40 / 53
本編
40 アリーヤ
しおりを挟む
両親と妹と、ささやかな幸せに包まれて暮らしていたある日、それは突然に壊される事になった。
山奥にあった村が奴隷狩りに狙われ、怒号や悲鳴がそこら中に響き渡る中、妹の手を引いて逃げるだけで精一杯だった。
はぐれた両親を探す途中、気付かずに獣の縄張りに入ってしまって、唸り声をあげながら目の前に現れた大型の狼は、真っ先に妹に襲いかかっていた。
イリーナの悲鳴を聞き、無我夢中で木の枝を獣の目に突き刺し、それがたまたま致命傷を与えることができたのは一つ目の幸運だった。
狼は、そのまま地面に倒れてピクピクと痙攣し、動かなくなっていた。
一つの危機は去ったけど、イリーナに呼びかけても、胸を真っ赤に染め、目を閉じて返事をしてくれない。
蒼白の顔が、不安と恐怖を煽る。
誰か助けてと叫び、人を呼びに行く途中で偶然にその子を見つけたのは二つ目の幸運だった。
お花を摘むためにしゃがんでいたその子は、イリーナと同じ、2~3歳くらいの小さな女の子で、私達を救う事ができる特別な魔法を持っていた。
それに気付いた私は、良いとか悪いとかを考える間も無く縋るようにその子の肩に触れていた。
「?」
触れられた女の子は不思議そうに私を見上げてきて、でも説明する時間も惜しくてすぐにイリーナの元に戻った。
思った通り、あの子の持っていた魔法は癒しの魔法で、イリーナの傷は瞬く間に癒えて助けることができた。
その時にすぐにあの女の子の所に戻っていれば良かったのに、イリーナが助かった安堵のためにすっかり頭から抜け落ちてしまっていた。
気持ちが落ち着いた翌朝にあの女の子を探しに行ったけど、結局見つからず、誰かに相談できるはずもなく、成人する年齢になるまでその事を隠して生きていくしかなかった。
幸い、妹となんとか二人で生きていくことはできた。
たまたま近くの村に住んでいた原初の民の老夫婦が、私達を保護してくれたからだ。
質素で目立たない生活を心がけていたけど、18歳になって、借りたままだった魔法を無駄にせずに誰かのためになるように活用しようと思うようになった。
あの女の子の代わりに、それがあの子の為にもなると信じて。
村や村周辺で怪我や病気で困っているがいれば治癒を施し、感謝の言葉を向けられると、それはそのままあの子に向けられているのだと思うようにしていた。
自分の能力ではないのだから驕らず、見返りも求めず、ただただ困っている人の役に立てばと、それだけを思っていた。
そんな風に過ごして三年が経ち、私は運命的な出会いを果たすことになった。
森で怪我を負った彼、バージル王太子と出会えたのだ。
丁寧にお礼を述べる彼の優しさに触れ、彼を助けることができて、私の方が感謝をしたいくらいだった。
出会って数日のうちに、彼から王都へ一緒に帰ろうと言われた。
それが何を意味するのか、気付かないはずがなかった。
躊躇はなかった。
バージルとなら幸せになれると感じていた。
それに、今まで自分は人から借りた力がなければ何もできないと思っていたけど、バージルと王都へ行けば、過酷な環境で不当に使役されている同胞を救えるかもしれない。
それに、何よりも生き別れた両親が見つかるかもしれない。
バージルも協力すると言ってくれた。
そんな思いで王都へ行き、そして、一人の女性の存在を知ることになった。
「聖女様、ありがとうございます」
小さな子を抱く母親から、泣きながらお礼を言われた。
違う、私は聖女なんかじゃない。
いくら神聖魔法を使って、怪我や病を治したところで、食べる物がなければ生きられない。
避難民用の炊き出しはしている。
