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3章:異世界と日本との二重生活の始まり

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「じゃあ、とりあえずは機関で教育として、部屋はどうしようか。機関の一室でいいのかな?」

 あ、そっか。最初は領主様の~という話だったからね。

「機関に戻って手配をして来よう。部屋を整える必要はあるだろうが、申請だけならすぐに済むし、整えるのはスーザンに頼むから安心してくれ」

 そういうと、キルギスさんはさっさと出て行ってしまった。えぇ…

「一緒に行くものだと思ったんですけど」
「そうだよねぇ。何も慌てなくても。それとも部屋用意するのに時間かかるのかな?俺の時はそんな事なかったんだけど」
「…安全策とか?」
「俺がいるからそこまで気にしなくてもいいし、なんなら高梨さんの能力知ってるの3人だけだよ?理由がそれならどれだけ心配性なのっていう」

 心配性…あれ、でも、それがひどくて闇落ち寸前だったんじゃ、と考えたところで思い出したこと。神様にお願いされたんだった。それを口にしようとしたけど、まだ松田さんは笑いながら話す。

「なんか意外~領主館だからかな、それとも高梨さんがいるからかな」
「意外、とは?」
「キルギスさんね。一応貴族ではあるけど、末っ子だし機関に長くいるのもあるけど、あんなに丁寧に話す人じゃないんだよね。どっちかっていうとワイルド系」

 話の脈略が分からなくて聞けばそう言われた。…そういえばこっちに転移してきてすぐはそんな感じだった…ような?

「それに一晩だけであんなにくるっと回復するとは思わなかったよ。回復力が違うのかなぁ」
「あ、それは私も思いました。すっごくまぶしかったです…」

 そうこぼすと、げらげら笑われましたけど。今なら言えるかな?

「それはともかくとして…あっちで聞こうと思ったんですが、今は誰も話、聞かれないんですよね?」
「まあ一応?俺を出し抜ける人いるかな?っていう問題はあるけど」

 内容が内容だから、念のために聞けばそう帰ってくる。松田さんの力量がどれくらいなのか分からないけど…まあ、全魔法を使いこなす者だもんね。大丈夫だよね。

「じゃあ忘れないとは思いますが伝えておきますね。こっちに召喚されてこの部屋に来た一瞬だけですけど…神様にキルギスさんの事をお願いされまして」

 と、こぼすと、松田さんの顔が固まった。

「えぇと…ごめん、意味が分からないのと、日本に戻って、東京で会ってからにしよう」

 と、言われて了承した。この世界での神様がどんなものかわからないしね。



 日本に戻ってからと言われたので、その後は無難に国の通貨の事を教わった。機関でも教えてくれるけど、暇だし。ということで。大体日本と同じように、銅貨やら銀貨10枚で上の単位1枚というわかりやすいものだった。とはいえ、種類を覚えないとなぁ。
 そうしてキルギスさんが戻ってきたけど…ソファには座らず私の方に来るなり手を取られた。え、なに!?

「そういえば、名前で呼んでも?」
「あ、はい。どうぞ」
「ユカ…ありがとう」

 そういって、ふわりと笑う…っ!イケメンに名前を呼ばれるとか笑顔とか破壊力すごすぎっ!心臓止まるかと思った!てっきり苗字で呼ばれるんだと思ったのに!後ろで松田さんがにやにやしてるのが腹立たしい!
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