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3章:異世界と日本との二重生活の始まり

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 キルギスさんが時々発生させるどきどきポイントに疲弊しながら馬車は進み、到着したからと降りれば、すうっとしたすがすがしい風が吹く。水辺とか川とか特有よね、これ。
 そうして目の前には川があるけれど…キルギスさんに手を差し出されて連れられていけば…たしかに2連の小さな滝があって、その横の地面にはピンク色の小さな花が咲いてるけれど…

「松田さん、芝桜ってこんな岩肌に咲きましたっけ?」
「いやーでもほら、なんとなく花の感じは似てるでしょ」

 まあ、確かにね。でも私は平原一面に絨毯の様に咲いているものっていうイメージがね…ごつごつ、というほどではないけど苔むした岩肌にそこそこの密集率で咲いてるのよ。花弁とか色は確かに似てるけども。

「まあ、細かいことは考えなくていいんじゃないの?ちょっとそこでお茶だけして帰ろう?準備は俺がするから見て回るといいし、ゆっくりみてるといいよ」

 そこ、と示したのは川の傍だ。松田さんはそう言ってさっさとマジックバックから薪を出してるし。

「松田もああ言っているし、見て回ろう。この滝はそこまで急な岩肌じゃないからな…あそこから登れるし上から見える景色もいいぞ」
「はい。じゃあ…お願いします」

 あそこ、と示されたのは滝から少し離れた脇にある坂道だ。舗装はされていないけれど、岩や木が置かれていて歩きやすい様になっているのが見える。
 ここも多少は観光地として手が入れられてるのかもしれないなぁ。日本でもこういう所あるし。自然を残した感じでなんかいいよね。

「多少は歩きやすくなっているが…足を滑らせたとしてもきちんと支えるが、一応は気を付けてくれ」

 足を捻る可能性もあるからと、ぎゅっと手をにぎりつつ言われる。納得したけど、はい。と答えた後で、頷きながらの満面の笑みでまたダメージを食らう。
 …なんかほんと顔面偏差値いいイケメンって、何気ない表情でダメージ与えてくるから…もう、ほんとにさぁ。しかもこんなに丁寧にされたらさぁ…絶対勘違いする。
 いや…まあ、私が日本に帰ってから魔王になりかける位だから…そういう想いだろうけど、でもほら、妹とか子供を案じるとか、そっち系だったら、勘違いした私がばかみたいじゃない?


ーーーーーーーーー

 と、キルギスが自分の事をどう思ってるか悩んでいるが、その頃のキルギスの脳内は、というと…

(ああ、足元が不安なのかな。怖がっているのか、不安そうな顔もかわいい…やっぱり守ってあげたい。失礼な話だろうが、そんなユカを助けられる立ち位置でよかった。譲るつもりはないが…他の男にこんな事をさせたくない。松田でも嫌だ。ああ、段差で手を引くたびに力が入る手の柔らかさがすごくいい…)

 と、欲望満点なキルギスの脳内だった。不安な顔をしたのはキルギスの気持ちが分からないからだという事には一切気づかずに。
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