でも、具のほとんどない薄いスープだけでは、たいして空腹は満たされはしない。
知らなかったでは済まされない。
気付いた時には、彼女は投獄され、処刑された後だった。
いや、最初から彼女の存在に気付かない様にしていたのだ。
私はバージル王太子殿下を本当に愛していた。
王都に来た直後にエルナト様がバージル王太子殿下の婚約者だと知り、殿下を奪われたくないと、彼と結ばれたいと願って、でも、私が奪う立場になりたくないと、彼女の存在から目を逸らし続けていた。
そして、気付いた時には彼女が処刑された後だった。
よりにもよって、私達が結婚したその日に。
そんなつもりじゃなかった。
彼女に死んで欲しいとは、思ってもいなかった。
恐ろしいことに私が聖女だと祭り上げられ、本物の聖女である彼女が失われることになった。
私はただ、人から借りた神聖魔法が使えるだけだ。
どうしてこんな事になってしまったのか。
雨が降り続けている外に視線を向ける。
妹に会いたかった。
イリーナの住んでいた村は、もうすでに土砂と濁流に呑まれてしまっている。
妹の安否は分かっていない。
生きていると信じたい。
結婚式の日にあの子に会えなかったことが、私達の別離を運命付けたのだ。
村に迎えに行かせればよかった。
そうすれば、災害に巻き込まれることなんかなかったはずだ。
「アリーヤ」
彼が部屋に入って来た。
エルナト様の処刑を聞いた日から、バージルの目を見ることができない。
こんなにも恐ろしい人だとは思わなかった。
長年婚約者として接してきた女性を拷問した挙句に処刑して、平然としている。
きっと彼女から見れば私も同罪なのだ。
見て見ぬふりを、知ってて知らぬふりをした私は。
確固たる悪意はなかったとしても、最低な事を私はしてしまったのだから。
その罪を犯してまで欲した、愛した人を、今は拒絶している。
「アリーヤ、私の愛しい人。機嫌はまだ直らないのかい?アースノルト大陸に支援を求めに行くから、君も一緒に来てくれないか?国民のためにも」
国民のため。
もうそれしか私の存在意義は残されていない。
唯一私が償う機会があるとすれば、国民の苦しみを少しでも和らげることだけだ。
だからバージルと船に乗り、荒れる海へと旅立っていた。
アースノルト大陸に近付くにつれて、ある事に気付いた。
多くの精霊達が、アースノルト大陸にいるのだ。
それは以前に一度だけ見た、エルナト様の周りを取り巻いていた精霊達とよく似ていた。
似ているどころか意識して見ると、それは同じ性質を持つ者達だ。
まさか、エルナト様は生きているのでは?
その考えに至るのはごく自然なことだ。
神の御使いである聖女様が、簡単に神に見捨てられるはずがない。
そう言えば、エルナト様が処刑された後の遺体がどうなったかは聞いていない。
精霊の力によって蘇った可能性はあるのだろうか。
私達原初の民が特別な能力を持っているように、聖女様にだって、何か特別な加護が与えられていたのかもしれない。
希望が見えた。
エルナト様を探さなければ。
そして、私の愚かな過ちを懺悔して、エルナト様の地位を今度こそ守らなければ。
それをアースノルト大陸の騎士団長に必死に訴えたのに、相手にもしてもらえなかった。
どう説得すればいいのか途方に暮れてテントの外にでると、そこで信じられない事に、神が与えてくれた奇跡のように、イリーナの姿を見かけた。
嬉しくてすぐに駆け寄ったのに、でも様子がおかしく、確かに原初の民の気配であり、私のイリーナそのものなのに、他人を見る目で私を見て、一人の騎士の背中から離れない。
いくら話しかけても顔を強ばらせるばかりだ。
