エッセイ「国宝が描く、生き続ける愛と犠牲」
映画『国宝』は、歌舞伎俳優・喜久雄の栄光と葛藤、そして彼を支え続けた春江の愛の物語である。喜久雄は幼なじみの春江と深く結ばれていたが、歌舞伎の道を極めるため春江は彼のプロポーズを受けず、「私が一番のご贔屓になって特等席で見るから」と距離を置く決断を下す。その愛の形は、古典『曾根崎心中』でお初と徳兵衛が死によって永遠を誓った姿に呼応しつつも、現代的に「生きて支える」ものだった。物語には、喜久雄が舞台で『曾根崎心中』を演じる場面と、現実の春江との関係が巧みに重ねられ、芸と人生の交錯が描かれる。二人が若き日に刻んだ対の入れ墨は、離れても消えぬ絆の象徴であり、春江は表舞台ではなく劇場の客席から喜久雄の芸を支え続ける。『国宝』は、愛の形の多様性と芸を極めることの代償を問いかける感動作である。
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