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第二章 もう絶対に離しませんからね、先輩!
凍牙VS吉良榎葉
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時は少し遡る。
「ぐうっ!?」
「ぎゃっ!?」
凍牙と榎葉は漢野に穴に突き飛ばされ下の階に落ちた。不意を突かれたので二人とも受け身に失敗し身体を打ってしまう。
「……っ! 体が痛い……なんて言っている場合ではありませんね。悪いですが倒させてもらいますよ」
「え~マジかよ~。それはさせねーよ坊ちゃん。こちとら立場的に色々とめんどい事になるんでね……」
二人はそう言いながらも立ち上がり、臨戦態勢を取る。
「私はとっとと休みたいんだよ~。“魚雷”」
先手を打ったのは榎葉。
榎葉の手からタケノコ程度の大きさの赤い魚雷が何本も発射される。
その高速の赤い流星を凍牙の氷壁が遮った。
「なんて安直なネーミング……もっとマシなの無かったんですか! “フリーズバレット”!」
「うっせえな~。名前付けんのめんどくさかったんだよ~。“魚雷”」
凍牙が突っ込みながらも幾多もの氷弾を放つ。
榎葉は魚雷を撃って氷弾を相殺しようと試みる。
しかし凍牙の精密性に敵う筈もなく、榎葉は氷弾の餌食となった。
「ぐえっ!」
「甘い!」
氷弾の威力によって榎葉は床に転がされた。
凍牙はそれを見て更に攻撃を仕掛けようとする。
「畳み掛けますよ! はあっ!」
「……ほい」
「がはっ!」
「……肉を斬らせて骨を斬る!」
凍牙は突然背後から現れた魚雷によって背中に激しい衝撃を受けた。
「ぐっ……さっきあらかじめ魚雷を潜ませていたのか……!」
「避けられないのは分かってたからな……さて、これでアタシに勝てないのは察しただろ? めんどいからもうさっさとあきらめな。アタシだってこれ以上動きたかねーんだよ」
「……本当に面倒臭いのはこれからですよ。大事な事なのでもう一度言います。本当に面倒臭いのはこれからですよ!」
「……!? 何だ!? 冷たい!?」
そう言ってニヤリと笑う凍牙。
ようやく異変に気付いた榎葉は慌てて体勢を立て直す。
だがもう時既に遅し。
凍牙の張った透明な氷は、フロア全体の床を覆いつくしていた。
「うおっ!?」
氷に足を取られて尻餅をつく榎葉。
凍牙は体中の痺れに耐えながら立ち上がり、足に刃を出現させ、軽やかに滑り出した。
「さあ一緒に滑りましょう。楽しいですよ!」
「楽しいのはてめーだけだろが! 死ね!」
榎葉は氷の上の凍牙に向けて魚雷を何個も射出した。
キンッ!
魚雷はガラスが割れるような音が響いた後空中で制止し地面にゴトリと落ちた。
「くそっ! 凍らせたか……! ていうかもう速すぎて動きが見えねー!」
凍牙の動きは速度が増し続けもはや目に追えない速さになっていた。
「ふふ――どうで――凄―――で――う―」
「いや何言ってるか全然分かんねえよ!」
「こ――私――スケ―――技――」
「まあ何を言ってようがどうでもいい。死ね“魚雷”!」
榎葉は滑り続ける凍牙に魚雷を五月雨のように乱れ撃ちした。それと同時に凍牙もまた夥しい数の氷弾の弾幕を展開する。
魚雷と氷弾が交差し激しい爆発と眩い光を放ち、さながらどこかの戦場のような光景を作り出す。
「があっ!」
「ぎゃあっ!」
その結果は相打ちだった。
凍牙は魚雷に吹き飛ばされ、榎葉は氷弾に弾き飛ばされた。
魚雷の煙と氷弾の破片が空中に舞う。
「はあーっ、たく本当にめんどくせー奴だな……てか煙で何も見えねえ――」
「そこだっ!」
「ぬあっ!?」
凍牙の声が榎葉の耳に聞こえたその次の瞬間、彼女の体の首から下が氷漬けになった。
「な、何だ!? 動けねえ……」
「油断しましたね……」
「……これが狙いだったのか……! ……でもどうやって見えない筈のアタシの位置を……!」
煙と氷の破片の中から凍牙が現れる。
榎葉は驚愕の表情で彼を見る。