イリーナの幼なじみのエンリケに止められ、引き離されたけど、何もかもが納得いかなかった。
どうしてアースノルト大陸の人達は、私の話を聞いてくれないのか。
バージルやエンリケにまで説得されて、国に帰るしかなかった。
荒廃した大陸の、閉鎖された王都の中で人々に神聖魔法を使うだけの日々が再び始まった。
私にできることは、滅び行くこの大陸と運命を共にすることだけなのか。
「アリーヤ、悲観することはない。大丈夫だ」
バージルがどうしてここまで楽観視できるのかが不思議だった。
「まもなく聖女ダイアナをここに連れてくる。アリーヤの能力で、ダイアナの聖女としての力を奪えばいい」
私が能力を使って誰かの神聖魔法を借りたことを、バージルには伝えているけど、聖女の能力を奪えるとまでは言ってはいない。
そもそも、そんな事までできるとは思ってはいなかった。
「アリーヤが会わせてもらえるのならば、拐う必要もなかったのだがな。だが、あの野営地で君が騒ぎを起こしてくれたおかげで、影を上手く潜り込ませることができた。影達は君のことを慕っているから、喜んで任務に赴いてくれた。感謝しているよ、私の愛しい君」
ああ私は、本当にどれだけ罪深い存在なのか……
山奥にあった村が奴隷狩りに狙われ、怒号や悲鳴がそこら中に響き渡る中、妹の手を引いて逃げるだけで精一杯だった。
はぐれた両親を探す途中、気付かずに獣の縄張りに入ってしまって、唸り声をあげながら目の前に現れた大型の狼は、真っ先に妹に襲いかかっていた。
イリーナの悲鳴を聞き、無我夢中で木の枝を獣の目に突き刺し、それがたまたま致命傷を与えることができたのは一つ目の幸運だった。
狼は、そのまま地面に倒れてピクピクと痙攣し、動かなくなっていた。
一つの危機は去ったけど、イリーナに呼びかけても、胸を真っ赤に染め、目を閉じて返事をしてくれない。
蒼白の顔が、不安と恐怖を煽る。
誰か助けてと叫び、人を呼びに行く途中で偶然にその子を見つけたのは二つ目の幸運だった。
お花を摘むためにしゃがんでいたその子は、イリーナと同じ、2~3歳くらいの小さな女の子で、私達を救う事ができる特別な魔法を持っていた。
それに気付いた私は、良いとか悪いとかを考える間も無く縋るようにその子の肩に触れていた。
「?」
触れられた女の子は不思議そうに私を見上げてきて、でも説明する時間も惜しくてすぐにイリーナの元に戻った。
思った通り、あの子の持っていた魔法は癒しの魔法で、イリーナの傷は瞬く間に癒えて助けることができた。
その時にすぐにあの女の子の所に戻っていれば良かったのに、イリーナが助かった安堵のためにすっかり頭から抜け落ちてしまっていた。
気持ちが落ち着いた翌朝にあの女の子を探しに行ったけど、結局見つからず、誰かに相談できるはずもなく、成人する年齢になるまでその事を隠して生きていくしかなかった。
幸い、妹となんとか二人で生きていくことはできた。
たまたま近くの村に住んでいた原初の民の老夫婦が、私達を保護してくれたからだ。
質素で目立たない生活を心がけていたけど、18歳になって、借りたままだった魔法を無駄にせずに誰かのためになるように活用しようと思うようになった。
あの女の子の代わりに、それがあの子の為にもなると信じて。
村や村周辺で怪我や病気で困っているがいれば治癒を施し、感謝の言葉を向けられると、それはそのままあの子に向けられているのだと思うようにしていた。
自分の能力ではないのだから驕らず、見返りも求めず、ただただ困っている人の役に立てばと、それだけを思っていた。
そんな風に過ごして三年が経ち、私は運命的な出会いを果たすことになった。
