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第27章 冬はイベント盛り沢山!?
勝負の行方
しおりを挟む次の日の夜、俺たち家族は鍛錬場に来ていた。アミィール様に誘われたのだ。『エンダーとレイの勝負を見に行こう』と。2年前から気にかけていたから、もちろん喜んできた。………のだが。
「ふっ!」
「くぅっ!」
エンダーは軽々と大きなトゲトゲの鉄球のモーニングスターを振り回している。レイは辛うじてそれを躱すが、直ぐに闇魔法がレイの体目掛けて飛んでくる。レイの防戦一方だ。
レイは強い。俺は勝ったことがない。………けれど、当然な気もする。アミィール様の侍女だ。弱いわけがない。改めて、そんな相手に勝負を申し込めるなと感心する。やはりレイは凄い。
「れー!ふんばれー!おまえのあいはそんなものかー!」
「アド、暴れないでくださいまし」
アドラオテルは声を張り上げてレイを激励している。なんだかんだ、優しい子である。自分もエンダーが好きなのに応援できるのだから………強い子だ。
セオドアはそこまで考えて、アドラオテルを撫でる。
「アド、応援してやってくれな」
「あたりまえだよ!はなしかけないでぱぱ!
おーい!まけるなー!」
「わたくしもおうえんしますわ!がんばってー!」
セラフィールも、アドラオテルの隣に立って声を枯らして応援している。………レイは俺の大切な友達だ。だから、こういうのは嬉しかった。
「セオ様、わたくしたちも応援致しましょう」
「そうだな。…………レイ!頑張れ!」
「頑張ってくださいましー!」
親子はみんなで声を出した。
* * *
____わたくしの応援は無しでございますか。
エンダーはモーニングスターを振り回しながら、考える。いくら投げても、いくら攻撃しても…………レイはしつこく責めてくる。
諦めればいいのに、私のことなんて。
人外で、侍女で、………アミィール様の言葉を借りれば『穢れている』。
そんな私を好きだなんて、笑える。
でも、もっと笑えるのは____
そこまで考えて、きぃん!と鉄が擦れる音がした。モーニングスターが飛んでいく。レイが距離を詰めてきた。
エンダーはすぐさま魔法を唱えようと構えた時____レイに押し倒された。そして。
剣先が___目の前に、向けられた。
銀色の剣、金色の逆立った短髪、茶瞳……………必死な、熱の篭った顔。
そう。
私は____人外で、沢山の男を嬲ってきたのに、今更、この男に心を奪われている。
友の、主人ことばかり考えて動いている忠臣。軽いノリは人の心を容易に掴み、誰かのために犠牲になれる男。
____この男を、好きになってしまった私は、勝負などしなくても、負けていた。
悔しくて、認めたくなくて、ムカついて。ボコボコにしてやってるのに向かってくるのが嬉しくて…………さらに好きになって。
私の主人が色ボケしたせいでしょう。私は悪くない。私が感化されたのは私が責任ではない。
けれど。
「____エンダー、勝ったよ、俺は」
「____お見事です、レイ様」
「____嘘じゃ、ないんだよな?」
「____嘘でしたら私はあなたを見上げてませんわ」
「……………改めて言わせてくれ、エンダー」
レイはそう言って剣を下ろした。そして、ポケットから小さな箱を出して、開いた。
ピンク色の石のついた指輪。月に照らされている金髪が揺れる。
「____俺と、付き合ってくれ」
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