すると凍牙は驚くのも無理もないといった様子で口を開いた。
「ふふ、何故私がこの煙の中でもあなたの居場所が分かったのか教えて差し上げましょう。私の“フリーズバレット”は出現させた氷に触れている者の居場所も感知出来るんです。ただ、仕組みとしては触感とは違って、その対象の重みや振動を氷越しで感知して居場所を演算しているんですよ」
「……そうかい。んなこたどうでもいいけどね」
「せっかく説明したのに……」
榎葉の冷めた反応に落胆する凍牙。
そんな凍牙の若干傷付いた心を完全に無視して榎葉が言う。
「あー負けちまった。……でも待てよ。体めっちゃ冷たいけどこれ言い訳にすれば明日会社休めるんじゃね? ありがとよ坊ちゃん」
「……は、はあ……どうも」
突然敵であるはずの人間から礼を言われて困惑する凍牙。
そして榎葉は更にこう続ける。
「あとあんたのその小手先使う戦い方見てると私の元カレ思い出すわ。もしかして知り合い? サングラス掛けて年中甚兵衛着てる変な奴だったけど……ま、どうでもいいや」
「……なっ!?」
「お? まさかのビンゴ? 世間は狭いなあ~」
凍牙は榎葉にそう言われて最近耕一郎が彼女と別れたと悲しんでいた事を思い出した。
流石にその彼女がまさか今の今まで戦っていた相手だとは思いも寄らなかった。
凍牙は衝撃を受けつつも榎葉に言った。
「……私としては耕一郎さんと縒りを戻して下さると嬉しいです」
「へっ、やだね。それより私の事なんかほっといてさっさと行きな。クソオヤ……社長強いからあのお仲間のヤンキー負けちまうぞ」
「ふふ……それはどうでしょうね。じゃ、行きますね」
「おう、頑張れよ~」
そうして凍牙は何故か敵に応援されながらも上へと向かったのであった。
「ぐうっ!?」
「ぎゃっ!?」
凍牙と榎葉は漢野に穴に突き飛ばされ下の階に落ちた。不意を突かれたので二人とも受け身に失敗し身体を打ってしまう。
「……っ! 体が痛い……なんて言っている場合ではありませんね。悪いですが倒させてもらいますよ」
「え~マジかよ~。それはさせねーよ坊ちゃん。こちとら立場的に色々とめんどい事になるんでね……」
二人はそう言いながらも立ち上がり、臨戦態勢を取る。
「私はとっとと休みたいんだよ~。“魚雷”」
先手を打ったのは榎葉。
榎葉の手からタケノコ程度の大きさの赤い魚雷が何本も発射される。
その高速の赤い流星を凍牙の氷壁が遮った。
「なんて安直なネーミング……もっとマシなの無かったんですか! “フリーズバレット”!」
「うっせえな~。名前付けんのめんどくさかったんだよ~。“魚雷”」
凍牙が突っ込みながらも幾多もの氷弾を放つ。
榎葉は魚雷を撃って氷弾を相殺しようと試みる。
しかし凍牙の精密性に敵う筈もなく、榎葉は氷弾の餌食となった。
「ぐえっ!」
「甘い!」
氷弾の威力によって榎葉は床に転がされた。
凍牙はそれを見て更に攻撃を仕掛けようとする。
「畳み掛けますよ! はあっ!」
「……ほい」
「がはっ!」
「……肉を斬らせて骨を斬る!」
凍牙は突然背後から現れた魚雷によって背中に激しい衝撃を受けた。
「ぐっ……さっきあらかじめ魚雷を潜ませていたのか……!」
「避けられないのは分かってたからな……さて、これでアタシに勝てないのは察しただろ? めんどいからもうさっさとあきらめな。アタシだってこれ以上動きたかねーんだよ」
「……本当に面倒臭いのはこれからですよ。大事な事なのでもう一度言います。本当に面倒臭いのはこれからですよ!」
「……!? 何だ!? 冷たい!?」
そう言ってニヤリと笑う凍牙。
ようやく異変に気付いた榎葉は慌てて体勢を立て直す。
だがもう時既に遅し。
凍牙の張った透明な氷は、フロア全体の床を覆いつくしていた。
「うおっ!?」
氷に足を取られて尻餅をつく榎葉。
凍牙は体中の痺れに耐えながら立ち上がり、足に刃を出現させ、軽やかに滑り出した。
「さあ一緒に滑りましょう。楽しいですよ!」
「楽しいのはてめーだけだろが! 死ね!」
榎葉は氷の上の凍牙に向けて魚雷を何個も射出した。
キンッ!