森で怪我を負った彼、バージル王太子と出会えたのだ。
丁寧にお礼を述べる彼の優しさに触れ、彼を助けることができて、私の方が感謝をしたいくらいだった。
出会って数日のうちに、彼から王都へ一緒に帰ろうと言われた。
それが何を意味するのか、気付かないはずがなかった。
躊躇はなかった。
バージルとなら幸せになれると感じていた。
それに、今まで自分は人から借りた力がなければ何もできないと思っていたけど、バージルと王都へ行けば、過酷な環境で不当に使役されている同胞を救えるかもしれない。
それに、何よりも生き別れた両親が見つかるかもしれない。
バージルも協力すると言ってくれた。
そんな思いで王都へ行き、そして、一人の女性の存在を知ることになった。
「聖女様、ありがとうございます」
小さな子を抱く母親から、泣きながらお礼を言われた。
違う、私は聖女なんかじゃない。
いくら神聖魔法を使って、怪我や病を治したところで、食べる物がなければ生きられない。
避難民用の炊き出しはしている。
でも、具のほとんどない薄いスープだけでは、たいして空腹は満たされはしない。
知らなかったでは済まされない。
気付いた時には、彼女は投獄され、処刑された後だった。
いや、最初から彼女の存在に気付かない様にしていたのだ。
私はバージル王太子殿下を本当に愛していた。
王都に来た直後にエルナト様がバージル王太子殿下の婚約者だと知り、殿下を奪われたくないと、彼と結ばれたいと願って、でも、私が奪う立場になりたくないと、彼女の存在から目を逸らし続けていた。
そして、気付いた時には彼女が処刑された後だった。
よりにもよって、私達が結婚したその日に。
そんなつもりじゃなかった。
彼女に死んで欲しいとは、思ってもいなかった。
恐ろしいことに私が聖女だと祭り上げられ、本物の聖女である彼女が失われることになった。
私はただ、人から借りた神聖魔法が使えるだけだ。
どうしてこんな事になってしまったのか。
雨が降り続けている外に視線を向ける。
妹に会いたかった。
イリーナの住んでいた村は、もうすでに土砂と濁流に呑まれてしまっている。
妹の安否は分かっていない。
生きていると信じたい。
結婚式の日にあの子に会えなかったことが、私達の別離を運命付けたのだ。
村に迎えに行かせればよかった。
そうすれば、災害に巻き込まれることなんかなかったはずだ。
「アリーヤ」
彼が部屋に入って来た。
エルナト様の処刑を聞いた日から、バージルの目を見ることができない。
こんなにも恐ろしい人だとは思わなかった。
長年婚約者として接してきた女性を拷問した挙句に処刑して、平然としている。
きっと彼女から見れば私も同罪なのだ。
見て見ぬふりを、知ってて知らぬふりをした私は。
確固たる悪意はなかったとしても、最低な事を私はしてしまったのだから。
その罪を犯してまで欲した、愛した人を、今は拒絶している。
「アリーヤ、私の愛しい人。機嫌はまだ直らないのかい?アースノルト大陸に支援を求めに行くから、君も一緒に来てくれないか?国民のためにも」
国民のため。
もうそれしか私の存在意義は残されていない。
唯一私が償う機会があるとすれば、国民の苦しみを少しでも和らげることだけだ。
だからバージルと船に乗り、荒れる海へと旅立っていた。
アースノルト大陸に近付くにつれて、ある事に気付いた。
多くの精霊達が、アースノルト大陸にいるのだ。
それは以前に一度だけ見た、エルナト様の周りを取り巻いていた精霊達とよく似ていた。
似ているどころか意識して見ると、それは同じ性質を持つ者達だ。
まさか、エルナト様は生きているのでは?
