえって言った。

「そうじゃ、オレ様はレオンとガブの世話をしてやったのじゃ。それにガブはオレ様のファンじゃからな。神のわざを見せてしんぜよう」

 アルスはレオンに果物を作るように言った。どうやらアルスはガブリエルに神の姿を見せるつもりらしい。

 レオンは仕方なく外に出ていちごを作り、アルスに手渡した。アルスは美味しそうにいちごを食べ終えると、神である青年の姿になった。ガブリエルは驚いてアルスを見上げて言った。

「お前は、本当にアルスなのか?」
「いかにも。どうじゃ、神々しいであろう」
「本当に?おねしょしてレオンに怒られて泣いていたアルスなのか?」
「・・・。ガブ、そういう事は思っても言うでないぞ。まぁ、それはおいておいて、ガブに剣を授けよう」

 アルスの手が光ると、彼の手には細身の剣が握られていた。ガブリエルは、アルスから剣を恐々と受け取り、ゆっくりとサヤから引き抜いた。ガブリエルはため息をつきながら言った。

「なんて、素晴らしい剣なんだ」
「見た目だけではないぞ?この剣は魔力をひめておる。きっとガブを守ってくれるだろう」

 アルスは偉そうに言った。神だから偉いのは間違いないのだが。レオンはガブリエルの剣がうらやましくなって、自分もアルスにねだった。

「いいな、ガブ。ねぇ、アル。僕にも剣を作って?」
「うーん。ぶっちゃけて言うとだな、レオンに剣技の才能は無い。お前が剣を振り回すと、オレ様が危ないからの。レオンはこれを持っておけ」

 アルスがギュッとこぶしを握ると、手のひらに金属の筒が出現した。レオンは手のひらにおかれた筒を見て首をかしげて言った。

「アル、これなに?」
「これは金属の筒じゃ。中に土が詰めてある」

 レオンが筒の中をのぞくと、確かに土が詰めてあった。アルスはレオンが確認したのを見てから言った。

「レオンには、植物魔法で使える武器が良い。レオン、筒に植物ツタ魔法をかけてみろ?」

 レオンはアルスに言われた通り、筒にツタ魔法をかけた。すると、筒の先端から、ツタが伸びて、まるでムチのようになった。レオンは驚いて叫んだ。

「わぁ。ムチみたい!」
「そうじゃ。レオンはそれを武器にしろ」
「うん、ありがとう。だけどやっぱりガブみたいな剣がいいなぁ」
「それはこれからも剣術の鍛錬を続け、オレ様が剣技を認めてからじゃ」
「はい」
「うむ。よろしい」

 いつもと立場が逆のレオンとアルスを見て、ガブリエルは楽しそうに笑った。
 

 
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