魚雷はガラスが割れるような音が響いた後空中で制止し地面にゴトリと落ちた。
「くそっ! 凍らせたか……! ていうかもう速すぎて動きが見えねー!」
凍牙の動きは速度が増し続けもはや目に追えない速さになっていた。
「ふふ――どうで――凄―――で――う―」
「いや何言ってるか全然分かんねえよ!」
「こ――私――スケ―――技――」
「まあ何を言ってようがどうでもいい。死ね“魚雷”!」
榎葉は滑り続ける凍牙に魚雷を五月雨のように乱れ撃ちした。それと同時に凍牙もまた夥しい数の氷弾の弾幕を展開する。
魚雷と氷弾が交差し激しい爆発と眩い光を放ち、さながらどこかの戦場のような光景を作り出す。
「があっ!」
「ぎゃあっ!」
その結果は相打ちだった。
凍牙は魚雷に吹き飛ばされ、榎葉は氷弾に弾き飛ばされた。
魚雷の煙と氷弾の破片が空中に舞う。
「はあーっ、たく本当にめんどくせー奴だな……てか煙で何も見えねえ――」
「そこだっ!」
「ぬあっ!?」
凍牙の声が榎葉の耳に聞こえたその次の瞬間、彼女の体の首から下が氷漬けになった。
「な、何だ!? 動けねえ……」
「油断しましたね……」
「……これが狙いだったのか……! ……でもどうやって見えない筈のアタシの位置を……!」
煙と氷の破片の中から凍牙が現れる。
榎葉は驚愕の表情で彼を見る。
すると凍牙は驚くのも無理もないといった様子で口を開いた。
「ふふ、何故私がこの煙の中でもあなたの居場所が分かったのか教えて差し上げましょう。私の“フリーズバレット”は出現させた氷に触れている者の居場所も感知出来るんです。ただ、仕組みとしては触感とは違って、その対象の重みや振動を氷越しで感知して居場所を演算しているんですよ」
「……そうかい。んなこたどうでもいいけどね」
「せっかく説明したのに……」
榎葉の冷めた反応に落胆する凍牙。
そんな凍牙の若干傷付いた心を完全に無視して榎葉が言う。
「あー負けちまった。……でも待てよ。体めっちゃ冷たいけどこれ言い訳にすれば明日会社休めるんじゃね? ありがとよ坊ちゃん」
「……は、はあ……どうも」
突然敵であるはずの人間から礼を言われて困惑する凍牙。
そして榎葉は更にこう続ける。
「あとあんたのその小手先使う戦い方見てると私の元カレ思い出すわ。もしかして知り合い? サングラス掛けて年中甚兵衛着てる変な奴だったけど……ま、どうでもいいや」
「……なっ!?」
「お? まさかのビンゴ? 世間は狭いなあ~」
凍牙は榎葉にそう言われて最近耕一郎が彼女と別れたと悲しんでいた事を思い出した。
流石にその彼女がまさか今の今まで戦っていた相手だとは思いも寄らなかった。
凍牙は衝撃を受けつつも榎葉に言った。
「……私としては耕一郎さんと縒りを戻して下さると嬉しいです」
「へっ、やだね。それより私の事なんかほっといてさっさと行きな。クソオヤ……社長強いからあのお仲間のヤンキー負けちまうぞ」
「ふふ……それはどうでしょうね。じゃ、行きますね」
「おう、頑張れよ~」
そうして凍牙は何故か敵に応援されながらも上へと向かったのであった。
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