その考えに至るのはごく自然なことだ。
神の御使いである聖女様が、簡単に神に見捨てられるはずがない。
そう言えば、エルナト様が処刑された後の遺体がどうなったかは聞いていない。
精霊の力によって蘇った可能性はあるのだろうか。
私達原初の民が特別な能力を持っているように、聖女様にだって、何か特別な加護が与えられていたのかもしれない。
希望が見えた。
エルナト様を探さなければ。
そして、私の愚かな過ちを懺悔して、エルナト様の地位を今度こそ守らなければ。
それをアースノルト大陸の騎士団長に必死に訴えたのに、相手にもしてもらえなかった。
どう説得すればいいのか途方に暮れてテントの外にでると、そこで信じられない事に、神が与えてくれた奇跡のように、イリーナの姿を見かけた。
嬉しくてすぐに駆け寄ったのに、でも様子がおかしく、確かに原初の民の気配であり、私のイリーナそのものなのに、他人を見る目で私を見て、一人の騎士の背中から離れない。
いくら話しかけても顔を強ばらせるばかりだ。
イリーナの幼なじみのエンリケに止められ、引き離されたけど、何もかもが納得いかなかった。
どうしてアースノルト大陸の人達は、私の話を聞いてくれないのか。
バージルやエンリケにまで説得されて、国に帰るしかなかった。
荒廃した大陸の、閉鎖された王都の中で人々に神聖魔法を使うだけの日々が再び始まった。
私にできることは、滅び行くこの大陸と運命を共にすることだけなのか。
「アリーヤ、悲観することはない。大丈夫だ」
バージルがどうしてここまで楽観視できるのかが不思議だった。
「まもなく聖女ダイアナをここに連れてくる。アリーヤの能力で、ダイアナの聖女としての力を奪えばいい」
私が能力を使って誰かの神聖魔法を借りたことを、バージルには伝えているけど、聖女の能力を奪えるとまでは言ってはいない。
そもそも、そんな事までできるとは思ってはいなかった。
「アリーヤが会わせてもらえるのならば、拐う必要もなかったのだがな。だが、あの野営地で君が騒ぎを起こしてくれたおかげで、影を上手く潜り込ませることができた。影達は君のことを慕っているから、喜んで任務に赴いてくれた。感謝しているよ、私の愛しい君」
ああ私は、本当にどれだけ罪深い存在なのか……
151
あなたにおすすめの小説
美形揃いの王族の中で珍しく不細工なわたしを、王子がその顔で本当に王族なのかと皮肉ってきたと思っていましたが、実は違ったようです。
ふまさ
恋愛
「──お前はその顔で、本当に王族なのか?」
そう問いかけてきたのは、この国の第一王子──サイラスだった。
真剣な顔で問いかけられたセシリーは、固まった。からかいや嫌味などではない、心からの疑問。いくら慣れたこととはいえ、流石のセシリーも、カチンときた。
「…………ぷっ」
姉のカミラが口元を押さえながら、吹き出す。それにつられて、広間にいる者たちは一斉に笑い出した。
当然、サイラスがセシリーを皮肉っていると思ったからだ。
だが、真実は違っていて──。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
婚約破棄をされ、谷に落ちた女は聖獣の血を引く
基本二度寝
恋愛
「不憫に思って平民のお前を召し上げてやったのにな!」
王太子は女を突き飛ばした。
「その恩も忘れて、お前は何をした!」
突き飛ばされた女を、王太子の護衛の男が走り寄り支える。
その姿に王太子は更に苛立った。
「貴様との婚約は破棄する!私に魅了の力を使って城に召し上げさせたこと、私と婚約させたこと、貴様の好き勝手になどさせるか!」
「ソル…?」
「平民がっ馴れ馴れしく私の愛称を呼ぶなっ!」
王太子の怒声にはらはらと女は涙をこぼした。
聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。
ゴースト聖女は今日までです〜お父様お義母さま、そして偽聖女の妹様、さようなら。私は魔神の妻になります〜
嘉神かろ
恋愛
魔神を封じる一族の娘として幸せに暮していたアリシアの生活は、母が死に、継母が妹を産んだことで一変する。
妹は聖女と呼ばれ、もてはやされる一方で、アリシアは周囲に気付かれないよう、妹の影となって魔神の眷属を屠りつづける。
これから先も続くと思われたこの、妹に功績を譲る生活は、魔神の封印を補強する封魔の神儀をきっかけに思いもよらなかった方へ動き出す。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2025年10月25日、外編全17話投稿済み。第二部準備中です。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる